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不死者が望む戻らない死  作者: 流幻
緩衝地帯セントス編
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出発の準備

 カトリーヌは寝ていると言われたので起こすのも悪いからと僕はネーブルタワーでフォーゲルと夜を明かした。


 セントスから東の大陸へ入るルートは2つある。

 街から北東に進み人間の治める領地に入る道と、南東に進みドワーフの治める領地に入る道だ。

 セントス内の街道はしっかり整備されていて魔物は街道警備隊が倒しているため、ほぼ居ない。


 ミューマ大陸に入ると街道があるにはあるが整備されている感じではないそうだ。

 特に大陸の東半分はほとんど整備されてないらしい。

 その理由は主に地形だ、中央から少し東に壁のような高く険しい山が縦断している。

 地図を見せて貰ったが小人族の領地が大陸の東にあり結構大きい。


「山道ほど道をしっかり整備しないと危ないのでは?」

 僕か気になったので聞いてみたが思いがけない返事が返ってきた。

「常識から少し離れているからな……いつか行ってみれば分かる」


 僕の予定としては南のルートを行く。

 武器の件があるのでドワーフの街に早く行きたいと言うのが大きい。

 それに轟鬼の計らいでドワーフの族長には面会が出来そうなのだ。

 

 ライオネルクローの製作者がエルバート・ダミアンと言う現在の族長だと言う。

 もちろん彼が族長になる前の話だ。

 かなり変わり者だけど轟鬼は「俺の事は覚えてなくても武器を見れば分かるはずだ」と手紙を書いてくれた。

 手紙を見せても会えなければ自力で何とかしろ、と言われたがオリハルコン武器の作成なんて多くは無いだろうし多分覚えてるだろう。


 ドワーフの族長に会った後は人間領か小人領どちらに行くかはまだ決めていない。

 僕の性格的に本来なら予定を立てておきたい所なのだけど、道の状態や位置関係などがハッキリしないのでその時に決めようと思っている。

 カトリーヌは良い意味での楽天家な感じなので予定を立てずに気になる所へ行くのが好きなようだ。

 雪月花の3人もそんな感じだったし冒険者としてはドキドキワクワクを求めるのが普通なのかもしれないな。


 僕の場合は日本へと帰ることが目的だから当面の目的は族長に会う事だ。


「そう言えば、東の大陸でも武闘大会はあるんですよね?闘技場がある街を教えて貰えないですか?」

「ん?なぜ武闘大会に出る?力をひけらかすのは止めておけ。そもそも幻妖斎の名前では登録拒否されると思うぞ」

「族長に会うには基本的に武闘大会に優勝したりして名声をあげる必要があるんですよね?」


 登録拒否なんて今までされた事が無いし、犯罪とか犯しても無いんだけど。

 シルマの大会で前回優勝したメルディスが出ていたので優勝経験者は登録できない訳でもないだろう。


「お前、トリアーグの大会で何をやらかした?あのリミエストが『幻妖斎の力は賢者も凌駕する』と言っていたと伝わってきている。そんな奴が登録に来ても確実に拒否されるぞ」

「やらかしたって、人聞きの悪い事言わないでくださいよ」

 

 僕は大会で起こった出来事を話した。

 リミエストってエルフの中で最高位の魔法使いで、その名は東の大陸にも知れ渡っていると言うのだ。

 そんなに凄い人だったのか、確かに魔法の威力は凄かったもんな……。

 大会に出られないという事はギルドの依頼を受けたり、有力者と仲良くなったりする必要があるのか。

 それかダンジョンとか?


