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不死者が望む戻らない死  作者: 流幻
出会いと修行編
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神龍と特別な不死者の帰還方法

 魔法の話をシュバイツに聞いて僕は愕然とした。

 使えるようになるのにどれくらいの時間が必要だろう。


「そういえば呪文とかは要らないんですか?」

「火や水の塊を出すだけなら必要ない。呪文は塊を別の形に変えるときイメージを言葉にして具現化しやすくなるので必要なだけだ」


 やっぱり呪文もあるのか、 基礎の話だけでも難しい。ただ、これを理解しないとオーラの習得が難しいので頑張らないといけない。

 考え込む僕を見て不思議そうな顔で聞いてきた。


「お主は魔法やオーラを使いたいだけか?魔法の原理を知りたいのか?」

「使いたいだけですが、原理を知らないと使えないですよね?」

 シュバイツはため息を吐き待ってろと言い家に戻った。


 戻ってきた手には小瓶を持っている。

「ウェイズの奴が『魔法の基礎を教えてやってくれ』と言うからオーラや魔法の原理を何かの研究に魔法を応用するために必要かと思ったぞ、お主は魔法をイメージできるか?」

「ファイアーボールとかウインドカッターとかですか?」

「発想が貧困だな。これも魔法に分類される」

 シュバイツが海に向かって指を差すと水が激しく立ち上り巨大な龍の形に変化した。

「魔素と属性元素を融合させて発動させる他に操ることも魔法だ。イメージが大切になるのだ」

「イメージですか?」

「例えば先ほどお主が言ったファイアーボールだが、炎を生み出すだけなら基礎だ。それを応用し槍状にして素早く飛ばす、広く展開して盾にする、細かくし散弾として使うなどがある。さらに言えば生き物を模して使用することも可能だ」

 シュバイツの出した炎の塊がいろいろ形を変え、最後は鳥となって飛びまわった後、指を鳴らすと消えていった。

「魔法の発動は基本中の基本。それをどのように扱うかは各自のイメージが重要だ。イメージできないものには変化できないからな、その辺りはオーラも魔法と同じだ」


 それに見惚れていた僕にシュバイツは手に持った小瓶を見せて言ってきた。

 (神龍の涙)と言う秘薬だそうだ。

「これを飲めば魔法もオーラも自在に使えるようになる、どのような魔法でもお主が想像できることは。ただしグリアの外部には干渉できない」

「そんな飲み物が……それを貰うのに条件は何かあるのですか?」

「ウェイズの頼みだから欲しければくれてやる。普通は飲めば残りの寿命が半分になるがお主なら全く問題ないだろう」


 え………………寿命が半分になるとか大問題なんですけど?

 それ程までに魅了的な提案なのだろうが迷ってしまう。

 きっと魔法を学んでも僕の残り寿命の半分では魔法が使えるようにならないと判断されたのかも知れない。


「何を迷っている?そもそも不死者のお主の寿命が半分になっても問題ないぞ?」


 今なんて?不死者?僕が?どうして?普通の人間だし怪我したら痛いよ?もしかして異世界転移したら不死者になるの?

 頭の中がグチャグチャだ、考えが纏まらない。


「ウェイズから聞いてないのか?そういえば特別な者には変なルールがあったな」

 なぜウェイズの名前がでる?

 特別な者?何度か聞いたことがある言葉だった……。

 僕は異世界から来た者の正体を隠す隠語だと思っていた。


「我とウェイズはこの世界の創造神に作られた。奴は不死者で我は龍だ」

 不死者?龍?

「今では不死者も龍も増えた。区別のため奴は原初の不死者、我は神龍と言われている」

「僕はどうして不死になったんですか?異世界から来たら不死になるんですか?」

「奴の肉を食ったからだろうな、それ以外で不死にはならん。異世界から来ただけで不死になることは無い」

 人の肉を食べた?いつ?もしかして最初に食べたあのステーキか?

「あいつから森の中で死にかけたお主を見つけ死にたくないと、うなされていたからその場で仕方なくと言っていたな」


 僕は不死になりたかったわけじゃない!ウェイズに対して怒りが込み上げてきた。

「地球に戻りたかっただけなのに、どうして、どうして……」

「その思いがあったからだろうな。異世界から来たものが元の世界に戻る方法は1つしかない」

 その一言にハッとした。地球に戻る方法がある!?

