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不死者が望む戻らない死  作者: 流幻
グリアの5種族 ゼルディア大陸編
27/135

昔の話とハイドとの約束

 発表の日と翌日は街中が祭りのような騒がしさだった。

 首都では無い地方の街でこの騒ぎだと結婚が決まったらどうなるんだろう?改めて族長の凄さを実感した。

 婚約発表の数日後、轟鬼に呼び出された。


「お前は早急にルギードで名声をあげる方が良い」

 いきなり言われたので理由を尋ねると、カトリーヌと結婚してしまうとエルフの族長に会いにくくなると予想されるようだ。

「武闘大会でルギードから来ただけでエルフの犬だとか言われただろう、逆も同じだ。今でこそ殺し合いは無いがエルフと獣人は遥か昔より仲が悪いのだ。文献にも残ってない程の昔の話なのだがな」


 その辺りは実は詳しくシュバイツから聞いている。始まりは些細な嘘からだった。

 数万年前、エルフと獣人は仲が良くエルフは木材や植物を、獣人は畑の作物を交換していた。

 その当時は他種族との恋愛は禁止されていたがあるエルフと獣人がお互い惹かれあう。

 エリアの境で密会を繰り返し贈り物をしていた。

 ある日、他の者に見つかりエルフはエルフの森の花を獣人は獣人エリアの食物を持っていたため理由を聞かれた。

 エルフの子は仲間にこう答える「あの獣人が花を盗んだから取り返したんだ」

 獣人の子は仲間にこう答える「あのエルフが畑から盗んだのを取り返したのだ」

 それをきっかけで互いの集落が争うようになってしまう。

 お互い結ばれることが無いと分かっていたため2人はエリアの境で心中をした。

 いつか種族の垣根を越えて結ばれるようにと願い互いの手を固く握って。

 その後、心中をした者の親が相手に殺されたと思い込み激怒。そこから争いがさらに激しくなる。

 エリア境の小さな集落のいざこざが種族間の殺し合いに発展してしまった典型的な悪い例だ。

 まだ文字もない時代で当事者が死んでしまったため真実を知る方法はなくなり争いが争いを呼んでしまったのだと言う。


 

「族長ともなれば公明正大な者だ、俺はエルフの前族長と面識があるが素晴らしい人物だと評価している。最悪の場合は俺やアルベールが協力するがこれも修行と思って自分の力でエルフの族長に面会してみろ」

「私もこれからは同行しますね」

 カトリーヌが轟鬼と僕に言ってきた。

「娘はこう見えてもランクBの冒険者だから問題はないだろう?忠告だが今回は街道を利用しろ。ここからペイシルまでは馬車で2日もあれば着く」

 ランクBだったの?元とは言っても族長の娘が冒険者としてると思わなかったのでびっくりした。


 ノックがあり2人の人が入ってきた、ディールとメルディスだ。

 メルディスはシルマの街のマスター、つまりこの街のトップということになる。

「ダグラス様、カトリーヌ様のご婚約おめでとうございます」

 メルディスとディールは轟鬼の方を向いてそう言った後にこちらを向いた。

「幻妖斎殿、カトリーヌ様をよろしくお願いします。おふたりの馬車の用意が整いました」

「やっと出来たか、お前たちの快適な移動のために馬車を新調したのだ、見に行くぞ」

 嫌な予感しかしないのだけど……。


 見に行った場所にはこれぞ貴族の馬車!という豪華絢爛な装飾の施された馬車があった、確かに乗り心地は良さそうだ。

「うむ、これならエルフの森でも快適に移動できるであろう、メルディス、ディールよくやった」

 轟鬼はご満悦だ。褒められた2人も嬉しそうにニコニコしている。

「今回の移動でこの馬車は使いません、確か護衛付きの乗合馬車がありますよね?それで移動したいと思います、カトリーヌさん良いですか?」

 カトリーヌは「問題ないです」と言ったが3人は「この馬車のどこが気に入らないのか?」と尋ねてきた。


「馬車に不満は無いですよ、ただ獣人のエリアからこの馬車が入れば警戒されるだけと思います。カトリーヌさんには獣人の姫ではなく人間の婚約者の獣人として同行してほしいのです。それが無理ならカトリーヌさんは僕が戻るまでここで待っていてもらうことになりますが……」

