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不死者が望む戻らない死  作者: 流幻
グリアの5種族 ゼルディア大陸編
32/135

再会

 今まで他人に悩みを相談することはほとんどなかった。

 子供の時からよく言われる「良い子」で僕が中学の時に兄が家を出て親に心配させないようにしていた。

 グリアに転移してきていろんな事があったけど助けて貰ってばかりだったから悩みを相談したこともない。

 昨夜は些細な話だけど心がスッキリした気がした。


「昨日の夜はお二人で何をお話ししてたんですか?」

 カトリーヌが聞いて来たけどピーフェが適当に言ってくれた。

「いろいろさ、俺っちの知ってる事とかな、妖精って珍しいじゃん?」

 周りを飛び回っているピーフェと話す僕を商隊のエルフたちが羨ましそうに見つめてきている。


 夜みんなが寝た後にいろいろ質問したりして迷惑じゃないかと思ったけどあまり会話することが無かったようで喜んでくれた。

 妖精は移動加速魔法はよく使う魔法らしくて効果的な使い方などいろいろ教えてくれたので勉強になる。

 寝る前に何か木の実みたいなものを集めていたけどどこに仕舞っているのかと思って聞くと(妖精のポーチ)と呼ばれるものに入れているようだ。

 マリスのポーチの原型みたいなものらしいがかなりの容量が入ると自慢された。


「もうここまで来れば安全ですね、街道もすぐそこです」

 エガーレインがそう告げた、でも最後まで気を抜かないようにしないとな。

「ちょっと待て!そこで止まれ。エルフたちよ、手のひらを上に向けて見せろ」

 ほら、何か事件だ。と思ったらピーフェが呼び止めただけだった。

 商隊の人たちがその場で手を上に向けると木の実を置いていく、見た感じ松ぼっくりみたいなのかな?

 

 ピーフェの体から緑色の光が6つ出てそれぞれの木の実に吸い込まれる。

「俺っちからの贈り物だ、大切にしろよ」

 みんなまるで宝物を得たように歓喜している。

 人目につくと面倒だといって僕のコートに隠れてしまった。

 その後は街道を通って安全にワムードに到着。

 

 商隊の人も入場審査に並んだ、エルフはそのまま入れるはずだけど僕達への敬意の表れなのだと後で教えてもらった。

 カトリーヌが獣人なので僕との関係を聞かれたから「婚約者です」と答えた。

 商業都市と言うだけあって今までで一番人が多い街だな。


「ありがとうございました、おかげで無事にしかもこんなに早く到着できました。かけがえのない経験も出来ましたし……」

 みんなから預かっていた荷物を返して今回の依頼は無事に終了した。

 エガーレインたちは貰った松ぼっくりを大事そうに抱えて帰路についた。


 さっきの緑色の光は何かの祝福なのかとピーフェに尋ねた。

「あ、あれ?何の効果もないぜ。あの木の実はもともと腐らないからな。妖精にあった記念で置いとく分にはいい演出だっただろ」

 グリアには「信じれば泥水も神水」と言う言葉もあるから心の持ちようだと言っている。


「お前達、そこで止まれ。我らに同行してもらう」

 武器を携えたエルフが5人僕たちを取り囲んだ。

 エリアが変わるたびに連行されてるけど僕って要注意人物になってるのかな?

 エガーレイン達の護衛の依頼で聞きたい事でもあるのかと思ってついて行く。

 連れて行かれたのはビジネスホテルのシングルルーム位の広さで椅子4つとテーブルだけがある。

 座るように促され座ると思ったままの事を聞かれた。

「お前たちはここに何をしに来た?目的はなんだ?」

「ペイシルからここまで北進するルートの護衛依頼を受けて来ただけです、せっかくなのでしばらく滞在しようかと思ってます」

 嘘はついてないし、商業都市なのでいろいろと商店も見て回りたいのもある。


「お前はどうでも良い。横の獣人、お前がダグラス・ライオネルの娘だと調べは付いている。諜報目的ではないのか?」

「私はこの方と婚約してます。惚れた方について行くのは自然の流れですわ。問題があるのならすぐにでも立ち去りますわよ?」

 いやいや、種族間で問題になるのも困るけど名声上げないと駄目だから立ち去るとか困るぞ?

