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不死者が望む戻らない死  作者: 流幻
グリアの5種族 ゼルディア大陸編

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武神の技

 僕はギルドに急いだ。

 オリバーは数日後と言われていたので別件かなぁ。

「匿名特別依頼があると聞いて来たのですが」

 別室に通され説明を受ける。


「依頼は守護像への魔力補充。あなたが妖精と連絡が取れると言う事からの依頼です。報酬は金貨1枚と低額ですがいかがなさいますか?」

 オリバーが言っていた内容と同じだ。数日後と言っていたけど守護像絡みだから急いでるのかな?

「なお今回は特別依頼となりますのでギルドポイントも付与されます」

 おぉ、気が利くな。さりげなくこう言う事が出来るのが一流の商人の心遣いか。


 用意が出来たらすぐ出発して欲しいというので宿に戻ってピーフェに現地に先行して待機しておいてもらうように頼んだ。

 今回は動作確認のために神官のマーサとミーリエと言う人が同行する。

 ミーリエは神官になりたてで動作の練習も兼ねているようで所作もたどたどしい。

 マーサは仮面をしているが気品があり年配な感じだ。サリエもそうだけど神官って立ち居振る舞いも綺麗だな。

 移動は神官が使える転移魔法陣で送ってくれるという。

 帰りは少しの間は徒歩になるらしいが行きだけでも楽に移動できるのは助かる。


 ミーリエの力で転移が完了した。

 目の前に守護像がある。

 転移魔法陣ってやっぱり便利だけどピーフェまだ到着してないんじゃないか?

「妖精様にお声がけをお願いします」

 ミーリエにそう言われたので「おーい、いるかー」と呼びかける。


「いるぜ!このゴーレムに魔力を補充すればいいんだよな?森の民よ、変換器を見せろ」

 ミーリエが懐から棒のようなものを取り出し跪いてピーフェに差し出した。

「うん、闇の水属性で間違いないな。少し下がってろ」

 僕たちは台座から少し離れて見ている。

 ピーフェが差し出した手から守護像に向かって光が流れていく、これが魔力の注入か。

 

「よし終わったぜ、とりあえず動くか試してみな。魔力の定着に時間が数日はかかるから少しだけだぞ」

 ミーリエがさっきの棒を軽く前に出すと石の塊がゴーレムに変わった。

 神官の2人は安心したようにホッとしている。


 依頼が完了したの帰ろうとした時、奥の方から魔物の叫び声が聞こえた。

 方向はワムード方面に進んだところの様だ、この前マンティコアがいた池があったあたりか?


 池のちょっとこちら側に紫色の皮膚に角が生えた少し大きなカバかサイみたいなのが居る。

「アレはちょっとヤバいぜ、守護像で倒せるレベルじゃねーな」

 ピーフェの言葉にマーサとミーリエが頷いて同調している。


「僕のオーラとピーフェの魔法で戦えば倒せるんじゃない?」

「あぁ、軽く倒せると思うぜ。その代わりこの森が広範囲で消えるかもしれないけどな」

 この森が広範囲で消える?以前見た図鑑に載っていたけどそんな記述は無かったと思う。

「ベヒーモスだよね?マンティコアより強いけどそこまで広範囲の攻撃はないはずだけど」


「魔力暴走……ですね?」

 マーサが呟いた。

「よく知ってるな、ゴーレムに俺っちの魔力をかなりの濃度で注入したからな。魔力の定着前にアレを倒す威力の魔法やオーラを使えばほぼ確実に魔力暴走が起きる。」

「魔力暴走ってなんです?」

 カトリーヌとミーリエが聞いた。神官のミーリエが知らないってことはエルフの常識とかではなさそうだ。


「ゴーレムに魔力を注入しただろ?時間が経ってゴーレムに定着すれば問題ないんだけど今の状態で高度の魔法を使うと注入した魔力も反応して大爆発が起きるのが魔力暴走だ。もし今ここで起これば森もヤバいがカトリーヌとミーリエは確実に死ぬぞ」

