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不死者が望む戻らない死  作者: 流幻
緩衝地帯セントス編

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そこに居る理由

 翌朝、フォーゲルからシュバイツに渡して欲しいとレープクーヘンと言うお菓子を渡された。

 龍の岬に行くと昨夜告げたので大急ぎで作ったそうだ。

 チェインがあるという事はシュバイツとも面識があるという事だ。


「覚えていないかもしれないが、ヘルムートからと言って渡してくれ」

「ヘルムート?」

「言ってなかったか?ヘルムート・フォーゲルというのが俺の名前だ」


 フォーゲルのフルネームって初めて聞いたな。

 魔法が使える居室にカトリーヌが入れないので行きはラルドに転移させてもらう事にした。

 ラルドは塔の管理者なので魔法が使える、と言う設定にしてカトリーヌには説明していた。

 

 準備が出来たので転移させてもらい、岬の先端近くに到着した。

 あれ?巨岩より奥には転移できないんじゃないのか?と思ったが神だから可能な事なんだろう。

「用が済んで帰るときは、この指輪を付ければいい」

 そう言って指輪を渡してラルドは帰って行った。


「朝早くから騒がしいぞ」

 そう言いながら小屋の中からシュバイツが出て来た。


「この人が僕の婚約者のカトリーヌです」

 まずカトリーヌを紹介した。


「こちらはシュバイツ。僕の魔法の先生だよ」

「カトリーヌ・ライオネルです。よろしくお願いします。確かベヒーモスの時にお見かけしました」

 彼女は丁寧にお辞儀をして挨拶をした。


 フォーゲルから渡されたお菓子を忘れないように差し出した。

「セントスエリアマスターのヘルムート殿からお渡しするようにと渡されました」

「ありがたく頂戴する、立ち話も疲れるであろう。折角なので茶でも飲むか」


 指をパチンと鳴らすとテーブルと椅子が出て来た。

 僕たちは促されて腰掛ける、出されたお茶は独特な味だった。

 どこかで飲んだ感じだと思っていたら確か甘茶だ。

 彼女との出会いや今までの事を話していく。

 シュバイツがカトリーヌに話しかける。


「カトリーヌ、お主に言っておくことがある」

「なんでしょう?」

「我は人間ではない。ヘルムートや幻妖斎は我が何者かを知っているが尋ねたりせぬようにしろ」

「あなたが何者かは幻妖斎様からお聞きしています」


 いやいや、僕は正体を話した覚えはないぞ?

 シュバイツが僕に視線を投げかけて来る。


「魔法の先生だとお聞きしています。悪人ではなさそうですし、好きな人が尊敬する方をあれこれと詮索する気はありませんわ」

「幻妖斎の婚約者は豪胆な女性だな。面白い、この宝珠をくれてやる。そのポーチにでも入れておけ」


 そう言うと机の上に小さな袋を置いた。

 中を見ようとしたカトリーヌを制止する。

 

「開けて中を見てはならぬ。もし、困難が訪れ人外なる者の助力を欲する時は願いそれを握りしめろ。我が一度だけ手を貸してやろう」


 神龍の助力が一度だけとは言っても得られることは彼女にとってお守りみたいなものだ。

 

「どのような願いも叶うのですか?幻妖斎様を元の世界に返して欲しいとかは?」

「グリアの外に干渉は出来ぬ、時を戻す・進める、死者を蘇らせるなど出来ぬこともある」

「そうですか。それなら私が使う機会は来ないと思いますが覚えておきます」

「やはり変わった女性だ」


 願いを僕のために使おうとするカトリーヌはやはり変わっているのだろうか?


「シュバイツさん、詮索しないと言いましたが1つだけ聞かせてください。このような場所に住む理由は何かあるのですか?」


 確かに子供がこんな場所に1人で居ると普通は迷子だと思われるだろう。

 僕はてっきり、この場所がお気に入りなのかと思っていた。


「我を生み出した親の様な存在の命令だ。もう1人居たのだが、そいつが旅に出てしまってな。我まで居なくなると困るため、残っていると言うだけだ」

「そうなんですね。もし1人が寂しくなったら、ステルドの族長が私の叔父ですので頼ってください。優しい方ですので……」


 シュバイツが思っていた答えとは違ったのか、少し微笑んだように見えた。

 やはり1人は寂しい時があるんだろうか?


