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不死者が望む戻らない死  作者: 流幻
グリアの5種族 ゼルディア大陸編

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謝罪と告白

 テーブルに座っていた3人が立ち上がって手招きをする。

 みんな元気そうで安心した。


 みんなにカトリーヌを婚約者と紹介した。

「カトリーヌと言います。よろしくお願いします」

 雪村が自己紹介をする。

「俺は鵜藤 雪村。こいつは月元 哲也。そして花矢 シン。流幻の……仲間……と言っても良いのか?」

「あの時は本当にすまなかった!怪我で錯乱気味だったとしても許されないと思う。でも、どうしても一度会って謝りたかった」

 哲がそう言って頭を下げてきたが僕自身はまったく気にしていない。


「気にしてないよ。あの状況じゃ仕方ないし哲の傷が治っていて安心したよ。僕の方こそ突然居なくなってごめん」

 そう、僕は何も言わずに立ち去ったんだからどちらが悪いとかは無いと思う。


 しばらくの沈黙が続いた後、シンが呟く。

「あのね、私たち貴方に隠してることがあるの。聞いてくれるかな?」

 僕はもちろんだと大きく首を縦に振った。


「私たち異世界人なの、グリアに来たのは哲が最初で次が雪村、最後が私よ。セイルーンの近くに着いてそのまま孤児院に入ることになったわ。異世界から来る人はたまに居るみたいであまり問題にならなかったの。孤児自体も少なくないしね」

 名前でグリアの住人ではないと何となくは分かってはいたけど当たっていた。

「哲は13年前、俺は11年前、シンは10年前にグリア来た。哲は交通事故、俺はプールで溺れたその後グリアに居たので転移じゃなくて死んで転生したと思う。シンは分からない」

「分からないというのはね、私はグリアでの記憶しかないのよ。体操服って言う私たちの世界での運動着みたいなものに『3年A組 花矢 シン』って名前が書いてあったそうで年齢もそこからの推測なの」

 結構短期間で3人が来てるんだな。


「ちょっと幾つか聞きたいことがあるんだけど良いかな?」

 3人は「何でも聞いて」というので聞いてみた。

「元の世界で3人は顔見知りだったりした?グリアで異世界人だと偽名を使うことが多いらしいけど本名なの?もし帰る方法があれば帰りたい?最後だけど僕にその話をしようと思ったのは何故?」

 矢継ぎ早に質問しすぎたかな?と思ったけど雪村が「俺が答える」と言って答えてくれた。

「俺と哲は地球って所から来たんだけどグリアで会うまで名前も聞いたことは無い、シンは記憶が無いから正確には分からない」

「俺たちの名前は本名だ、偽名を使ってないのは孤児院育ちだからだな。身寄りの無い子ばかりだから異世界人と同じで犯罪に巻き込まれることも多いし偽名を使う必要が無いんだ」

「シンは分からないけど俺と哲は多分、元の世界では死んでる。帰っても死んでるなら意味がないから帰りたいと思ったことは無い、前も話したが院長先生に恩もあるしな」

「異世界人って煙たがられてるだろ?だから隠してるんだけど仲間と思ってるやつに隠すのも変だから話す事にしたんだ」

 嘘は言ってないだろう。そもそも嘘をつく必要が無い質問だし。


「ちょっと良いか?俺からも流幻に聞きたいことがある」

 哲がそう言うと少し考えてから聞いて来た。

「さっきの質問の意図はなんだ?最後の質問は疑問に思ったんだろうと分かるが他の3つの質問の意図が分からない。興味本位で聞いてくる性格ではないだろう」


 確かにそうなる、地球人だと知って気になったんだけど僕のことを異世界人だと知らない3人からは関係ない世界の事だ。

 気になったからだ。と誤魔化すことはできるだろうけどそれは少しズルい気がした。

 迷っている僕にカトリーヌが話しかけた。

「皆さんの間に何があったのか私に分かりません。それでも仲間と言ってくれる方々を信用してあげてはどうですか?打ち明けて離れていったら仕方ないですし、幻妖斎様には私が居ます。」