「フォーゲル様、おはようございます。幻妖斎殿もいらっしゃったのですね」

 ラルドが入ってきた。

 いろいろ話していたら朝になっていたようだ。


 あれ?カトリーヌが居ない。

「カトリーヌ様は別の階でお待ちです」

 僕の不安そうな顔で何が言いたいか分かってしまったのか、心を読まれたのかは分からないが即答された。


「すまないな。お前は特別だが、この居室は俺かラルドしか入れないようになっている。護衛を放棄したわけではないので悪く思うな」

「分かってますよ、セントスの中で何か起こるとは思ってません」


 転移陣が現れて僕たちは別の階に飛んだ。

 塔の中なので椅子やテーブルなどがあるだけだが客間と言うか応接室みたいな感じだ。

 このネーブルタワーは窓が無いため外の様子が分からない。

 移動も階段では無く転移陣なので今が何階なのかも不明だ。


 テーブルの上には食事が3人分並べてある。

 カトリーヌが座っていたが僕に気が付いて走ってきた。


「突然居なくなるから心配したんですからね」

「ごめん、師匠から手紙が届いていて1人ですぐに来いと書いていたから慌てて……」

「フッ、朝から仲が良いな。武神の教えは弟子以外には見せられないのさ。幻妖斎も次からは一言伝えてからにしろよ」


 すぐに来いとは書いてなかったがこれ位の嘘は許してもらおう。

 フォーゲルの言葉でカトリーヌも納得していた。


「幻妖斎殿のお食事を用意してきますのでお待ちください」

「僕もお手伝いしますよ」

 小声で(ラルドさんに聞きたい事があるので)と伝えた。


「フォーゲルは私の正体を知っているから問題ない。異世界の不死者という事はウェイズとシュバイツとも面識があると思うが彼らや他の神には話しても良いぞ」

 心を読まれていたようで別の階に移動した瞬間ラルドが言ってきた。

「妖精にはダメだ。グリアの人類と異世界人もダメだ。ウェイズと話す際は共にいる異世界人に聞かれないように気を付けろ」


 妖精もダメなのか。フォーゲル以外は神にしか話せないという事で覚えておこう。

 ラルドってフォーゲルが居るかどうかで言葉遣いが激変するな。


 それよりも……ウェイズと共にいる異世界人ってシェスとアイゼンの事だよね?

 髪の毛が赤と青だし、この世界にヘアカラーは無いからグリアの人だと思っていた。

 まぁ、グリアの人間にもあんな綺麗な髪色の人見た事ないけど……。


「お待たせいたしました。食事にしましょう」

 両手いっぱいにお皿を持って帰ってきた。

 ラルドの料理はかなり美味しい。

(そう言えばカトリーヌって料理できるのかな?)

 いつも僕が料理しているので彼女の料理も食べてはみたい。


 食事が終わって買い物に出かける。

 当面の食料などを買ってポーチに入れておかないと、ここからは徒歩になりそうだ。

 馬車は使えるんだけど御者、つまり運転手が獣人のため東側に入れない。

 それならドワーフとかに馬車の運転をお願いしようと思ったが無理だった。

 ライオネル家の紋章が入っているため、他種族が運転していると大問題になるそうだ。

 僕やカトリーヌも馬車は運転できないので馬車は帰らせて最初の街までは歩くことにしている。


 偶然を装ってシルビアの店に立ち寄った。

 店番の女性が奥に行ってシルビアが代わりに出て来た。


「せっかくだしセントスに来た記念で何か買って行こうよ」


 僕はそう言ってブローチなどの小物がある棚に移動する。

 シルビアがいくつかブローチを勧めてくれた。

 何故かカトリーヌはあまり興味なさそうだ。


「ブローチはちょっと……幻妖斎様に頂いた物がありますし」


 そう言うとポーチからブローチを取り出して見せて来た。

 婚約が決まった時にプレゼントした武闘大会の優勝の記念品だ。

 シルビアが「見せて欲しい」と言うので手渡して見せている。

 手に取ってじっくりと観察してから返してくれた。


「良い品物だ、この意匠は強き男を称えるものだね。細かい傷は多いけど大切にしてるのが伝わって来るよ。これからも大事にしな」


 プレゼント予定なのもブローチなんだけど選択間違えたかな。

 正直ブローチなんて僕は使わないから軽い気持ちで渡したので、そこまで大切に持ってくれているとは思ってなかった。


 その後、街を回って買い物も無事に済み出発の準備も終わった。


 明日はシュバイツにカトリーヌを紹介しに行こうと思っている。

 セントスを出発するのは明後日にした。

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