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不死者が望む戻らない死  作者: 流幻
ミューマ大陸編
62/135

ドワーフの鍛冶職人ロイド

 入場審査に並んで無事に首都マジアルに入ることが出来た。


 ドワーフエリアの首都という事もあり、加工品や装具の販売店が多く目に付く。

 かなりの大店もあり、やはり家事はドワーフなんだなと実感する。

 魔鉄製あります、と張り紙してある店もあるが、オリハルコン製ありますは流石に見ない。

 コデルにロイドの工房に案内して貰いながら街を歩く。

 お店を通り過ぎた、ここではないのかと聞くと説明してくれた。


「製作って音がうるさいから迷惑にならないのと静かで集中できる郊外にあることが多いんですよ」


 到着したのは街の外れだ。

 ドワーフで最高の職人の工房……と言うには小さな工房だった。


「兄さん、お客さん連れて来たよ」

 

 コデルは鉄を叩く音に負けない大声で叫びながら扉を開けた。

 一心不乱に槌を打ち下ろすドワーフが居る、この人がロイドか。

 こっちを全く見ないが、途中で止めることが出来ないのだろう。

 暫く待っていると一段落したのか、ロイドが声をかけて来た。


「おう、待たせたな。俺の製品なら店に置いてある。気に入ったのがあれば買っていってくれ」

「兄さんに武器を作って欲しいそうなんだ、急ぐそうなんだけど出来ないかな?」

「先に待ってる客が居るだろう、順番だ。そうだな12年後ならいけるぞ」

「私の恩人なんだよ、融通利かせてくれよ」

「駄目だ!そもそも冒険者なら店で売ってある品物で十分だろう!」


 コデルはため息をついて首を横に振った後、僕の方を向いて謝ってきた。

 頼まれた順番を抜かしてまで先に作って欲しいと言える関係でもないし、実の弟が頼んでも無理なら仕方ない。

 