 そう言われればそうだ。みんなは隠してる事だと言って話してくれた。話してはダメだと言う内容以外は隠しておく必要はないし多分話せないことは聞いて来ないだろう。


「僕もみんなに話しておきたいことがある」

 そう告げて話せることを話した、カトリーヌ達に言った話とほぼ同じだ。

 地球人である事、武神の弟子である事、地球に帰る方法がありその情報を探している事、そして不死である事も。

 3人は何も言わず僕の話を最後まで聞いてくれた。

「大体こんな感じだよ、ダンジョンであの時普通だったら死んでる。化け物と言う意見は外れては無いんだよね」


 死なないだけ、ではなく特別な不死者は常人より格段に高い身体能力を得ることが出来る。

 これは話してないが神龍の力も得ているわけだし普通の人から見たら十分に化け物だろう。

 話しが終わっても3人は何も言わない。

 3人が話し合うような様子もない……つまり、そう言う事なんだろうと覚悟した。


「確認したいことがある。流幻、お前は人類の敵か?味方か?」

 沈黙を破って哲が僕に聞いて来た。

「え?自分から人を傷つけるつもりはないよ。もちろん守るべき人を守るために他人を傷つけることが無いとは言えない。それに死なないからと言って敵意を持って襲ってくる相手にやられるだけという事もない。だから結果的に人を傷つけたり最悪死なせてしまう事もあるかもしれない」

 この答えをどう判断されるか分からないけど本心だ。


「そうか、結局は俺たちの考え過ぎってことだな」

「私たちと同じって事よ、死なないってだけね。そもそも地球基準なら魔法使える私も化け物よね」

 確かに地球なら四肢欠損の治癒魔法が使えるってだけで凄い事だろう。

 

 3人は立ち上がって頭を下げ雪村が言う。

「改めて俺たちの謝罪を受け入れてくれないか」

「もちろんだよ」

 僕はそれ以外の返事が思い浮かばなかった。


「流幻がサイクロプス倒したんだろ?やっぱり魔法で?」

 雪村が質問してきたけど倒したの見てなかったっけ?

 あ……見られたくないから「こっち見ないで」って言った記憶があるな。

「いや、短刀で倒したよ。」

 この後、哲と雪村から戦い方を教えてくれとお願いされまくった。

 

「流幻って地球に帰るため族長に会いたいのよね?」

「うん、情報やいろいろ聞きたいことがあってね。なかなか会うの難しそうだから困ってる」

「後でバレると隠してたと思われそうだから言うけど……聖女なの私。秘密にしておいてね」

 聖女?それって確か各種族で5人ずつ選ばれる最高位の治癒士だったよね?

「シンって聖女だったんだ、四肢欠損治せるしね。えっと……で?」

「聖女って本来なら望めば族長に面会できる称号なのよ、ただ私は孤児院育ちで異世界人だからその権利が無いの」

 そう言う事か。


「今の反応、絶対に聖女の権威とか知らなかったな」

 雪村が半笑いで言っているが反論できない。

「ごめんね。力になれなくて」

 いや、その気持ちだけでもうれしい。


「エルフの族長ならなんとかなるんじゃないか?流幻ってキュレリー商会のオリバーさんは知り合いなのか?あの人に頼めば可能性が少しはあると思うぞ」

 ルギード最大の商会って言ってたけどそんなに凄い人なのか。

「知ってると言っても商会の商人をペイシルからここまで護衛してきただけなんだよね」

「え?それだけ?あの人が自ら嘆願書を書くなんて大金積まれて頼まれても普通は無い事だって聞いたぞ」

 オリバー・キュレリーなんて名前は今回初めて聞いたし過去に助けたり依頼受けたりって言う事も無い。


 カトリーヌにも聞いてみたがやはり初めて会ったと言っている。

「先ほどお帰りの時に、店に来てみてと言ってましたし尋ねてみるのは良いんじゃないですか?」

 別れ際の社交辞令だと思うんだよな。

 商店で買い物はしたいからいろいろ回る時に立ち寄ってみるかな。


 雪月花の3人はこの食堂の隣の宿にしばらく泊まっているらしい。

 僕とカトリーヌは宿に帰って驚いた。何だこのスイートルーム。

 ベッドや調度品も素晴らしくて来客時に対応できる応接セットまである。

 食事も部屋に運んできてくれたけど絶品で驚いた。

 嬉しい気持ちもあったがすごく不安もある、オリバーがここまでしてくれる理由って何だろう?

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