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不死者が望む戻らない死  作者: 流幻
ミューマ大陸・小人領ゼンペリム編
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武神とハイドと、小人族長の出した条件

 ノックをして入ると師匠は1人の青年とお茶を飲みながら雑談していた。

「幻妖斎殿では無いですか、お久しぶりです。沢山の特産品の売却ありがとうございます」

 そこに居たのはユベリーナの副ギルドマスターのハイドだ。

「こちらこそお世話になってます。おかげで冒険が自由にできます。今日は師匠に依頼ですか?」

「いや、ハイドとは旧知の仲なのだ。歳は違うが友人と言う感じだな」

 師匠が先に答えてくれた。

「流妖斎、お前がギルド職員と仲が良いと問題になるから関係は隠しておくんじゃなかったのか?」

「私の弟子にはバレても問題ないだろう」

 え……師匠の名前を呼び捨てにしたぞ?

「ハイドさんって実はかなり強いんですか?ギルドの副マスターですよね」

「私は座学で職員に採用されたので強さは全く……流妖斎のおかげで最高位の副マスターになれたと言う感じだよ」

 確かに強さは全く感じない、優しそうで勉強は得意な雰囲気の青年だ。

 ギルドマスターになるには冒険者ランクを上げて功績を積む必要がある。

 そのため座学で採用された職員の最高位は副マスターになるのだそうだ。

「今日は何の用事だ?困り事でも起きたのか?」

 

 僕は品物を取り出して渡すと経緯を説明した。

 持って行った使いの者と言うのがハイドだった。

 師匠が直接行くと騒ぎになる事を考慮したそうで180日と言うのはハイドが大陸間転移を再申請できる日数のようだ。

 輝きを取り戻した花を見つめる瞳は恋をしている少年のように綺麗に見える。

 

「花は枯れるがそれもまた美しい、サクラの記憶はこの花のように未だ色褪せない。すまない、今日は1人にしてくれ……」


 思い出を辿るように目を閉じた師匠は静かに呟いた。

 僕とハイドはそっと家を出た。

「幻妖斎殿、仕事がやりにくくなりますので私たちの関係は内密に願いますよ」

 ユベリーナまで送って行こうかと思ったが、まだ他に仕事があるそうでそのまま分かれた。

 これで用件は済んだ、再度宮殿に赴き小人族の首都オレエストルに戻った。

 

 

「早すぎるだろう、師弟の再会の時間を考えて3日後にしたと言うのに、もう戻ったのか」

「師匠にとってかなり大切な品物だという事が分かりました。それに時々会ってますので……」

 渡したときの反応を伝えると、小さく頷いていた。

 

