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不死者が望む戻らない死  作者: 流幻
ミューマ大陸・小人領ゼンペリム編

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始りの地と人類がまだ知らない過去、そして僕にだけ見える異様な光

 テイルの話をクレセントムーンのメンバーから聞いた。

 歌を愛し世界中の詩を研究、吟遊詩人でありながらBランクの冒険者になった。

「各地に点在する歌詞からグリアの過去を想像し思いを馳せる、とか言ってたからな」

「そのために古代文字の勉強までしてたんだぜ」

「首都に行ったのも何か調べるためって言ってたよな?」

「何とかって名前の村のあった場所だな。結局分からなかったんだろ」

 任務で滞在していたと聞いた記憶があるけど、その任務と言うのが書庫の整理だったようだ。

 学者並みの解読力があり、テイルを名指しで依頼があった。

 そこでリリースに見初められて結婚になったが他のメンバーは安心したそうだ。

 歌の情報があると見境なしに行動するので、気を抜くと早死にすると思うような場所にも平気で行っていたようだ。

 結婚して宮殿に入ると遠出は出来なくなるので命の危険は無い。

 Bランクのパーティが心配するほどの行動力と言うのも驚きではあるが……。

 食事も終わって会話も区切りがついたので宿に戻って眠りについた。


 首都オレエストルはここから南下すれば良い。

 また、雪道を歩いて行くのか……と思っていたが他の方法があった。

 馬車ほど大きくは無いがソリがあると教えられた。

 首都までの半分くらいはソリで早く移動できる、そこからは雪が無くなるので徒歩か馬車になる。

 ただ問題があるのはかなり危険なのだそうだ、結構な勾配を駆け降りる事になる。

 投げ出されたり、荷物が飛ばされる事も頻繁に起こるそうなので、乗るなら自己責任でと言われた。

 雪道のソリって初めてなのでちょっと楽しみだが、カトリーヌは不安そうだ。

「僕が魔法で落ちないように守るから安心して良いよ」

「幻妖斎さまの魔法で以前みたいに飛んでは行けないのでしょうか?」

「出来るとは思うけど雪で視界が悪い中を飛ぶのは危険だし、目立つから警戒されても困る。それに道も分からないからね」

 少し嘘をついた……雪道のソリにどうしても乗ってみたいのだ。

 雪雲の上を飛ぶことも、魔法で姿を隠して飛行する事も可能だし、首都なら上空から見ても場所は分かると思う。


「何か嘘ついてるでしょう。分かるんですからね」

 チラチラと彼女を見ていると急に話しかけられた。

 正直に話すとちょっと呆れられたようだ。

「お父様やスピリエもですけど幻妖斎さまは嘘をつくとバレやすいですから正直に言ってくださいね」

 昔から嘘は苦手だけど、あの2人よりも上手いと思うんだけどなぁ。

 

 ソリはと言うと怖かった。

 一直線に滑降して行き、平らになっている数か所の減速ポイントで少しスピードが落ちて、また滑降して行くを繰り返す。

 死亡事故は数年に1回起きるくらいなので安心しろと言われたが結構高確率だと思う。

 魔法で落ちないようにガードはしていたが結構な揺れ方をしていた。

 スピードだけで言えば馬車より早いが、その日のうちに中間まで到着したのには驚いた。

 中間地点には小屋があって休憩できるようになっている。

 2日に1便だけ馬車があるが僕たちは歩いて降りる事にした。

 雪も無くなったし歩きやすい、すこし肌寒いが問題はなさそうだ。

 

 小屋で朝を迎えた僕たちは山道を下って行く。

 自然豊かな山で見た事が無い植物もあった。

 シュバイツの所で学んだ人類の始まりについて思い出した。

 

