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不死者が望む戻らない死  作者: 流幻
グリアの5種族 ゼルディア大陸編
31/135

ピーフェの力

 翌日、街が結構な騒ぎになっていた。

 妖精が葬儀に現れて祈りをささげて行ったと言う噂が流れていたのだ。


 噂と言うか事実なのだけど。

「エルフって地上で妖精を見たら森の祝福を授かるが見た事を人に話すと祝福が逃げるって言い伝わってるからな」

 ピーフェが教えてくれた。

「獣人は地上で妖精を見たら更なる強さを得る、見た事を話すと力が落ちる。と言われてますわ」

 種族ごとにいろいろ言われてるんだな。


 商隊が揃ったので出発する事になった。

 全員結構な荷物だ、10日分の食料と飲み水と夜寝るとき用の毛布だけでも結構な量になる。

 全員分の荷物を入れても問題ないのでマリスのポーチで保管することにしたら喜んでくれた。

 エガーレインが商隊のお金だけは自分で持っていることになった、流石商人だなぁ。


 僕が先導して進み、カトリーヌが後ろを警戒する。

 非正規ルートと言われていたから険しい道を想定していたけど普通に整備されている。

 聞いた話では街道予定で開拓されていたので沼地などは無いと言っていた。

 荷物を僕が持っているので全員の足取りも軽く思ったより早く到着できるだろうとの事だが安全重視で行かないと駄目なので細心の注意を払う。


 魔物は頻繁に出てくるがそこまで強い相手は居ない。

 もっともカトリーヌも僕も力があるから相手できているが商隊の人からしたら1体でも死人が出るレベルの敵のようだ。


 3日目の昼に守護像がある場所に着いた。

 獣人のカトリーヌが居るので近づくとまずいと聞いていたが今回はエルフの依頼で護衛しているので大丈夫だろうという事だ。

 距離をとって通過したいのだけどエルフの人たちが祈りを捧げたいというので僕たちは少し離れた場所で見守る。

 守護像と言ってもただの石の塊なんだよなぁ、実際に動いてるのを見てないとアレがゴーレムになるとは想像が出来ない。


「皆さんは守護像が動いてるのは見た事あるんですか?」

 祈り終わって帰ってきた商隊の人に聞いてみた。

「まさか、守護像様は街道沿いには居ないですから商人で見た事ある人は居ないと思いますよ、守護隊とか管理部隊とかの人なら見た事ある人が居るかも?程度だと思います。」

 そこまで珍しいのか、一度でも見た事がある僕は運が良かったのかな。


「あれ?あのゴーレム壊れてるぜ?あれじゃただの石の塊だ、もったいねーな」

 ピーフェが突然出てくるもんだから「妖精様」ってエルフの人たちが祈り始めたじゃないか。

 あまり見られたくないんじゃなかったかな?と思ったけど「こいつらには葬式ん時に見られてるからどーでもいい」と言っている。

 

「壊れてるって別に傷はなさそうだけど?」

「このタイプのゴーレムは石に妖精が魔力を込めて同じ魔力を込めた道具で操って動くタイプなんだけど結構前にエネルギーが切れてるな、俺っちが直しても良いんだけど勝手にやると文句言う奴がいるんだよ。魔力の属性が変わると道具の方も作り替えになるし。」