「失礼します、この者達の開放嘆願書が3通届いております」

 兵士が入ってきて3つの書状を渡そうとする。

「そんなものは無視しておけば良い、獣人の姫に何かあっては困るだろう!」

 あれ?もしかしてカトリーヌに何かあると困るから帰らそうとしてるのかな?

「それが……3通とも無視できない方々からでして……」

「どれ、見せて見ろ!…………ハインツ、鵜藤、キュレリー…………」

 取調官の顔色が青ざめ慌てているのが分かる。


「失礼しました、ワムードでごゆっくりしてください」

 いきなり態度が変わったなぁ。

 取調官が「姫に怪我があると獣人とエルフの争いが激化するので細心の注意を払って欲しい」と僕にだけ聞こえるよう耳打ちしてきた。

 

 部屋を出て出口まで案内された、そこに2人のエルフが立っている、1人は守護隊長のハインツ、もう1人は知らない人だ。

「首都に定期報告に行った帰り幻妖斎殿をお見かけし連れて行かれたのを見たもので。そちらのお嬢さんは獣人ですね?」

 ハインツがそう言ってきたのでカトリーヌを婚約者だと紹介した。

 もう一人の人は誰だろう?ハインツが「幻妖斎殿、すごい方とお知り合いだったんですね」と言っているが面識はないはず。

「初めまして、私はキュレリー商会の会頭オリバー・キュレリーと申します。商会の者が大変お世話になったそうでありがとうございます」

 やっぱり知らない人だ、商会と言うとエガーレインの商隊のお店かな?

「失礼ですがエガーレインさんの所の?」

「はい、エガーレインはうちの有望な商人です。彼だけではなく帰ってきた商隊全ての者が『恩人が連行されたので助けて欲しい』と言うのですから驚きました」

「キュレリー商会と言えばワムードで一番つまりルギード最大の商会なのです。その会頭のオリバー様が直々に動くなどあまりありませんからね」

 守護隊長が「オリバー様」って言うくらいだから相当な権力者なんだろうけど、物腰柔らかで優しそうだ。

「無事に解放されたので私はこれで。良ければ後日お店の方にもお越しください」

 そう言うと歩いて帰って行った。


 ハインツが宿を紹介してくれて移動中に獣人連れは良くないのか質問した。

「彼女は獣人の姫だろう?そんな人がエルフの首都付近で何かあってみろ、種族間で戦争が始まる可能性もある。あまり同族の悪口は言いたくないが戦争になる事を望んでる輩も居るのだよ。連行されたのも悪意があったわけではなく彼女の安全のためだと理解してほしい」

 戦争を起こしたい人がカトリーヌに危害を加える可能性があるという事か、確かにそれはマズいので気を付けないと。


 案内された宿は綺麗で値段も高そうだ……。

「ワムードの中心にあり買い物や観光に最適の宿で人気なのだ。キュレリー商会というかオリバー様が代金は払ってくれるそうなので何日でも自由に使っていいそうだ。」

 商隊をここまで護衛したと言ってもギルドを通した依頼だし対価もキッチリ貰っている。

 ここまでしてくれるほどエガーレイン達は商会にとって大事な人なのだろうか?

 まさか、死の商人的な商会で戦争を起こしたくて油断させてからカトリーヌに危害を加えるつもりとかじゃないだろうな?

 

 ハインツに受付に荷物を置いたら付いてきてくれと言われた。

 少し歩いた所にある食堂で会合が出来る特別個室があるため部隊も良く使っているお店だという。

「お前に合いたいという人達が居てな、連れてきて欲しいと言われたんだ。俺は中に入らないのでお前たちだけ入ってくれ」

 中で襲われたりしないよな?僕はともかくカトリーヌに怪我が無いようにしない気を付けないと駄目だ。


 扉を開けて中に入る。

「久しぶりだな!元気だったか?」

 聞き覚えのある声が中から聞こえてきた。


 そこに居たのは勇者パーティ雪月花の3人だ。

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