「離れないと転移魔法陣も使えないですね、移動加速や強化・回復魔法も危険な可能性があります。オーラも魔法属性になるので危険です」

 ピーフェとマーサが説明してくれたけどかなり危険な状況の様だ。


「ちょっと待って、ベヒーモスって確か雷撃使うんだよね?戦闘自体がダメって事になるの?」

 強化魔法とかがダメならベヒーモスの魔法とか論外だろうと思った。

「それは問題ない、高位の魔物の魔法は魔力を利用しないからな」

 良かった。それなら何とかなる。


「戦うつもりなら無謀だな、ベヒーモスの皮膚には聖剣や魔剣か魔法剣やオーラじゃないと傷すらつけることが出来ないんだぞ。定着までこのまま放置が得策だと思う」

 近づかなければ良い訳だからそれが得策か。

 気がつかれないように注意しながらじりじりと後退する。


 ミーリエがつまずいて転んだ時に激しい音を立ててしまった。

 ベヒーモスがこちらに気が付いて雄たけびを上げる。

「みんなは離れて!僕が1人で相手をして時間稼ぐから逃げて」

 1人で突っ込んでいく。

 魔法とオーラがダメなんだよな、闘気は問題ないだろう。

 ワンドを仕舞って素手で構えて闘気を放つ。


 最大まで強くしてから凝縮していくと森が揺れている感じがした。

 サイクロプスの時に分かったのは死亡レベルの負傷を負うとしばらく動けなくなるという事。

 この状況で僕が動けないと終わってしまうので最も避けないといけない事だ。


 巨体で攻撃が大振りなので前後の足の攻撃は問題なく避けられる。

 たまに角から雷撃が出るけど打つ前に角が発光するので注意していたら問題はない。

 隙を見て闘気を纏った打撃を連続で叩き込む。


 こう言うと楽勝と思うが強い。

 攻撃がきかないのだ、闘気を纏った打撃も手刀も傷をつけられない。

 ベヒーモスの攻撃で地面が凸凹になって足を取られる。

 闘気を纏っているのでダメージは減少しているけど少しずつ傷が増えるが回復魔法は使えない。

(このままではじり貧だ。全力で攻撃を放ってみるか)

 

 敵に正対し闘気を拳に集約して高速で突き出す。

 師匠の技で正面から見ると闘気は拳を中心にして流れ花弁が散るように見える(散華)と言う技だ。

 ベヒーモスの巨体が後ろにズレた……だけであまりダメージが無かった。

 師匠のこの技でもダメか、やっぱり素手では倒せないのか?とりあえず時間稼がないと。


 僕の少し後ろに青白い光の柱が立ち上がる。

 転移魔法?魔力暴走するんじゃないか?

「武の道は未だ道半ば。不肖の弟子に手ほどきをしてやろう」

 白髪の老人が中から現れた。師匠の疾風 流妖斎その人だった。


「よく見ておくように」

 一言だけ言い師匠は闘気を身に纏いベヒーモスの前に立つ。

 その時、全身の闘気は消え右拳だけが光を放った。

(なんだこれ、美しい)

 突き出された右の拳が光の花弁を放って貫く。

 ベヒーモスの巨体には穴が開いて死んでいた。


「散華とは本来は捨て身技、防御に使う闘気もすべて拳に瞬間的に移し1点に集めることで疑似的なオーラにする技なのだ」

 師匠の体から闘気が消えたように見えたのはそう言う事だったのか。

「お前と私は別人格なのだから私になる必要はない。見ればわかる、お前はよくやっている。慢心せず更なる修練を積みなさい」

 そう言い僕の背中を叩いて師匠はカトリーヌ達の所へ歩いて行く。


「お久しぶりです、マーサ殿。弟子が森を守れず申し訳ありません。私が来たことは内密にお願いします」

「武神様もご健在で安心しました。幻妖斎殿は自慢の弟子と言って良いと思いますよ」

 2人が知り合いだったとは驚いた。

「カトリーヌも久しぶりだね、轟鬼から聞いたが幻妖斎の事をよろしく頼むよ」

「まぁ、もうお聞きになったんですね。こちらこそこれからも幻妖斎様の事をよろしくお願いします。」


「師匠は転移魔法も使えたんですか?」

 魔法適性は低いと言っていたし、魔力暴走しなかったのは何故だろう?

「我が連れて来てやったのだ。我の魔法は発動に魔力を使用しないからな。用が済んだならもう帰るぞ。我は忙しい」

 見慣れた子供が現れたと思ったら師匠と共に光の柱に入って行き「たまには会いに来い。我は暇なのだ」と言い残して消えていった。


 シュバイツだったけど、忙しいと言った後に暇だと言ったり変な人?だなぁ、いつもあんな感じだけど。

「うわぁ~本物の武神だ。つえ~」と師匠の周りを飛び回っていたピーフェがシュバイツを見た瞬間コートの中に隠れてしまった。

(あれ?シュバイツの魔法で魔力暴走しないなら僕の魔法も使えるんじゃ……確か神龍の涙の服用した場合は魔力使わないって言ってたよな)

 試してみたかったけど神龍と神龍の涙を飲んだ人間では違うとまずいのでやめておく。


「このベヒーモスの死体はこちらで回収しても良いですか?」

 マーサがそう言ってきたので「もちろん」と答えた。

 放置する訳にもいかないし僕も助かる、倒したの僕じゃないけど。


 魔力暴走が起きない距離まで移動してワムードまでミーリエの転移魔法陣を使って帰る。


 ギルドに報告するとオリバーが呼んでいるのでと別室に案内された。

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