「面会は3日後だ、2日間は首都観光でもしておいてくれ」

「そう言えば族長ってどんな方なんですか?」

「名前はフェーレ・オズナール様と言う。小人族の安全を考える頼れる御方だ。ただ……その為には多少の犠牲はやむを得ないと言う考えでもある」

 族長ともなると種族の事を考えるのは当たり前なのだろうけど頼れる存在って言われるのは本人も嬉しいだろうな。

 カトリーヌが泊っていると言う宿に案内された。

 首都観光であっという間に2日が過ぎた。

 いよいよ明日は族長との面会だ。

 エケットには僕が異世界人であり、元の世界に戻るため許可が要る事は伝えてある。

 面会時には同席して説明までしてくれるそうなので安心だ。

 これでチェインがまた1つ解除できる。


 翌日、面会の日になった。

 迎えが来たので僕とカトリーヌは宮殿に入り、エケットと共に待機室で面会の時間を待つ。

 僕たちよりもエケットが緊張して歩き回っている、族長面会だから仕方ないのだろう。

「お会いするのは何度目でも緊張してしまうな」

 轟鬼やアルベール族長に何度も会っているから慣れてきたとは言っても謁見室での面会は僕も緊張する。


 準備が整い謁見の間に呼ばれた。

 中に入ってチラッと確認すると凹んだ結界がある場所は確認できた。

 さすがに中までは見えないが見に行く訳にもいかない。

「私が小人族長のフェーレ・オズナールだ。武神様の弟子の流幻妖斎と獅子王の娘カトリーヌ・ライオネルだな。よく来てくれた」

 小人族なのでかなり小さいが恰幅の良い威厳ある顔立ちだ。

「それで、用向きはなんだ?」

 僕は自分が異世界人で元の世界に帰るため族長の許可が要る事を告げた。

「ふむ……そう言う事か。私の許可が無ければ元の世界に戻れぬという事だな?」

「はい、帰還のためにご許可を頂きたいのです」

 フェーレは少し考えた後に僕に告げる。

「小人族長フェーレ・オズナールはお前の帰還を許可できぬ!」

 え?許可できぬ?

「フェーレ族長。何故、許可を与えないのですか?私からもお願い申し上げます。小人族の未来のためにも!」

 エケットが焦りながらも進言してくれた。

 このまま許可されなければ、族長の気が変わるか代替わりするまでチェインが解除できない。


「その者はかなり強く、世界を守る力があると聞いておる。帰還させずグリアに留め置けば小人族の有能な剣や盾となろう」

「それは横暴ですわ、グリアの事はグリアの民で対処すべきです」

「使えるものは効率的に使う。許可が欲しいなら対価を用意しろ」

 カトリーヌは正論だが、フェーレと同じような事をラルド……グリアの神が言ってたからな。

 対価って、許可が欲しいなら金貨を用意しろって言う事だろうか?

 思い切って聞いてみた。

「対価と言うのは金貨ですか?」

「違う。このグリアにレグリアと言う組織があるのは知っているか?その頭領が持つ最高の剣と盾、レグリアの剣とレグリアの盾と言うものがある。どちらかを私に献上せよ」

「レグリアなんて組織、ただの噂話でしょう。私も噂しか知りませんわ」

(ん?レグリアってウェイズの組織で、レグリアの剣と盾ってシェスとアイゼンの事だよな?)

「待ってください、その剣と盾ってレグリアの頭領を守護する側近である人間の異名ですよ。人を献上することは出来ません」

「幻妖斎殿はレグリアと言う組織をご存じなので?その話が本当ならグリアにおいて人身売買は族長でも罪に問われますぞ」

 そもそもあの2人がウェイズの元を離れるわけがない、無理強いすれば族長の命の方が危ない気もする。

「ならば、どちらか1人でも良い私の元に連れてこい。説得して見せよう。それならば人身売買にならん」


 僕たちはルオス鉱石店のエケットの部屋に居る。

 フェーレが、次に面会するのは剣か盾と呼ばれる者を連れて来た時だ、と言って謁見は終わった。

「まさか族長があんなことを言い出すと思ってなかった、申し訳ない」

 エケットが頭を下げているが、あんなことを想像していないのは当然だ。

「でも族長の気持ちも分かりますよ。僕としてはそこまでの力があると思われてるだけでも嬉しい事です」

 これからどうしよう……シェスとアイゼンが思い通りに動くわけが無いから許可はもらえない。

「幻妖斎殿はレグリアの頭領と面識があるんですか?噂では聞いてますが実在しているんですよね」

「私も噂話で聞く程度ですけど幻妖斎さまのお知り合いは本物なんでしょうか?」

「あれ?カトリーヌは会ったことあるよ。ベシコウの街へ向かう時に会った老人と2人の男を覚えてない?あの人達がそうだよ」

 それを聞いたカトリーヌが驚いていたが無理もないかも知れない。


「幻妖斎殿。その剣か盾の異名を持つ方を連れて来られないか?」

「流石に無理じゃないかな……小人族に仕えてってお願いするって事ですよね?」

「連れてくることが出来れば謁見が可能ですから私が族長を説得します。無理強いすれば罪になるので、そこまではしないと思います」

 その連れて来るってこと自体が難しそうだけど頼んでみるか。

 盾と言われるアイゼンはウェイズの傍を離れられないだろうし、可能性があるのはシェスかな。

 

 その前にウェイズの居場所が分からない。

 マジアルに向かうと言っていた気もするが、かなり前の話だし今は何処に居る事やら……。

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