 この小人領は遥か昔に神が人類の5種族を作り出した(始まりの地)になっている。

 そのため原種と言われる他のエリアでの絶滅種が現存しているようだ。

 シュバイツの情報なので間違いないのだが、人類には知られていない。

 人類の歴史では、光の神がゼルディア大陸に人間・エルフ・獣人を生み出し、ミューマ大陸に闇の神が人間・小人・ドワーフを生み出したと記されている。

 実際は、光と闇の神が子供に当たる他の神々を生み出し、その神々が人類を作った。

 光属性の神々はエルフと小人を、闇属性の神々が獣人とドワーフを生み出し、最後に協力して人間を生み出した。

 人口が増えて始まりの地が手狭になったので各地に種族が散らばってエリアを作って行く。

 体力と機動力に優れていたエルフと獣人が西のゼルディア大陸へ、ドワーフが山を下りてエリアを作った。

 小人は当時の技術では危険すぎて山を下りることが出来ず始まり後に残った、最も人口の多かった人間が東西にエリアを持った。

 神々は人類の行動に介入せず各種族の自主性に任せていたため、ここで問題が起きた。

 光と闇の属性が違う神々の作った種族同士が隣り合ってしまったのだ、反属性のため種族同士に小さな争いが起こって行くことになる。

 光と闇の神も、その子供である神々もお互い仲が良く、人類間で争うように生み出してはいないが大本の属性相関が人類に影響したようだった。

 仮にエルフと小人と人間の大陸、獣人とドワーフと人間の大陸に分かれて居れば争いは殆ど無かっただろう……とシュバイツが言っていた。

 今思えば獣人の轟鬼とドワーフのエルバートに親密な交流があったり、エルフのオリバーが小人のエケットと仲が良さそうなのは元の神の属性が同じだからなのだろうか。

 神々が人類へ公に干渉したのは『エリアを8つに分割し侵攻しても領土の拡大は出来ない』と制定した時だけなのだと言う。


僕は神の世界への扉が始りの地の話を聞いたときに小人領か少なくともミューマ大陸にあると推測していた。

 シュバイツに聞いても笑うだけで答えてはくれなかったが……。

 最近は聖魔戦争の入り口があるセントスも怪しいのではないかと思ったりもした。

 妖精界にある誕生の樹はトニミマーナの形を模していると言っていた。

 妖精界誕生前からある事になるし、トニミマーナに有るのではないかと思ったり、よく分からなくなった。


 下り坂なので早さを調節しながら降りて行く。

 離れた所に犬のような姿の群れが見え身構えたが魔物では無いようだ。

「珍しいですね……リカオンと言う狼のような動物なんですが大昔にほぼ絶滅していると言われているんです」

「そうなんだ、魔物じゃないなら討伐しなくて良いね。希少な生き物なら大切にしないとね」

「……そうなんですけど……リカオンってかなり凶暴で弱い魔物より危ないと言われてるんです」

 え?この道って馬車が通る道なんだよね。倒した方が良いのかな?でも絶滅危惧種のような生き物を討伐するのは迷う。

「とりあえずは威嚇して追い払いましょう、街へ着いたら報告した上で対応はギルドに任せる方が良いと思いますわ」

「威嚇か。逆に襲われないように気を付けないとダメだね」

「うふふ、私に任せてください」

 カトリーヌは武器を装備しないままリカオンに近づいて行く。

 闘気を放っている訳ではないが独特な雰囲気がある。

 リカオンの群れは道を離れて山の方に消えて行った。

 威嚇している感じは無かったがこれも獣人の力なのだろうか。


 少し降りたところに、さっきよりもかなり大きなリカオンが2体いる。

 群れのボスとかなのかな?ここもカトリーヌにお任せしよう。

「あれはゲイルリカオン、魔物ですけど通常より大きいですわ。かなり速いので注意しましょう」

 こちらに気が付いた2体が高速で走って来て左右に分かれて飛んだ。

 かく乱するように動き回って同時に飛び掛かってきた。

 短刀を切り上げると2体ともスパッと切れた。

 ゲイルリカオンは不気味な赤黒い光を放って消えていった。


「流石ですわ、あの速さに正確な反応が出来るなんて惚れ直してしまいます」

「今のって特殊変異体とかなのかな?倒したときに赤黒い光が出てたんだけど……」

「え?赤黒い光ですか?私には見えなかったですが見間違いでは?通常より大きいけど変異体では無いと思います」

 見間違いでは無い、確実に赤黒い光を放って消えた。

 最初は雪月花に臨時参加したダンジョンのサイクロプス、次はセリアージュを襲ったハーピーでこれが確か3回目だ。

 街に着いてリカオンの群れの報告をする時、ついでに言うだけ言っておこう。

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