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不死者が望む戻らない死  作者: 流幻
グリアの5種族 ゼルディア大陸編
39/135

果たされない約束

 大会2日目は満席で会場中に入れないので弓の練習をしていた。

 今日から本選なので会場に行っている人が多いからか人通りは少し落ち着いている。

 夕方になって試合が終わったのだろう、会場から凄い人が出てきている、昨日より多いな。

 魔道の部は1370点と言う記録が最高点になったようだ。


 明日はどんな魔法にしようか考えていた。

 観客が喜んで欲しいけど最優先は優勝することにある。

 最高点は10000点なのに今まで2950点しか出てないという事はかなり強固に作られているのだろう。

 エルフは魔法に秀でたものを尊敬するって言ってたから、ありふれた魔法だけは避けたい。

「威力だけ出すならババーンと雷落とすのが良いと思うぜ、見た目も派手だしな」

「光魔法はどうですか?キラキラして綺麗なものが多いですし」

 やっぱり見た目が派手な方が好まれるのかな。


 3日目、僕の出番の日だ。

 出場者の関係者という事でカトリーヌは会場に入ることが出来た。

 本当は僕も武術の部と総合の部を見たかったのだけど今回は仕方がないな。

 魔道の部の3日目が始まった、5人ずつ会場に呼ばれる。

 僕の30番目と言うのは最後のようだ。

 控室に居ても音と歓声が響いてくる。


「26から30番の選手は会場へどうぞ」

 仮面をしているのは僕だけでかなり目立つ。

 26番シルズと言う選手はウインドスピアで1120点、27番オルエスと言う選手はフレイムバーストで1160点。


 28番のリミエストと言う選手が姿を現すと歓声が大きくなった、有名な選手のようだ。

「風よ、光よ集いて我に力を与えよ。大いなる力で敵を穿ち……」

 雷魔法の詠唱か、確か(ベルサンダー)と言う高威力魔法で詠唱が長いため実戦向けではない。

 大会は邪魔が入らないから使える魔法だ。

 1本の雷が落ちて木偶に当たった後、地面に広がり雷のドームが形成され中に居る対象に攻撃を繰り返す。

 2774点と言う今回の最高点をたたき出した。

 見た目も美しく大歓声が会場を包む、リミエストは軽く手を挙げ勝利を確信したようだった。


 29番のマクリアン選手は雷魔法のサンダーブレイクを使用し2037点だった。

 やっぱり雷魔法が威力は高いし見た目が派手なので会場は盛り上がるようだ。


 僕の番が回ってきた、会場にカトリーヌが居るので負けてガッカリさせるわけにもいかない。

「我らを守護する12の生物、その命の炎を燃やし……」

 他の人に聞かれない程度で何かを言っているのが分かる声量で詠唱する。

 杖の先から炎が現れて木偶に向かってゆっくり飛んでいく。


「なんだ最後は炎か、しょぼいな」

 前の2人が派手だったのもあって観客席からガッカリした感じが伝わってきた。

 

 木偶に炎が着弾すると巨大な炎の柱が立ち上り、12匹の生き物が出てくる。

 鼠、牛、虎、兎、竜、蛇、馬、羊、猿、鳥、犬、猪の12匹が対象の周りを回転しながら順番に相手に向かって飛ぶ。

 炎の柱に12匹が入った瞬間、爆発をして再び現れた生き物が一斉に飛び掛かって燃え上がる。

 もちろん全部の大きさを熊くらい大きくしてるから見栄えバッチリで威力も舞台が消し飛んでしまったから問題ないだろう。

 木偶は燃えずに残っていた、賢者が造ったって言うのは伊達じゃないな……。

 ただ水を打ったように会場が静まり返っている。

 

 発表された僕の魔法の点数は0点だった。

 え?0点?故障か?まさか魔力判定とかなのかなのか?

