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不死者が望む戻らない死  作者: 流幻
グリアの5種族 ゼルディア大陸編
43/135

エルフの族長?

 子供たちを連れて街に帰ると襲ってきた付近の魔物はとりあえず撃退し終わったようだった。


 怪我人の治療もしないとな、と思い見回すが怪我人がいない。

 人に聞くと治癒士が素早く治療をしてくれたようで安心した。


 親が心配して探していたようで無事で喜んでいる。

「ありがとう。熊が怖かったけどお姉ちゃんの事は怖くないよ」

「このお姉ちゃんが僕たちを守ってくれたんだよ」

 子供たちがお礼を言うと親もカトリーヌに感謝していた。


 大厄災ではないと分かり混乱は収まったようだった。

 街の中が襲われた訳でないので被害が怪我人程度で済んだのも幸いだった。

 厄災は初めてだけどこれからどうなるのかな?

「1か月くらいは魔物が活発になるので一般人の移動は難しくなると思います、その間は冒険者への依頼が多くなりますね」

 カトリーヌがそう教えてくれたが少しだけ不安があるのだという。

「街を出なければ安全なのでそこまで問題にならないはずですが食料が足りなくなると怖いですね」

 確かに食べ物が無くなると困るな、1か月って結構長いし大丈夫なのだろうか?


 街の人たちがピーフェに手を合わせたりしていて目立つが妖精の存在自体が勇気を与えているようだ。

 暫くして、宮殿の部隊から食料の心配は無い、と通達があった。

 各街のキュレリー商会が備蓄を出すことにしているそうだ。

 その辺りは厄災の経験が多いので分かっているのだろう、街の人も通達が出てからは日常に戻った感じだ。


「そこの者達、宮殿までお越し願いたい」

 周りを兵士に囲まれて半ば強制的に連れて行かれた。

 中に入ってすぐの広間に美しいエルフが居た、サリエだ。


「やはり貴方でしたか、強き人の子よ。この度は街のために動いてくれて感謝いたします」

「いえ、少しでも力になれたなら良かったです、この人は僕の婚約者でカトリーヌです」

 僕が紹介するとカトリーヌは軽く会釈をした。


「初めまして、私はエルフの神官でサリエ・ル・ルーシュと言います。以後お見知りおきを」

「ありがとうございます、私はカトリーヌ・ライオネルです」

 カトリーヌの名前を聞いて兵士がざわめいている、ライオネルって言うだけで分かるんだろうな。


「貴方がたにお願いがあります、可能であれば厄災が終わるまでグンフォスに留まっていただけませんか?」

「そうするつもりです、僕は冒険者ですが少しでも役に立てるのであれば言ってください」

「ありがとうございます、妖精が貴方と同行していると聞いたので失礼と思いますが貴方と言うより妖精に滞在していて欲しいと言うのが本音です」

「僕から1つ質問です。他の街の安全は確保されていますか?」

「その点はご心配に及びません、族長様の命により守護隊及び神官を派遣しゴーレムと各街の冒険者で周囲の安全を確保しています」


 それを聞いて安心だ。

 面会は感謝を伝えられて終わり外に出るとマールが待っている。

 ジオルグの家に来て欲しいと言うのでついて行く。

 マールに聞くと神官から言葉があるのは名誉な事のようだった。

 

 僕とカトリーヌは中に入るがマールは相変わらず入室したらダメなようだ。

 きっと壁の種族文字が読めるから見られたくないのだろう。


 弓だけでなく剣と仮面も壁に飾られてある。

 ジオルグとイトが立ち上がって頭を下げる。

「今日はお前たちが居て助かった、感謝している」

「いえ、被害なくて良かったですしジオルグさんが尊敬されているのも分かりました。先ほど宮殿で神官さんからもお礼言われましたよ」

「お、神官直々に宮殿内部で言葉を貰うとは凄い事だぞ」

「本当は族長さんに会えたら嬉しかったんですけどね」

「流石に族長は興味本位で会える存在じゃないからな、他種族だと正当な理由や破格の功績が無いと無理だろう」


 やっぱりそうなんだよね。

 ホイホイ面会できるなら苦労はしないし厄災で今はそれどころじゃないだろうしな。


「族長に会いたい理由な何かあるのか?美しいと評判だから会いたいとか言う不届きな奴も居るが……」

「僕が異世界から来たのはバレてると思うのでお話ししますが、元の世界に戻るために各種族の族長の許可が要るのです」

 チェインの内容を他人に漏らす禁止事項に触れている気もするが、この聞き方は問題ない事をシュバイツには確認済みだ。


「なるほどな、そう言う事らしいぜ、族長様。認めてやるか?」

「貴方が元の世界に帰還する事を私は認めましょう。神樹トニミマーナのご加護があらんことを祈ります」

「族長様に認めて貰ったぞ、願いが叶って良かったな」

 ……父親だけじゃなくて娘も変なのか?


