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不死者が望む戻らない死  作者: 流幻
絆と束縛編
122/135

七賢八宝印と受肉した神

 僕たちはセントスのミューマ大陸側の南入り口に居る。

 今回はセントスの街には寄らずゼルディア大陸への移動のためだ。

 検問所の兵士は相変わらず立っているだけで何もしていない。

 フォーゲルとラルドがネーブルタワーでセントスへ入った者を監視しているので兵士はほぼ飾りなのだそうだ。

 不審者監視は主にラルドの力なのだとフォーゲルが言っていた。

 エリアの境を跨いで検問所を通過しようとした時に呼び止められた。


「止まれ!そこの人間と獣人」

 槍を持った兵士が5人前後から近寄って来るが穂先が向いてないし殺気なども感じない。

 精悍な顔つきで、いつもだらけている兵士とは思えないし、結構な強さもあるようだ。

 逃げたりする気も無いので立ち止まる。

「流幻妖斎殿とカトリーヌ・ライオネル様ですね。エリアマスターより書状を預かっております。この場でご確認ください」

 兵士の1人が礼儀正しく書状を差し出してきたので受け取り開いてみる。

 開けて確認している間に豪華な馬車が用意された。

「久しぶりに少し話がしたい。ネーブルタワーにて待つ。ヘルムート・フォーゲル」

 綺麗な字で、名前の後ろにハンコ替わりなのか赤いインクで何かサイン迄書いてあった。

 それを見たカトリーヌがかなり驚いて入っていた封筒を確認している。

 兵士とカトリーヌに促されて馬車に乗り込むと動き出した。


「フォーゲル様はかなり重要な事があるのだと思いますわ。エリアマークが書かれていましたから……」

 サインと思ったのはエリアマークと言って、領地の紋章のようなものと教えてくれた。

 ライオネル家の家紋のようなものかと思ったが、もっと重要な物らしい。

 エリアマスターがフルネームの横に赤インクでエリアマークを書くと言うのは最重要書類と言う扱いになるのだそうだ。

 通常ならエリアマーク入りの手紙を受取人以外が直に手に持つことも許されない決まりになっている。

 封紙には何も書かれていないので兵士は普通の手紙と思っていたはずで、カトリーヌが見ればわかるだろうと言う判断をしたのだと思う、と説明してくれた。


 

 馬車は夜も休まず走り続けて行く。

 寝なくて良いのかな、と思ったが3人の御者が交互に寝て交代しているようだった。

 セントスの街道は整備がしっかりされているので、振動もほとんど気にならない。

 カトリーヌはゆっくり寝ていたようで馬車の性能に驚いていた。

 もっとも、ミューマ大陸の悪路で慣れていたと言うのが大きいような気もするけど、御者の運転も丁寧だ。

 3日目の昼にはセントスの街に着いた。


 広場に停まった馬車を降りるとラルドが待っていた。

「幻妖斎殿、カトリーヌ様、お待ちしていました。ご案内いたします」

 ネーブルタワーに案内されたが、個別で面会するという事で最初に僕だけがフォーゲルの居る場所に通された。

 相変わらず忙しそうだ、僕の姿を見て手を止めた。

「カトリーヌの話ではかなり重要な件での呼び出しという事ですけど何があったんですか?」

「あぁ、すまんな。俺の用は無いのだかラルドがお前に話があるそうで呼び出した」

 ラルドが僕に用事って何だろう?少し雑談をして時間を潰した。

 カトリーヌに何か聞かれた場合は「オリゼの魔法陣を解除したのが誰かについて聞かれた」と言えば良いと理由まで用意してあった。

 

 少しして僕が退出し、カトリーヌがフォーゲルの部屋に入って行く。

 それと同時にラルドに転移させられて真っ白な空間に移動して来た。

(まさかラルドと戦うのか?)