 そうなると発動に魔力を使わない僕の魔法では点数は出せず永遠に優勝は出来ない事になる……。

 点数が発表されたら激しい怒号が起こり騒然とした。

「今のが0点な訳ないだろう」とか「人間に勝たせないため運営が不正したんじゃないか」と言う内容で僕の魔法は観客には認められているようだった。

 魔力判定だとしたら事前に測定方法を聞いたり調べなかった僕のミスだし仕方がない。


「魔道の部、優勝は2774点のリミエスト選手です」

 審判によって優勝がリミエストと宣言された。


「待て!この場に居るすべての者が優勝は誰か分かっているだろう、呼ばれる名前は俺じゃない。装置の故障じゃないのか?審議を求めたい」

 リミエストが審判に詰め寄った。

 審判は「表示された点数なので」と、あたふたしている。

 観客も騒いでいて、このままだと暴動になりかねない。


「待ってください、仮に装置の故障だとしても運が悪かっただけです。それまでは正常に動作していたわけですし、騒ぎが大きくなり怪我人でも出たら僕も悲しいです。お気持ちに感謝します、リミエストさん」

 僕はそう言い残して会場を後にした。


 これでマーサとの約束が守れなくなったが射撃大会は参加しよう。

 エルフの族長に会う方法は地道に認められるように頑張るしかないな。


 結果に文句を言っても仕方がない、3日後にはワムードで射撃大会がある。

 明日の朝、出発して大会の前日には街につけるな。


「絶対おかしいですわ!威力も見た目のどちらとも幻妖斎様の優勝以外考えられません!」

 宿に戻る間ずっとこんな感じでカトリーヌは愚痴っていた。

 

 エガーレイン達は数日は忙しいので残るというので僕たちは一足先に帰る。

 馬車1台を使って良いと言われて最初は断ったが、僕たちの移動のために用意したので是非という事で甘えた。


 翌日の昼前にワムードへ到着して中に入るとオリバーの使いの者が待っていた。

 宿は前回と同じところを確保して貰っているようだ。

 僕だけ同行するとそこにはマーサとオリバーが居る。

「優勝を逃したようですね。これで私との約束が果たされることは無くなりました。1つ聞かせてください何故異議を申し立てなかったのですか?」

 彼女は淡々とした口調で告げる。

「結果が全てですからね。木偶を使用した方法を変えないのであれば数字が全てだとハッキリさせておく方が良いと思いました。僕の時だけ動作しなかったのは運が無かったというだけです。それにカトリーヌも居ますから……」

 考えすぎと思うが「獣人の姫の婚約者が大会で揉めて異議を唱えた、きっと獣人が仕組んだんだ」とか歪曲された噂が流れても困る。


「では今後、私の紹介で娘に会わすことは一切ありません。射撃大会の結果を知る必要もないので本日首都に帰還します」

 オリバーが必死で説得してくれているが約束は約束だ、「ありがとうございます」と言った僕にマーサは微笑んでくれた。

 族長に会わせないとは言われていない、マーサの紹介では会わせないと言われただけだ。

 他の方法で会えという事だろう、その配慮への礼を言ったが彼女は分かってくれたようだ。


 明日は射撃大会があるがオリバーは「なぜあんな遊びの大会をマーサ様が重視したのか分からない」と言っている。

 エルフが弓の実力を大切にしてるからじゃないのかと聞いたら思っていた大会と違った。

「他に弓を使う大会が無いからかも知れないですが参加に銅貨1枚払ってオモチャの弓で当たった合計点数でお菓子とかが貰える子供から若者向けので大会なんて名目上の名前ですし冒険者なんて普通は見向きもしないですよ」

 

 日本のお祭りの射的の延長みたいな感じなのかな?

「趣旨としては余り物のお菓子などを商店が無償で出して子供たちに楽しんで弓を好きになって貰い景品も貰える、売り上げは全て孤児院への寄付と言う立派な大会ではあります」

 キュレリー商会も趣旨に賛同していろいろな品物を提供しているそうだが弓の実力を示す大会ではないという。

 1回銅貨1枚なので銀貨1枚あれば10回参加できるようだ。

 600点と言うのはその点を超えるとワムードのレストラン食事券が1名分貰える、もちろん1人1回のみだけど。


 600点以上と言うプレッシャーもなくなったし明日は楽しんでみるかな。

 広場に囲いが出来て中は見えないが大会の準備しているようだった、カトリーヌも楽しめそうだな。

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