 

 この後シュバイツから聞いた話は思っていた方法とは違った。聞いた話の流れはこんな感じだ。


 今の姿のまま元居た世界に戻る方法はない、一度死んで魂となり転生するしかない。

 それなら不死者になると戻れないじゃないかと聞いたらそうではなかった。

 転生するためには膨大なエネルギーが必要になる、それを得るための方法が不死者なのだと言う。

 異世界から来たものが不死となった場合に特別な不死者と言う扱いになる。

 この特別な不死者は条件を満たすと(チェイン)と呼ばれる命の束縛が10個付与される。

 チェインは自分の意思で行わないと解除できない。

 解除条件を満たすと有無を言わさず解除され、体内のエネルギー量が毎回2乗されて戦闘力も強化していく。

 10個すべてを解除すれば不死ではなくなり死ねるようになる。

 その後に自殺か他殺で死ねば記憶も持ったまま元の世界に戻れる。

 蓄えられたエネルギーを元居た世界に流し入れ体を作り魂を入れるので転移してきた時間に同じ外見で戻れるそうだ。

 老衰で死んだ場合はグリアでの最期を迎えて終わる。

 チェインの付与条件は神龍にチェインの内容は何かと尋ねるだけ。

 そして、以上の内容とチェインの内容を他者に漏らした場合はチェインが壊れて以降は解除できなくなる。


 疑問をぶつけてみた。戻れる保証はあるのか?という事だ。

 答えは、保証はないが数千年前に2人チェインをすべて解いた人が居てグリアから居なくなったのは間違いない。と言われた。

 方法があるのなら知りたい。僕は聞いた。

 「チェインの内容は何なのですか?」

 自分を神龍だと言っていた、これで良いはずだ。

 シュバイツの右手が激しく発光し形を変えていた、龍の手なのだろう。


「お主の両手の甲をこちらに向け前へ出せ」

 言われるがままに手を前に出すと、少し痛むぞ。と言い爪で手の甲に傷をつける。

 左右どちらも5回、合計10回。痛みはほとんどしなかった。傷から力が流れて全身をめぐる感じがした。


「お主にチェイン、命の束縛を刻んだ。その傷は他者には見えぬ。チェイン1つ解かれると傷1つ消える。その傷すべてが消えた時お主の命は死を取り戻す」

 

 告げられた10のチェインはこの10個だ。


 原初の不死者に会う。

 神龍に会う。

 大賢者に会う。

 神の世界への扉を開く。

 聖魔戦争で天使か悪魔1000体倒す。

 5種族の長に認められる。

 フィードを発動する。

 神の一柱に打ち勝つ。

 創造神に謁見する。

 命の台座ですべてを捨て終わりを願う。


 内容が難しすぎる。聖魔戦争って確か冒険者ランクB以上が参加できるやつだから中でも比較的簡単なのかもしれない。

 神に勝てとか創造神に会えとか不可能なんじゃ?と思うが過去に2人は出来てる内容ってことだよな。


 シュバイツが神龍、ウェイズが原初の不死者なら2つ完了しているはずなのに手の傷は消えてない。

「僕は今2つ解除できてるんですよね?傷が消えてないのはなぜですか?」

「お主が我に会ったのはウェイズの紹介、ウェイズに会ったのも偶然だろう。お前の意思で行ったことではない。一度、岬を出て自らの意思で我に会いに来れば良い」

 なるほど、自分の意思で行うと言うのはそういう事か。


「ただし、一度外に出るとウェイズの紹介者ではなくなる。ウェイズかウェイズの紹介以外で立ち入った者の命の保証はない。不死者のお主は我の爪牙で切り刻まれ肉塊になり果てても死ねぬ永遠の苦痛を覚悟するのだな」


 シュバイツが僕を指さした瞬間、岬の入り口にいた。

 そう言えば神龍の涙って薬貰ってない……。


 神龍相手に無事で帰ってくる自信はない、さっきの言い方だと捕まれば逃がしてくれる気もないのだろう。

 神龍の涙を貰えていれば魔法が使えるから会ってすぐ魔法で移動と言う方法もあったかもしれない。

 チェインを解除するたびに戦闘力も上がると言っていた、他のチェインを解除して強くなってから再度ここに来れば……。


 帰還方法が分かっただけでも良しと考えるか?

 僕はどちらの選択肢を選ぶか考え込んだ。


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