「あ……ありがとうございます」

 無視はまずいのでそれだけ言っておいた。

 僕の事を思ってやってくれたんだろう。

 今回みたいな自称族長の人の場合はどう判断するんだろうか?

 よく考えたら轟鬼とマーサって前族長なんだけど、あの人達では駄目なのかな?

 手の甲に刻まれた傷も変化はない、自称族長では当たり前か。


「で?これからお前たちは冒険に出るのか?」

「いえ、神官から厄災が終わるまではグンフォスに居て欲しいと言われましたので暫くは残ります」

「どうせ妖精が目当てだろ?特殊体やら変異体やらが出やすいから稼ぐ良い時期なのにエルフの都合でお前たちも迷惑だな」

「ピーフェの存在が勇気になるなら。僕は良いですがピーフェがどう思うかですね」

 

 そう言えばどこに行ったんだろ?

 僕とカトリーヌは宿に戻ると中にピーフェが寝ていたが起こしてしまったようだ。


「今日はありがとう、おかげで助かったよ。厄災が終わるまで滞在するけど良いかな?」

「俺っちは何もしてないよ、滞在するのも良いけどお前ら大変だと思うぜ」

「大変って何かあるの?」

「俺っちは飛べるし神樹トニミマーナに行けばエルフ近づいて来ないから安心だ。お前ら『妖精はどこへ?』とか聞かれまくると思うぜ」


 それなら問題ないな、理由は何とでもなるし。

 

 言われたように街を歩くと妖精様は?と聞かれる。

 ピーフェが居ない事をエルフに納得させつつ街に呼んで欲しいと言われない理由を考えておいた。

「妖精は神樹トニミマーナに森の民が厄災の終わりまで無事に生活できるよう祈りに行ってます」

 この話はすぐ街中に拡散されてピーフェの行き先を聞かれなくなった。

 ちなみにピーフェは神樹には行かず僕のコートの中にずっといるのだけど……。


 僕とカトリーヌは体が鈍らないようにするのと街の人の安全のために近辺の魔物退治もしていた。

 1か月は何事もなく無事に過ぎ、厄災の終焉が告げられた。


 宿の人が慌てて呼びに来たので受付に行くとマーサが立っている。


「先日は手紙を頂きましたが厄災になりお返事が出来ませんでした、貴方たちの助力に感謝します。そして幻妖斎殿、魔道の部の優勝おめでとう」

 0点で最下位になりマーサも結果を知ってるはずだけど優勝って?

「リミエストが優勝を辞退しました、そして順次繰り上げられたすべての者が辞退しました。0点での優勝は前例がありませんが……」

 これは喜んで良いのだろうか?

「リミエストの言葉です『優勝が幻妖斎で無いなら今回の優勝者の名は汚名として後世に語られるであろう』と。『結果が全て』貴方が言った事ですよ」

 まさかあの男がここまで言うとは、私も見てみたかったわ。と呟いていた。


「娘が……エルフ族の族長が貴方がたをこれから宮殿に呼び直接会って謝意を伝えたいと望んでいます。受けていただけますか?」

 そう言うと招待状を差し出してきたが貴方がたと言っていたよな。

「カトリーヌもという事でしょうか?彼女は獣人ですが大丈夫ですか?」

「エルフと獣人、仲が悪いのはご存じのとおりですがこの街の多くの者がカトリーヌ殿を認めていると思います、問題は無いと考えています」

 周りに居た人が拍手をして後押しをしてくれた。

「謹んでお受けいたします」


 僕とカトリーヌは招待状を受け取りマーサと共に宮殿へ向かった。


 通されたのは前回と違い広い部屋で族長が来客と会う際に使用する部屋と言っていた。

 マーサとサリエだけが立っている。

 他に誰も居ないが族長から言葉があるまでは形式的に頭を下げていて欲しいと言われる。

 僕とカトリーヌが待っていると扉が開き1人の女性と警護の人っぽい男性も1人だけ入ってきた。


 この人が族長か。

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