「兄の武器はどれも素晴らしいのでお店を見に行きましょう」

「そうですよ、幻妖斎様の砕けた魔鉄製以上の短刀があればいいですね」


 カトリーヌの言葉を聞いて兄弟は顔色を変えて聞いて来た。


「魔鉄製の武器が砕けただと?嘘をつくのは程々にしておけ」

 ポーチから短刀を出して見せると暫く黙って見つめている。


「間違いなく魔鉄製だ。俺のよりは少し劣るが、かなりの名品で素晴らしい」

「それならロイドさんの短刀なら大丈夫ですかね?」

「無理だろうな、技を使うたび刀身に疲労がたまる。一定値を超えるとこうなるのだが……魔鉄がこんなになったのは初めて見た」

「そうなんですか?それでオリハルコンで武器を作ってもらいたくて来たんです」


 僕はライオネルクローを見せて、短刀に作り変えて欲しいと告げた。

 ロイドは目を輝かせて見つめている、やはりオリハルコンは貴重なのか。

 優先的に作り変えてくれるのではないか?と少し期待をした。

 一通り、検品した後に大きく首を横に振って嘆いている。


「残念だが、ドワーフでこの武器を作り変えてくれる奴は絶対に居ないぞ」

「オリハルコンの武器の製作ってそんなに難しいんですか?」

「製作自体は問題なく出来る。問題になるのこれだ……」


 指で指し示した場所には何か変なマークが書かれていた。

「これは製作者を示す銘なのだがエルバート様のものだ。恐れ多くて手が出せんわ」

「そう言えば、ドワーフの族長が今の地位につく前に制作したと言ってました」

「エルバート様は気になさることは無いだろうが……この武器を作り変えてしまうと職人として終わってしまう」


 どういうことか分からなかったがコデルが丁寧に説明してくれた。

 武器を他人が作り変えるという事は、その武器の出来が悪かった、気に入らなかったという意思表示になるらしい。

 族長自身は全くそう言う事を気にしないが、仮にロイドが作り変えるとドワーフの仲間から族長批判と思われる。

 購入者が居なくなり職人として生活が出来なくなるそうだ。

 それほど族長と言うのは強く慕われているのだと言う。

 オリハルコンを手に入れても順番は守ってもらうからな。と言われてしまった。


 理由を聞くとお願いできることではないな。

 そして困ったことに現在オリハルコンは流通していないそうだ。

 オリハルコンの元になるオリハルコン鉱は多少あるが製錬できる職人が居ないためだ。

 職人を育成中だがまだしばらくは無理だろう。とロイドが嘆いている。

 実は製錬できる職人が1人居る、しかし罪人で国から一切の製作を禁じられていると言う。


 この状況……武器はしばらくお預けか。

 幸いなことに風の刃があるので当面は問題ないと思う、職人が育成されるまでの数年は我慢するしかないだろうな。


 工房を後にした僕たちにコデルが、この後どうするのか聞いて来た。

「さっきの武器をくれた人が族長に宛てた手紙を渡されたので持って行きます」

「宮殿はこの大通りを進んで行けば分かると思います。私はお店に戻りますのでお時間があればお越しください」


 宮殿はすぐに分かったので手紙を門番に渡しに行こうとしたがカトリーヌに止められた。

 手紙を見せて欲しいと言われて渡すと大きくため息をついた。

「お父様、族長に渡す手紙なのに適当すぎますわ。これでは追い返されますよ」


 彼女のポーチからライオネル家の紋章が鮮やかに刻印されている布と箱を取り出した。

 慣れた手つきで手紙を布に包み、箱に入れて丁寧に持っている。


「申し訳ないのですが、幻妖斎様は私の右斜め後ろを半歩下がって付いてきてください。言葉は発さず私が紹介したら右手を胸に手を当てて軽くお辞儀してください」


 そう言うとスタスタと歩いて行く。

 僕は慌てて言われたように斜め後ろを同じ歩幅でついて歩く。


「私は前獣人族長ダグラス・ライオネルの娘、カトリーヌ・ライオネル。エルバート・ダミアン族長に宛てた親書を預かってまいりました」


 言い終わると箱から手紙を取り出し見せた後、箱に戻して門番に渡している。

 受け取った門番の1人が慌てて中に入るとすぐに別の兵士が出て来て敬礼をした。


「お待たせして申し訳ありません、ご案内しますのでこちらへ」

 案内しようとする兵士を止めカトリーヌが話しかける。


「こちらは我が婚約者の流幻妖斎殿、同行をお許し願いたい」

 言われたように胸に手を当て軽くお辞儀をする。

 こちらを見た兵士の態度があからさまに変わった。

 獣王の娘の婚約者と言う肩書がここまで凄いとは……。


 普段、おっとりしている彼女が凛とし気品を漂わせる所作を見て惚れ直してしまう。

 なんだかんだ言いながらも族長の家系だし礼儀とかはシッカリしてるんだよな。



 豪華な部屋に通されて、ここで待つように言われた。


「こういう堅苦しい事はした事が無いので少し疲れましたわ」

「ありがとう、僕は礼儀とか分からないから助かったよ。婚約者と分かって僕に対しても兵士が優しくなったし」

「え?兵士の態度が変わったのは、その2つの指輪の力ですよ。複数所持している方は多くないでしょう」


 微笑みながら僕の右手の指輪を指した、轟鬼とイトに貰った族長の指輪だ。

 轟鬼は族長ではないので他種族には、あまり効果が無いと言っていたような?


「お父様は前族長ですが族長を辞めてからの名声の方が高く、他の種族からも族長並みに認められてるんです」

「そうなんだ、轟鬼殿からそんな話を聞いた事が無かったから何も知らなくて……聞かせてよ」

「自分の話を自慢する性格ではありませんからね。お父様が族長になって――」


 ノックの後、兵士が入ってきた。

「失礼します。エルバート様がこちらへおいでになります」

「え?謁見の間では無くこちらへ?」

「はい。もうしばらくお待ちください」


 カトリーヌが驚いていたので理由を聞いたら謁見の場所は決まっており別の場所で会うこと自体が異例だと言う。


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