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不死者が望む戻らない死  作者: 流幻
出会いと修行編
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闘気にも慣れてきた

 気が付いたら朝になっていた。

 確か昨日は討伐から帰ってきてベッドに横になったまでしか記憶がない。

 初めての経験だったし緊張で精神的な疲れが大きかったんだろう。

 一晩寝たけどまだ少し疲れが残っている感じだ。

 今日は珍しく師匠に起こされた。

「ギルド職員が来ていて討伐の確認をしたいというのでついてきなさい」

 部屋を出ると一人の青年が深くお辞儀をして挨拶してくれた。

「私はユベリーナのギルドで副マスターをしているハイドを申します」

(ユベリーナ?この地方の名前かな?そういえば地名とか初めて聞いたな)

「早速ですが討伐確認をしたいので対象個体をお見せください」

 「ここでは出せないからとりあえず外へ行くか」

 師匠が扉を開けて外へ誘導し家から少し離れた広場で師匠が立ち止まる。

「討伐対象個体なので分解はされてないはずだから右の口に手を入れてギガントグリズリーを出してみなさい」

 僕の腰にあるポーチを目にしたハイドが驚いた口調で言った。

「それはマリスのポーチですか!?流石は武神様、良いものをお持ちですね」

 ポーチに手を入れて引っ張り出すとヌルっと出てきた、結構気持ち良い感覚だ。

「確認と鑑定をさせていただきます」

 そう言うとハイドがギガントグリズリーに何かをかざしていた。

「対象個体と確認できました、討伐報酬が金貨100枚、素材の買取で金貨50枚ですが素材は買取でよろしいですか?」

「買取で良い」というと金貨150枚を渡してきた、この金貨1枚ってどれくらいの価値なんだろう?

「ところで、こちらのお方は武神様のお弟子さんですか?失礼ですがお名前は?」

「僕の名前は――」

「これはまだ修行途中なので名乗りは後日」

 師匠が僕の言葉を遮ってきた。

「失礼しました、討伐確認も完了しましたので私はこれで失礼します」

 ハイドは一礼するとほかの職員を呼び寄せ2体のギガントグリズリーを大きな荷台付きの馬車に乗せて帰っていった。

「お前の名前をそのまま名乗るとこの世界の住人ではないとばれてしまうので注意しなさい」

 見送りが終わり一行が見えなくなった頃、突然言われた。


 今日から闘気の訓練も開始するそうだ。

「さて、昨日の闘気を出した感覚は覚えているか?思い出しながらやってみなさい」

 あの時の感覚を思い出してみる…………出来た、疲れているのに体が軽くなった気がする。

「お前の目に自分の闘気は見えているか?息を大きく吸ってゆっくり長く吐き出す、その時に体内の血液の流れを意識する感じにすると見やすい」

 言われたようにしばらく意識をしてみたら薄っすらと体を覆う半透明なものが見えた。

「見えました」

「闘気のコントロールの基本を教えよう、私の闘気も見えるはずだ、見比べて違いを感じなさい」

 

 師匠のほうを見ると薄っすらと闘気が見えた。

 見比べると違いはすぐ分かった、僕は体から離れるにつれて色が薄くなって形も刺々しい。いがぐりの様な感じだ。

 師匠は体から離れると闘気の色が濃くなり、まるで水のベールに覆われたように滑らかで棘1つない。

「コントロールの基本はイメージだ、私の闘気は見たな?最初は体を均等に闘気が纏うイメージを常に持ちなさい」

「イメージですか……?」

「闘気を出した状態で両手を伸ばして手の闘気を見ながらイメージしてみなさい」

 とりあえずやってみる……目で見ながらイメージすると確かに棘が消えて滑らかになるが気を抜いたりすると戻る。

「毎食後にとりあえず10分ずつ1日30分闘気を出してこれをやりなさい。繰り返せばイメージしなくても無意識に均等になる」

「毎回10分でいいのですか?」

「10分やれれば良い。コントロールに慣れなければそれ以上やると疲れるだけだ、とりあえず今やってみなさい」

 イメージするのは出来そうだったが10分も闘気を出すのが大変だった。

 闘気を身に纏うのは基本でこれが出来ないと出力コントロール修行に移れないそうだ。

 それなら出力コントロール出来るようにして身に纏う修行すればと思ったが一蹴された。

 出力コントロールを先にやると闘気が低いレベルで小さく纏まってしまうらしい。



 1か月くらい過ぎたころ僕の闘気は師匠ほどではないが滑らかになっていた。

「状態が良くなってきたな、そろそろ出力の修行だ。闘気を自分の皮膚に密着させるくらいに弱くして10秒キープしたら今の位置に戻しなさい」

(コントロールの基本はイメージだ)と師匠が以前言っていたのを聞いて抽象的だなぁ……と思ったが的を射ていた。

 手を見ながら闘気を弱めるイメージをすれば弱くなって皮膚ギリギリになる。強めようとイメージすれば10センチ程度離れた位置まで闘気が伸びる。

 ただ皮膚ギリギリにするのはイメージを意識しないとキープできない、これは慣れてくれば意識しなくても変化できるようになるそうだ。

「机にある卵を取るときに、手を伸ばし卵が割れないように力を調整して持って手を縮めて引き寄せる、とは考えないはずだ。頭で考えずに闘気が自在にコントロールできるのを目指しなさい、これから寝るとき以外は闘気を弱めて出したまま生活するようにしなさい、ただし、一度闘気が出なくなればその日はそれ以上出さない事」


 それから闘気を出したままの生活が始まった。

 師匠が言うには出力のコントロールが出来れば今の僕でも20時間は出し続けられると言われたが最初は1時間程度で闘気が出なくなったのは扱いがまだ甘いという事だろう。

 闘気の効果はすごく、日課の修行が楽になりスピードも上がった。師匠との組手でも反射速度が上がったのを実感できる。

 時を重ねるごとに闘気を出せる時間もどんどん伸びていった。

 

 闘気の扱いにも慣れてきた頃、僕に新たな出会いが訪れる。

 

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