 それよりも気になるのは、ここに居る理由だ。

 シュバイツを生み出したのってグリアの創造神だし、もう1人の旅に出た人と言うのはウェイズの事だと思う。

 かなり辺境の場所に神龍と原初の不死者を置く、そんな価値があるとは思えない。

 カトリーヌが居るので今は詳しく聞けない。


 周りを見回しても視界に入るのは海とシュバイツの住む小屋だけだ。

 ここに居た1年ほどの間は僕も小屋で寝泊まりしていたが寝室と食事をするための居間しかない。

 居間に大きめの丸い石のテーブルと周りに5つの丸い石の椅子があるだけ、どれも重くて動かせない。

 

「……様、幻妖斎様。どうかしたんですか?どこか具合が悪いとかではありませんか?」

「ごめん、考え事をしてた」


 カトリーヌが心配そうに声をかけてきた。

 かなり思いつめた顔で考え事をしていたようだ。


「疲れもあるだろう。今日はそろそろ帰って休め。落ち着いたらまた来ればよい。我はここに居るからな」

「そうさせていただきましょう。明日からまた旅になりますし」


 僕たちはシュバイツに挨拶をして指輪を付けて帰ることにした。

 さすがは神の力だ……指に付けたらすぐに戻っていた。



 戻ると魔法陣が出てフォーゲルが現れた。


「早いな、もう戻ったのか」

「明日には出発なので帰って休めと言われました」

「確かにその方が良いな。準部はもう整っているんだろう?ラルドに宿まで案内させよう」


 セントスに来てバタバタしていたがフォーゲルに聞きたい事があるのを思い出した。


「族長会議ってセントスで行われているんですよね?」

「ネーブルタワーで行われているらしいが詳しくは知らない。俺もこの塔のすべてを知っている訳ではない」


 エリアマスターでも分からないなら、族長会議については調べようがないかな。

 そもそも大賢者について知りたいだけだからな、一応聞いてみるか。


「大賢者ってどんな人か分かります?」

「俺も興味はあるが会ったこともない。性別や年齢さえも不明だ」


 チェイン解除の条件なのでかなり昔から存在しているという事は確かだ。

 族長会議の時にも姿を現さないようだから、かなり慎重な人なのかな?

 最悪死んで居なくなっている可能性も考えた、それなら帰還自体が不可能になる。

 シュバイツが「帰還は可能」と言っているので居なくなっている選択肢は除外してある。



「さて、お前たちにセントスを出た後の注意をしておこう」


 フォーゲルはそう言って地図を出してきた。


「ドワーフのエリアに向かうと言っていたな、セントスを南東から出るとドワーフ領(ヴィルゲータ)に入る。そこから東に向かうとイルゴルと言う街がある」

「セントスから結構近いんですね」

「交易の街と言った感じだ。腕の良い鍛冶職人の情報は街で商人にでも聞くと良いだろう。」

「首都はどのあたりになるんですか?」

「ここだ。首都近辺にはさすがに魔物も少ないが飛行系もいるので襲われないように気を付けろ」


 そう言って指で首都を指し示してくれた。

 飛行系の魔物か……魔法や弓で対応するしかないから、あまり戦いたくない。

 今回はカトリーヌを二人旅なので護衛の心配は無いから安心だ。

 話も終わりラルドが宿まで案内してくれた。

 


 翌朝、宿を出るとフォーゲルが見送りに来てくれていた。

 道行く人が普通に挨拶をしている、街の人から好かれてるんだな。


「エリアの境まで行ってやりたいが忙しくてな。ラルドも警備が無ければ来たそうだったぞ」

「いえ、わざわざありがとうございます」

「カトリーヌも元気でな」

「はい、ラルドさんにもよろしくお伝えください」


 ラルドの姿が見えないのは治安維持で街の警備をしているようだ。


「何かあれば、いつでも頼ってこい。犯罪を犯してもセントスに逃げ込めば庇護してやる」

「勝手に僕が犯罪犯す前提にしないでくださいよ」



 僕たちはセントスの街を出た。

 いよいよ、東の大陸に足を踏み入れる。

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