 不思議そうに聞いたらそう教えてくれた。

 そう言えば以前動いてるときには笛の音色が聞こえていたのはそう言う事か。

「あ、この幻妖斎とカトリーヌは俺っちの友達だから仲良くしろよ」

 エルフの商隊にそう言うとフードの中に入って行った。


 ゴーレムが壊れていることはワムードに着いたら守護隊の人に言うようにするとエガーレインが言った。

 妖精を見た嬉しさからなのか歩く速さも少し速くなった気がする。

 妖精を見るとやっぱり嬉しいのかと聞いたら「私たちは何も見てません」と言っている。

 質問攻めにあうと思ったが何も言われなかったのは人に話すと祝福が逃げるという言い伝えが効いているのだろう、かなり助かる。


 守護像から少し進んだとこのに小さな池があり、その辺りに大きい魔物がうろついている。

「あれマンティコアじゃん。珍しいな、ちょっと遊んでいこーぜ」

「マンティコアと言えばSランクの魔物ではないですか?倒せないのではないですか?」

 倒したことあるし倒せると思う。ピーフェはやる気満々だけど商隊の人の物理的・精神的被害を考えると今回は迂回した方が良いのかな。

 確かかなり凶暴だけど縄張り意識が強いから縄張りの中に入らなければあまり被害は無い……はず。


「周囲の樹にマーキングの跡がありませんし最近発生した可能性もありますわ、池に森の生き物が水を飲みに来たら森への被害が大きくなるのではないでしょうか?」

 マンティコアは縄張りに入ると口から火の玉を出した後にすごい速さで近寄り尻尾の毒針で刺してくる。

 この場で一番の問題はこの火の玉になる、こちらへの攻撃は魔法壁で防げるが広範囲に飛ばすので森が心配だ。

「ん?何言ってんの?炎撃つ前に近接攻撃距離まで近づけば良いじゃん、そうすれば警戒してしばらく炎は打ってこないぜ?それか遠隔魔法で倒すかだな」

 そんな倒し方があったのは知らなかった、それなら大丈夫そうだな。


 みんなと距離を取り短刀を構える。

 マンティコアの足元まで移動加速魔法で移動するエターナルファントムを使って一気に近づく。

 そのままオーラを纏わせた翔雷で倒した。

 あの言葉が頭をよぎる……人の真似事……。


 商隊の人は驚いていたがピーフェは納得してない顔をしている。

「もしかしてピーフェも戦いたかった?」

「そうじゃねぇ!あの戦い方はなんだ?強いと思ったが力を持っただけの素人かよ」

 首を横に振って思い切りダメ出しをしてきた。

「最後の技の強さは認める。だが動きが直線的すぎる、緩急が無い、繋がりが無い。あれだと手練れには通用しないぞ」

 最後の技というのは翔雷の事か。他はダメと言うのは何故だ?

「あの移動は加速しているだけだろ?移動中に軌道を変えられるのか?もし途中に罠があったり敵が飛び出してきたらどう対処する?敵の足元に着いたときに少しだけど動きが止まった、一度見られるとそこを狙い撃ちされて終わりだぞ?常時トップスピードも駄目だ、疲労が早く来て隙も大きくなるし目が慣れたら対応されて詰む。移動法と攻撃技が異質すぎて融合していない。もっと滑らかに動いて移動と攻撃の繋ぎ目を無くすようにしろ。お前なら出来るよな?」

 今の一度、それも一瞬見ただけでここまで欠点があるのか。


 その夜、商隊の人たちが寝静まった後にピーフェに相談する。

 戦い方を習った人と魔法を習った人が違う事やフォーゲルに言われたことなどを話してどう改善すれば良いか。


「真似事で何が悪い?技は教えたり一度他人に見られた時点で自分だけの物じゃなくなる。戦いの師匠は魔法の移動を使えないなら移動から攻撃に繋げる隙を無くす。それだけでお前だけの戦い方になるだろ?」

 例えばだけど。と前置きをしてさらに続ける。

「さっきのオーラ技だけど跳躍の時に体を少しひねる必要があるよな?お前の移動法を改良して移動時の動力を使えばひねりの動作があまり要らなくなり発動速度が上がる、かなり些細な時間だがその違いだけでも変わると思うぞ?攻撃と移動を別物としてではなく同じ流れで行う事を練習して慣れていかないと駄目だけどな」


「戦い方を見てわかるのはお前はクソ真面目で教わった事を教わったまま行って教科書が全て。と言う感じだろ?自分の出来る今の最高の攻撃は『自分の最高の速さで自分の最高の力を使った攻撃』とか思ってるだろ?」

 え?それで合ってるよね?

「攻撃は急所などに的確に当たらないとあまり意味がない、溜めや踏み込みが必要になるから移動から攻撃への無駄があると力が分散して意味がない、武器が耐えられないと意味がない。その短刀、お前がオーラを全力で使ったら壊れるぞ。つまりお前の考える最高の攻撃は今のお前には無理だ」

 

「今の僕では最速最高の攻撃では急所に当てられず、そもそも動きに無駄があるから当たらない可能性があり、当たっても武器が耐えられないってことですか?」

「そうなるな、速度と力を抑えて急所に当てるか、被弾を気にせず武器が壊れない程度のオーラで打つか。どちらかしかない」

 確かにオーラを全力で使用したことは無かった。武器が壊れなかったのは良かったと言えるけど。

 

「教わった技を教わったまま使う必要は無くて自分の癖や体格にあった変化が出てくるのが普通だ、多分だが技を教えた奴はお前より筋力が強く小柄じゃないか?動きが少しお前に合っていないのに変化が無いままで真似事だと評した、そのフォーゲルってのが言いたいのはそんな事だと思うぞ?」

「ありがとうございます、ピーフェ殿」

「おい、殿とか要らねー。お前とは対等な友人で居たいから話し方も今まで通りにしろ。少し言い過ぎたかも知れねーけど聞きたいことがあればまた答えてやる。その……名前を付けて貰った礼だ」


 そう言うとフワリとカトリーヌの毛布の中に入って行った。

 なんとなく少しだけ胸のつかえがとれた気がしてゆっくり眠れそうだ。

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