 反射的に武器に手を掛けそうになった。

「この場所には基本的に他者が立ち入って来ない、少し話がしたいだけだ。身構える必要はない」

 突然、イスとテーブルが現れた。

 心を読まれたようで、安心させるようにラルドが着座した。

「お前に聞きたい事は主に2つ。まずキングサンドワームを討伐したと言うのは本当か、有った事を正確に話せ」

 僕はキングサンドワームが現れた時の事、ウェイズが討伐し魔法のような光で消し去った事、赤黒い光を放って消えた事などを正確に話した。

「ウェイズが張った結界の中でウェイズのみで討伐し、七賢八宝印で消し去った、で間違いないな?」

「七賢八宝印?あの不思議な色の光の事でしょうか?僕も討伐に参加しようとしましたが結界が解除できませんでしたので、ウェイズ殿が1人で倒しました」

「知らぬなら良い。結界内でウェイズ1人が倒した事だけ分かればこの話は終わりだ。」

 手で六角形をかたどっていたけどアレの事だよな……多分。

 

「もう1つ聞きたい事は、前回私と会って以降、神と会っているな?心当たりはないか?」

 心当たりも何もロキに会っている。

(別に隠している訳じゃないと言っていたので言っても問題ないだろう)

「ロキに会ったのは知っている。メリアルメもあいつが渡したという事もな」

「神様ってグリアに沢山居るんですか?神の世界に居るのではないんですか?」

 神の数が多い事は知っているけど、グリアの地上では無く神の世界に居るのだと思っていた。

「今現在、地上に居る神は私とロキだけで間違いない、神の気配は分かるからな。私が聞いているのは『受肉した神』の事だ」

「受肉した神……?」

「降臨と祝福が起こるたび1柱の神が受肉をして地上に降りる。受肉した神の気配は私でも探知できないのだが、お前から神の気配を感じる。2柱の受肉した神に会っているはずなのだが心当たりが無いなら良い」

 

 ラルドが受肉した神について教えてくれた。

 神の力を持ったまま人類の姿をして生まれるが自身が神の力を使用する事は不可。

 グリアの人類と契約をすることで契約をした1人にだけ神の力を分け与えることが出来る。

 契約してしまうと、その人が死亡するまで解除不可能。

 契約した者と同化する事で神の力の全てを同化した者の意思で使用できるが短時間で解除される。

 同化をすると神の力に耐え切れず、契約した者は数日で死亡する。

 受肉した神は時間経過では死なない、肉体は激しい外傷を受けると死亡する。

 肉体が死亡しても神の世界に戻るだけで神自体が死ぬわけではない。

 契約した人が死ぬと受肉した神も転生をすることが出来るが、転生時にそれまでの記憶を失う。

 自身の肉体に損傷を受けない限り何度でも転生でき、その都度契約が可能。

 転生を行わなければ再度の契約は出来ない。

 

 

 かなり重大なグリアの秘密をサラッと言われたような気がする……。

 降臨と祝福って何だったかな?どこかで聞いたよな?

 それよりもこれは絶対に聞いておかないと。

「その話は他言無用ですよね?」

「当たり前だ。もし口外すればその場に居た者を皆抹殺する」

 そしてもう1つ気になっている事がある。

「その受肉した神を見つけてどうするつもりですか?まさか殺すとかじゃないですよね?」

「好奇心だけだ。受肉した神は2柱のみしか居ない。グリアでどのように生活しているのか?どんな奴と契約しているのか?その人類がどんなことに力を使うのか?知りたい事が多くある」

 神同士の争いに首を突っ込む気も無いけど、答えを聞いて安心した。


「そうだ、1つ聞きたいのですがこの場所の事を他言するのもダメですか?」

 僕はカトリーヌに話して良いか不安なので確認のための質問と伝えた。

「ここは神が住む場所では無く亜空間に過ぎない。場所の見た目を話すだけなら問題は起こらないがロキと次に会うまではカトリーヌに話すなよ」

 

 せっかく、この場所に来たし神世界の扉が無いか確認をしようと辺りを見回す。

 目視できる範囲の全てが真っ白で何も無い。

 ガッカリしているとネーブルタワーに戻されていた。

 暫く待っているとカトリーヌが戻って来たが少し雑談した程度のようだ。

「魔法陣解除の話でしたね。千年以上前の事なので色々と調べる事があるんでしょうか」

「フォーゲルにはお世話になっているし、分かる事は話しておいたよ」

 そんな話をしながらカトリーヌがスタスタと何処かへ歩いて行く。

 到着したのはシルビアの店だ。

 エケットが自身の店で働いて欲しい逸材と言っていたので、一応伝えておきたいという事のようで訪れたそうだ。

 セントスって訳ありの人が集まるイメージだから、シルビアも何か問題を起こして逃げて来たとかなんじゃないかと不安になった。


 お店に入ると店番の女性が居たのでシルビアを呼んでもらう。

 幸いな事に店番の人も僕たちを覚えていてくれたので話が早かった。

 

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