 僕の目的を知っている轟鬼は納得してくれたが2人は「それではお嬢様の安全が不安だ」と心配している。

 それならこれではどうかと聞いてみた。

「乗合馬車を貸し切りにして中には商人に変装した護衛を数名、もともと護衛付きなのですから外の護衛も信用できる方を配置するのはどうですか?この馬車はステルド内での移動に使わせていただきます」

 そもそも、カトリーヌはかなり強いし僕も居るから護衛が無しで道中に魔物が出ても問題ないと思うんだけどね。

 2人はさっそく人選をすると言って出て行った。


 次の武闘大会はいつだろうかと轟鬼に尋ねると「次は半年後だがまた大会に出るのか?」と聞き返された。

「獣人の族長に会うためには3回完全優勝しないと駄目ですよね?」

 もしかして3回連続じゃなくても大丈夫なのかな?

「あー、その件に関しては忘れて良いぞ。お前が会いたいならすぐにでも会えるだろう」

 士気高揚のために嘘をつかれていたのかな?ちょっとムスッとしてしまった。


「弟夫婦はカトリーヌを可愛がっているからな。その姪の惚れ込んだ婚約者が挨拶に行くと言えば会わない理由がないだろう」

「アルベール叔父様への報告を先にした方が良いでしょうか?」

 そう考えると後回しにしたら姪と婚約しておいて挨拶にも来ないなど族長を軽く見ているのか!と激怒するんじゃないだろうか……。

「通常ならそうだが今回は話が違う、先に弟と会ってしまうと幻妖斎へのエルフの警戒心がさらに高まるだろう。あいつには俺が上手く説明しておくから心配するな」

 これで一つの問題は解決に向かいそうで少し安心した。


 護衛の人選をして任命するのは明日になるのでそれまでゆっくりすれば良いと言われたので轟鬼にお願いごとをしてみる。

「獣人のギルドで依頼をこなしたポイントで貰える特産品を1-2個頂くことはできないですか?」

 ギルドって独立しているみたいだし難しいかな?そもそも獣人ギルドの依頼受けたことがないし。

「首都で交換するあれか、可能だが何に使うんだ?」

 僕は冒険者になった時お世話になったハイドから言われた内容を話した。

 1年以上も納品なしだとハイドに悪い。

「普通だと1年で1つ交換できるかどうかの貴重品だからな、お前のポイントで適当に数点で良いのか?」

 ポイントが無いと伝えると、武闘大会の優勝で加算されると言うのだ、知らなかった。

「この街で用意できるのは2種類だけだが良いか?首都へ戻ればもっと種類があるぞ」

 それで良い。と伝えると轟鬼が出て行った。

 通常は首都以外での交換は出来ないのだけど今回だけは特別に用意してくれるらしい。


 戻ってきた手には真っ赤な花束と小さな袋を持っていた。

「獣人の爪とカトーレイヌだ、この花はこの辺りにしか咲かない花で妻が好んでいてな、娘のカトリーヌの名前もここから来ているのだ」

 獣人の爪と言うのは人間で言う爪切りの際に切った爪で結構な在庫があると言っていた。

「優勝で付与されたポイントの3割くらい使用したぞ、残りのポイントには注意しろ」

 売上金の一部がギルド職員に分配されるのでギルドからの評価が上がり非公開の依頼を受けやすくなるメリットもあると教えてもらえた。


「ちょっと出かけてきます」

 そう言うと屋敷に帰って転移魔法を使用する。

 通常の転移魔法は転移陣を設置しておく必要があり何処にでも行けるわけではない。

 僕の使う転移魔法は足を地面に付けたことがある場所になら何処でも行ける。

 そのため移動を全部馬車で行ったり空を飛んだりすると途中の道には転移できないので適当に降りる必要がある。

 水中へも転移不可だけど海底に足を付けばそこへの転移は可能。

 逆に足を付いたことがあっても地面が壊れたり崩れたりしてしまい足場がなくなると転移できない。


 ユベリーナへ行くのは久しぶりだけど変わってないと良いな。

 僕は転移魔法を使用した。

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