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不死者が望む戻らない死  作者: 流幻
グリアの5種族 ゼルディア大陸編
46/135

ゴブリンキングと砕けた短刀

 討伐は順調に進んでいる。

 新兵の訓練と聞かされていなければ新兵だと気が付かない程に統率が取れていた。


 正面の方で悲鳴が聞こえた。

 逃げてきたゴブリンでも見てセリアージュが怖がりでもしたのかな?

 討伐中の兵士たちが騒いでいる……少し嫌な予感がしたので様子を見に行った。


 そこにはセリアージュが右側の手足を切断され大量に血を流して気を失っている。

 彼女を守るように覆いかぶさって背中がズタズタのスピリエが必死で耐えていた。

 側にいる2名の兵士が攻撃と盾で防ぎつつスピリエに逃げるように言っているが逃げようとしない。

 

 攻撃してきているのは翼の生えた人型の魔物、ハーピーだ。

 攻撃自体は空から風魔法での攻撃でそこまで強くないのだけど兵士ではない女性の手足は耐えられなかった。

 集落の中の部隊も慌てふためいて陣形が乱れて逃げ出す者も出ている。


「そこの2人は逃げないスピリエの安全を最優先に守れ。僕がハーピーを倒す。カトリーヌは兵士をまとめて落ち着かせて、可能ならゴブリン退治お願い」

 来る前に手を出さなくて良いと言われたけどそんな場合じゃないだろう。

 兵士は「はい」と返事をしてくれ、カトリーヌはすぐ集落の中に走って行った。


 僕は飛んでいるハーピーを見上げ短刀を構える。

「翼を持たぬ人間よ、その剣が天空の支配者たる我に届くことは無い」

 言葉を話す魔物?初めて見た。

「人間が空を飛べないと誰が決めたんですか?」


 そうだ、僕は魔法で空を飛べる。確か弱点は光属性だったな。

 短刀にオーラを乗せて光魔法も込める、オーラと魔法剣の合わせ技だ。

 逆手で持ち振り上げながらハーピーに向かって飛ぶ。

 短刀から放たれるオーラと光魔法は光り輝く竜の姿になり上空に飛んで行く。


「まさかお前は……理を……」

 ハーピーは最後まで言葉を発することなく赤黒い光を放って消えていった。

 師匠から貰った短刀の1本が砕けてしまった。


 上空から集落を見るとカトリーヌが兵士をまとめ上げゴブリンをほぼ倒し終わっている、獣王の娘と言うのは伊達じゃないな。


「セリアージュ、死なないでよ。俺が死ぬまでずっと側にいるって言ってくれたじゃないか……セリアージュ、目を開けろよ。命令だぞ」

 僕はセリアージュの方に向かった、かすかにだけど呼吸がある。まだ死んではいないから助けられる!

「どいて!治療するから早く!」


「幻妖斎様!助けてください。ゴブリンキングが生まれてしまいました、私では倒せません。兵士たちが逃げる間は何とか私が……」

 カトリーヌが殴られてこちらまで吹き飛んできた。

 集落の方を見ると大きな異形のゴブリンが暴れている。


「まずい、このままでは治療する暇がない。セリアージュさん、キングを倒すまで持ちこたえてください」

 僕がゴブリンキングに向かおうとした時、すごい力で手を掴まれた。


「アレは俺が倒す。幻妖斎殿はセリアージュの治療をお願いします」

 スピリエはそう言いゴブリンキングに向かって行くが無謀だとしか思えない。

 昨日のような戦い方では勝つのは無理だが防御力は高いので治療が終わるまで持ってくれれば。

 歩いて行く彼に体毛が生え、逞しい体になって行っている、獣化しているのか?


 実はセリアージュの止血と大まかな治療はもう済んでいる。

 四肢欠損治療は自分が受けた経験があるので分かるが瞬時に再生されるわけではない。

 僕の場合は再生するとイメージしたら瞬時に再生してしまうので右半身を布で覆い再生するところを見せないようにした。

 あとは残存している左の手足を見て肌の質感や色をイメージして再生完了だ。


 スピリエとゴブリンキングの戦いは壮絶な殴り合いになっている。

 獣化で強くなっても戦闘技術が上がるわけではないので仕方がないけど。

 すごく鬼気迫る顔で攻撃しているのはそれだけ大切な人だという事の表れなんだろうな。


 僕とカトリーヌだけではなく、兵士も固唾をのんで見守っている。

 スピリエはかなり殴られているけど我慢しているのか効いてないのか倒れる事が無い。

 どうしても技術面で負けてしまってフラついてきている。

 このままでは少しマズいのではないか、少し手助けした方が良いかな?

