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不死者が望む戻らない死  作者: 流幻
グリアの5種族 ゼルディア大陸編
34/135

キュレリー商会

 翌日、キュレリーの店に行ってみた。

 商店と言うよりデパートか?と思うような豪華な店だった。

 服・雑貨・食器・調度品までかなり良い物が揃っている。

 

 中に入るとエガーレインが駆け寄ってきたのでお礼を言う。

「昨日はありがとうございます、エガーレインさんたちがオリバーさんにお願いしてくれたと聞きました」

「えぇ、そうなんですが使いの者を向かわせると思っていたのでオリバー様自らが向かったと知り私も驚いてます」

 やっぱりそんなに珍しい事なのか。


「会頭があと少しで手が空きますのでそれまで店内の品物をご覧になっていてください」

 ん?会えるの?ちょうど聞きたいこともあるから良かった。


 店内を見て回るとエガーレインがついてきて商品の説明をしてくれる。

 2階は冒険者用の装備品を扱っていてルギードでも最大の規模なのだという。

「コートもワンドも使い込まれていますが新調されてはいかがですか?」

 この装備ってシュバイツから貰ったものだからこれを超える物って滅多にない気もする。

「短刀を探してるんですがかなり強力なオーラに耐えられる物ってありますか?」


 武器の担当者がすぐに来た、ウベリって言う名前でかなりの目利きの様だ。

 今使っている武器を見せて欲しい、と言うので見せると不思議そうに言われた。

「この短刀はオーラに耐えうる逸品であるとお見受けします、この短刀以上の物は当商会では扱っておりません」

 少し見ただけでそこまで分かるのか。

「ドワーフの国ヴィルゲータならば存在するやもしれません。お力になれず申し訳ありません」

 ドワーフか……やっぱり鍛冶が得意なんだな、まだ見た事ないけど。

 短刀を使うときは壊さないように注意しないと駄目だな。


「幻妖斎殿、お待たせして申し訳ない」

 通路を会頭のオリバー・キュレリーが歩いてくる。

「この方々は私が案内するので2人は仕事に戻りなさい」

 エガーレインとウベリは黙礼すると急いで戻って行った。


 3階のオリバーの部屋に案内された。

 豪華絢爛な部屋をイメージしていたけど何もない殺風景な部屋で驚いてしまった。

「何もなくて驚きましたか?仕事場はこうする事でどんなものが部屋にあると良いか、どういう物が合うかを想像するんです」

「先日はありがとうございました、会ったことがない僕のために動いていただいた本当の理由は何ですか?」

 質問が直球過ぎるかな?でもオリバー本人が動くこと自体かなり珍しいようだし何か理由があるはずだ。


「私は利を求める商人です、あなたに力を貸し親交を深めることが私やエルフだけではなく、いずれは世界のためになる。ただの勘です」

「勘ですか……」

「ええ、ただの勘です。ですが平民の中でも貧しい家柄の私はその(ただの勘)でここまで成功しました」

 ニコニコして優しそうだけど確かにこれだけ大きな店にするには苦労もすごかっただろう。


「あなたに確認をしたいことがあります。妖精に力を借りることが出来ますか?」

 突然言われて返事に困っていたが丁寧に説明をしてくれた。

 エガーレインが帰還して「守護像が壊れている」と報告をしたが妖精の加護を受けている者でなければ妖精の魔力切れの判別は出来ないそうだ。

 壊れていると分かったという事は妖精の加護を受けたものか関わりのある者がそこに居たことになるがエガーレインはそんな事を言っていない。

 妖精の加護を受けると体から霊気が薄っすらと見えるのだそうだ。

 僕たちは加護を受けていない、つまり僕かカトリーヌが妖精と関わりがあるという簡単な結論です。と言われた。


 マズいな、これは良いように利用されるだけじゃないのか?

