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不死者が望む戻らない死  作者: 流幻
グリアの5種族 ゼルディア大陸編

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エルフの商人

「あの~先ほどはありがとうございました」

 1人のエルフがお礼を言ってきた、さっきの商人さんか。

「私、エガーレインと申します。ワムードの商人で品物を持ってシルマへ向かう途中であんな目に……」

「流 幻妖斎と言います、こちらは婚約者のカトリーヌです。お怪我が無くて安心しました。この先も気を付けてください」

「商隊の他のメンバーや護衛に怪我人が多くて一度ペイシルで休みワムードに戻るつもりです」

「え?他にもメンバーが居て怪我人も居るんですか?案内してください」

 あんな魔物に襲われて無事なのだろうか?


 エガーレインの後について行くと壊れた馬車の所に数名の人が集まっている。

 護衛が4人、商人がエガーレイン含めて6人の10人で全員エルフだ。護衛の4人が大怪我をしていた。

 護衛の人たちの横には顔に布が掛けられ体もズタズタに切り裂かれた人が横たわっている。

「護衛の方々のおかげで我々は無事でしたが馬車は壊れて護衛の人の怪我もひどく死者が出てしまったので喜べないのです」

 確かに死者が出て自分たちが助かったと喜べないし護衛の残りが全員怪我をしていたら帰りが心配だろう。

「僕は人間ですが、獣人と婚約しています。獣人の関係者から治療を受けると駄目とかの信条や制限あったりは無いですか?」

 種族が揉めてたりは知っているし、そういう制限もないと知ってはいるけど個人の信条などは分からないから一応聞いてみた。

 全員、そういうのは気にしないと言ってくれた。これで安心だ。

 

 怪我人の方へ杖を向けて、小声でお決まりの呪文風なものを唱えてから「ヒール!」

 全員の怪我が瞬時に治ってしまった。

 武闘大会で高位術師のヒールを見たがここまでの効果は無かった。

 怪しまれそうな気もしたけど怪我人を治すことを優先したから仕方ない。


 そして大事なことを聞いてみる。

「ご遺体はどうされるのですか?」

「親が健在なので連れて帰りたいが遺体がこの状態では悲しみを深くさせるのではないかと迷っている」

 親としてはどんな状態でも戻ってきて欲しいだろう、でも彼らの言う事も理解できるほどの傷だ。

「仮に僕が魔法でご遺体の状態を綺麗にすると問題は起きますか?」

「問題は無いし可能ならお願いしたいが、死亡してしまうとヒールによる回復は出来ないだろう?」

 遺体に手をかざして皮膚が元の状態になるように整えた。

 グリアに来て目の前で人が亡くなったのを初めて見て悲しくなり涙が出ていた。

「こいつのために泣いてくれるのか、ありがとう」

 隊長はそれ以上何も言わず悲しみの静寂が辺りを覆った。


 怪我は治っても馬車が大破し遺体を親に会わせるため戻ることにするらしい。

 ペイシルまであと少しなので商隊と同行することになった。

 道中、隊長に魔法で遺体の傷を隠している効果は数日しか持たないと伝えた。

 ワムードまで効果が持たない可能性もあると思ったが護衛隊はペイシルからだったようだ。


 街の入り口に着くと商隊は先に街へ入って行ってしまった、僕たちは入場手続きだ。

 獣人だと何か言われるかと思ったら普通に入ることが出来た。

 とりあえずは泊る所を探さないと。

 馬車についていた護衛はここで別れて商人に扮装している護衛だけは残るみたいで宿を探してきてくれた。

 仕事が早いというか、護衛対象がカトリーヌだから精鋭中の精鋭なのだろう。

 もちろん部屋は別々でちょっと安心した。

「一緒の部屋では無いのですね……」

 そう言って残念そうにしていたけど結婚してるわけではないしね。

「僕のいた世界では結婚前の男女が同じ部屋に泊まるのはあまり無いことなんですよ」

 地球に居た頃は恋愛経験が無い訳じゃないけど付き合ったのは数人で結婚はしていなかった。

「カスミ君……」

「何か言いました?」

 何でもない風を装って僕たちはそれぞれの部屋に入った。


 翌朝、カトリーヌとギルドへ向かった。

 何か受けられる依頼を探してみるのと調べたいことがあるからだ。

 掲示板を見ると青い紙が2枚張られている、これポイントが付く依頼だったよね。

 内容は「西の森に出た魔物の群れの討伐」と「ワムードまでの徒歩で護衛依頼」だった。

「魔物の討伐の方が緊急性あると思うので受けましょう」

 受付に行くとカトリーヌを見て「その依頼はあなた達に紹介できませんね」と断られた。

 西の森って聖なる森と言われてる場所か。獣人が同行しているからダメってことなんだろうな。


 それならばとワムードまでの徒歩で護衛依頼を受けることにした。

 依頼者が到着して驚いた、エガーレインだったのだ。

「昨日はありがとうございました、守護像の森を徒歩で抜けるのですが我々が居るので10日前後かかってしまします。問題ありませんか?」

 

「特別依頼になってますが北へ進んでいくルートですよね?獣人も行けると聞きましたし守護像があるなら安全なのでは?」

「人間にはあまり知られてないのですね、守護像は選ばれた人しか動かせませんし守護像があると言うことは辺りにその力が必要な程の魔物が存在する場所と言うことになり危険なのですよ、だからと言って街道を使うと時間と費用がかなりかかるのです。馬車が壊れてしまいましたから……」

 あのゴーレム機動性は皆無な感じだったし、魔物が多い場所に設置されているってことね。

 サリエに会った時もマーダーベア4体とか相手にしてたし少し納得。

 護衛任務でエルフの商人が同行しているなら森の決まり事なども詳しいだろうし目的地も同じだから僕たちとしても助かる。

「日数は問題ないのですが、カトリーヌが同行することになります。それで問題が無ければお受けします」

「ぜひお願いします、ヒポグリフを一撃で仕留めたあなたなら皆安心して移動できますよ!」

 倒したの見られていたのね、逃げていたかと思った。

「出発は2日後で良いですか?明日タースの葬儀があるので参列したいのです。あ、タースと言うのは無くなった護衛の方です」

 もちろん問題ない、依頼を正式に受けて2日後に待ち合わせと決まった。


 出発に向けて準備をしなければと宿に帰ろうとしたときギルドの受付の人に不意に声を掛けられた。

「すいません、ヒポグリフをあなたが倒したというのは本当ですか?」

 倒したと告げるとさっきの魔物の討伐依頼を受けてくれないかと言うので理由を聞いた。

「西の森の守護像が一部壊れていまして、修理をしたいのですが魔物の群れが近くに出ていて修復士が近寄れないのです」

「カトリーヌ、えっと婚約者の獣人なのですが彼女は入れないですよね?」

「はい、獣人の方が立ち入ると種族間の問題になってしまいますのでご遠慮いただいています。サーベルタイガー4体とベノムスパイダー2体なのですがやはりあなた1人では駄目ですか?」


 カトリーヌに1人で行っても良いかと聞いたら自分はここで待ってる。と言ってくれた。

「森の守護像と言えばエルフの森への信仰の象徴だから協力してあげてください。私からもお願いします」

 獣人の彼女がそこまで言うのだからエルフにとっては重要なのだろう、快諾することにした。


 道案内としてフロージュさんと言うペイシルの管理部隊長が同行することになった。

 管理部隊と言うのは森の保全や管理を行う部隊で索敵は出来るけど戦闘には向いていないようだ。

 出来れば早めにお願いしたいと言われたのですぐに出発する事になった。

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