 そう思っていたらカウンター気味に顎へパンチが入ってゴブリンキングが倒れた。

 馬乗りになって殴り続けている。


 激しい激闘の末、ゴブリンキングは息絶えた。

 兵士たちが大歓声を上げている最中にディールがシルマの主戦力を連れて駆け付けた。

 光り輝く竜が空に昇るのを見て急いで来たらスピリエが獣化しているのだから驚いている。


 セリアージュの所に向かい無事に手足の再生と意識を取り戻したことを確認し喜んでいるけど獣化したままだ。

 戻り方が分からないらしい……。

 ディールから説明を受けていたが多分暫く戻れなさそうだった。


 獣化は戻る方が大変なようで、慣れるまでは時間経過で戻るのを待つしかないという。

 初めての獣化だと半日くらいは戻れないと言われて困っていた。

 ただ、14歳での獣化は轟鬼に次ぐ若さであると言われて照れている。

 

 主戦力はあっという間に集落を壊しゴブリンキングの死体を回収する。

 比べると失礼だけど新兵とは雲泥の差で手際が良いので驚かされた。


 主戦力部隊が獣化したスピリエを囲み凱旋していく。

 帰り道でディールからゴブリンキングはスピリエ1人が倒したことにして欲しいとお願い事をされた。

「ゴブリンキングに(は)全く手を出してないですよ、獣化したスピリエ殿が1人で倒したのは全員見てます」

 ハーピーが居て僕が倒したのは話した方が良いのかな?

 

 街に帰ると住民がスピリエの凱旋を喜ぶ。

 恥ずかしそうにうつ向いていたがディールに「堂々と悠然に歩いてください」と注意されていた。

 胸を張って歩く獣化した次期族長の威厳を討伐したゴブリンキングがさらに高めている。


 宿に戻るとピーフェが悔しがっていた。

「ゴブリンキングの生まれる瞬間なんて普通は見られるもんじゃないから俺っちも見たかった!」

 今回は自分がついて行かないと言ったんだから仕方ないよね。


 砕けた短刀は魔法の力では直らなかった。

 ピーフェに見せたがこれは修復不可能だろうと言われてしまう。

 魔法を使わない場合は短刀1本で戦っていかないとダメなのか、なるべく早く新しい短刀を探さないと。

 ドワーフの国にならあるかも、とキュレリー商会で言われたのを思い出した。

 族長に挨拶した後はドワーフの国に武器探しへ行こう。


「なー、お前何で神剣持ってるのに短刀なんて使ってんの?非力ってわけでもないのにさ」

 神剣なんて手に入れた記憶もないけど、もしかしてシュバイツに貰ったワンドの事かな?

 ポーチ触っていいか?と言われたので触らせたら「この計り知れない神力、やっぱり中にあるな」と言っている。


「ポーチの中に神剣と神の防具が入ってるぞ。でも……封印されてるな」

 マリスのポーチの中を探すがそんな物は無い。

 封印されてるってどういう事だろう?


「そのポーチ誰に貰った?お前に渡した奴から聞けば何か分かるかも知れないぜ」


 マリスのポーチはグリアに来てすぐの頃にウェイズから貰った、最近会ってないし何処に居るのかも分からない。

 ポーチを貰った時に武器と防具と食料を入れていると言われたが武器や防具は見当たらなかったので入れ忘れたのかと思っていた。

 その後すぐに師匠に弟子入りしたので気にもしてなかったのだけれど。


 ウェイズは何処に居るのだろうか?

 彼に会う事はチェインの解除条件でもある。

 シェスとアイゼン、この2人はウェイズの正体を知っているのか?


「あ、俺っちから言わなければいけないすごく大切なことがあるんだ。」

 ピーフェは僕とカトリーヌに大切なことを話した。

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