 エルフにとって妖精ってかなり信仰対象みたいだしな、少し身構えてしまう。

「誤解しないでください、もし可能なのであれば守護像様の修理をギルドを通してあなたを指名し匿名依頼するつもりです。報酬は望む金額をご用意します。金貨1万でも100万でも」

「失礼ですがあなた個人がなぜそこまでするんですか?」

「守護像様が動かないと分かれば治安が悪化し経済が不安定になります、魔物も増えて森や街の安全が危なくなるので直したいのです」

 そう言う事か。でも普通は何かしらの部隊とか族長とかが対処する問題じゃないのか?それに別の問題がある。


「あのゴーレムは魔力を込めた妖精と同属性の道具で動かすんですよね?道具の作り変えはどうするんですか?」

「そんなの魔力切れの前に込められてた属性が分かれば道具は作り変えなくても済むぜ?久しぶりだなエルフのガキンチョ」

 ピーフェが出てきて教えてくれた、エルフのガキンチョってオリバーの事か?

「あの時の妖精様ですか?頂いた実はお守りとしてまだ持っています。あなたのおかげでここまで成長できました」

 懐からエガーレイン達にあげたような木の実を出して見せた。

「森で魔物に襲われてたのを助けたのは200年位前か。俺っちの名前はピーフェって言うんだ。覚えとけよ」

 そんな昔から森に住んでたのか。


 ピーフェに道具の魔力が切れたらどうするのか聞いた。

「あのゴーレムは操縦者の魔力を同調し増幅させて動く、道具は操縦者の魔力をゴーレムの属性に合わせる変換器なだけだから道具自体が破損しなければ永久に使えるぞ」

「ん?操縦者の魔力で動くならゴーレムも魔力切れなんて起こさないんじゃないの?」

「操縦者の魔力が膨大なら良いけどゴーレムの駆動に足りない分を本体に込めた魔力で補うのさ、普通は500年位で魔力が切れるかな」

 500年も切れない魔力ってすごい量なんだろうなぁ。


 込められていた魔力は闇の水属性だと判明した。

「なぁ、匿名依頼にする必要はないんじゃないか?キュレリー商会からの依頼にして宣伝に使えば良いじゃん」

「いえ、ピーフェ様。守護像様を宣伝に利用など不敬極まりない事は出来ません、それに幻妖斎殿にも利点があります」

 僕に利点って何だろ?

「依頼主の不明な匿名依頼は通常敬遠されます、それを受けて完了する、しかもその依頼が守護像様の魔力補充となればエルフの信頼が得やすくなります」

 

 どうして僕がエルフの信頼を得たいと思ってるのか知ってるのか不思議に思ったが雪月花から聞いていたようだ。

 さすがのオリバーでも族長に会わせるには建前が必要なのだという。

 守護像を直し、妖精の力を借りることが出来る、その上で勇者パーティとオリバーが面会に向けて働きかけてくれるというのだ。

 勇者パーティってそこまでエルフに信用されてるのかと思ったがシンの聖女の肩書がかなり強力らしい。

「勇者パーティ雪月花の名前と各地での善行はエルフの間でも有名です。花矢様は異世界人で孤児院育ちと言っても聖女様ですからね」

「雪月花のみんなは分かりますがオリバーさんは何故そこまで僕に協力してくれるんですか?」

「先ほど申しましたようにあなたと親交を深めることが利となると感じた、一介の商人のただの勘です」

 にっこり微笑むオリバーは「俺っちの出番だぜ!」と息巻いているピーフェを見ている。


 匿名依頼の報酬は金貨1枚に決まった。

 数日後にはギルドから呼ばれるから他の依頼は受けず準備しておいて欲しいと告げられた。

 無償でも良いと言ったがギルドを通す匿名依頼は最低金貨1枚は報酬が必要なのだという。


 依頼の時は神官が1人同行して動くかを確認するのでピーフェは近くに居て僕が呼んだら出てくることにしている。

 神官か、サリエも神官だったけど何人もいるのね。


 その日は宿に帰って休んだ。

 翌日、ギルドから「匿名特別依頼」があると呼び出しを受けた。

 匿名依頼に特別がついてるんですが……。

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