禁忌の岬
朝のご飯を食べ終わった後に僕はウェイズたちに大切なことを告げた。
「今は流 幻妖斎と名乗ってます。」
そういえば言ってなかったなと言うのを思い出した。
昨日、尾綿って言われてたからね。
「そうか、これからは幻妖斎と呼ぶようにしよう」
改名に関してはその一言で終わった。
「ちょっと手合わせしないか?おま……幻妖斎の実力が気になる」
アイゼンが突然言ってきた、昨日のウェイズとの手合わせを見て気になったそうだ。
確かレグリアの盾って言われていると言っていたな?
確認や試したいこともあるし僕もアイゼンの実力は気になるので是非にとお願いした。
武器はレイピア?っていうんだっけ細長い剣と短剣の二刀流でレグリアの盾と言う割には盾は腕に固定されている小型の盾のみ。
スラリとした長身が自然体で刀身の長い細身の剣を構えると美しく見える。
開始の合図とともに僕から攻撃をする。
アイゼンの戦い方は受け流してからの突きや切り付けがメインになっている。
受け流された後の対処は師匠との修行で慣れているとは言え受け流されないように当てるつもりでやる。
シャリーン、シュリーンとお互いの攻撃を受け流す音が響き渡る。
当たりそうだ!と思うと盾で防御される。どちらも決定打は出ない。
やはり何か違和感がある、僕が攻撃する場所を分かってるような動きがあるのだ。
そこで僕は型を崩してみた。すると一瞬アイゼンの動きがほんの少しだけ崩れた。
再び攻撃すると受け流されたのでその威力を利用して回転し切り上げる。
攻撃を受けたアイゼンが何かつぶやくと刀身が白く変化した……魔法剣だ。
「そこまでじゃ」
ウェイズが止めた。
「幻妖斎よ、気が付いたようじゃの。良くも悪くも真面目すぎるのじゃ。今後お前が魔法剣かオーラを習得すればこの2人では相手にならんじゃろうの」
ウェイズたちは師匠の流派(疾風流)をよく知っている。
僕は師匠の教えを忠実に正確な型を行っているので次の動きが読めるのだ。
師匠が「自流を名乗り私を超えろ」と言っていたのはこういう理由だろう。
これからは学んだことを基礎にして独自の動きを考えていかないといけないな。
街道から離れるにつれて獣道すらないので移動が大変になってくる。
風も強くなって潮の香りがするなと思ったらもう少し行ったら海になるそうだ。
「見えた見えた、あそこじゃ」
ウェイズが指をさす方向に大きな岩が2つ並んでいる。
近くに来て分かったのは岩が岬の入り口の両端にあるのだ……周りは何もないから不自然すぎる。
岩と岩の間の地面には立ち入るなと言わんばかりに引っ掻いたように凹み線が引かれていた。
「このまま4人で入るといろいろ面倒じゃから1人で行くので3人はここで待っておれ」
待っている間にシェスとアイゼンに聞いたら、1人でどこかに行くのは仕えてから初めてだと言う。
この場所にも来たことがないそうで、中にいる人物の事も僕に話したときに初めて聞いたそうだ。
ただ、この場所にまつわる話は知っていると言っていた。
グリアのどの種族の支配下にもなく禁忌の岬と呼ばれて誰も近づいてはいけない、立ち入ると誰であれ命の保証はない。
かつて調査に向かった5種族連合の精鋭部隊が消えたという逸話がある。と伝えられていると言うのだ。
確かに威圧感のある巨岩の間に不自然に引かれた一本線。
秘密の場所にしては遠目からでも目立つし海側から入ることも出来そうだ。
僕たち3人なら敵が襲ってきても撃退できるのでは?とシェスたちを誘って中にこうとしたが一蹴された。
「マスターが3人はここで待てと言うのだここで待つ、もし1人で行こうとしても3人で待てと言われたから止めるぞ」
目が本気だったので流石に行くのはやめた。
1時間ほどしてウェイズが帰ってきた。
「とりあえず話はしておいたぞ、ここから先はお前ひとりで行くのじゃ、幻妖斎よ」
ウェイズ達は着いて来ないのか聞いたら「一人で来させろと言われたからの~」と断られた。
「幻妖斎、お前を助けたのは儂の独断じゃ、アイゼンやシェスは関係ない。それだけ覚えておいてくれ」
立ち去る前にウェイズが僕を呼び止め2人に聞こえないように神妙な表情をして呟き去っていった。
この時はウェイズが言っている意味が分からなかった。
助けられていろいろ世話になった師匠も紹介してくれて感謝しかない。
立ち入ると命の保証はないと言われる場所に足を踏み入れた。
なんともない普通の岬で思ったよりも小さく5分ほど歩いたら家が見えた。
ノックをして中に入るとそこに居たのは男か女か分からない小さな子供。
「我はシュバイツ。お主が原初の特別なるものか。よく来たな」
どう見ても小学生くらいで見た目と声でも性別は分からない。
「お主はオーラのために魔法を基礎を学びたいと聞いたが間違いないか?」
「はい、可能であればこの世界の常識や種族についてと魔法も僕が使える範囲で教えていただきたいのです」
「うむ、少し外で話そう」
家を出て指を差すと腰掛けられる大きさの岩が2つ出てきてシュバイツが座り、僕も座るように促してきた。
「魔法の基礎は魔素と属性元素の融合だ。属性元素は火土水風空と光闇がある、オーラは魔素と闘気の融合。それだけだ、何か質問は?」
まずい、何を言っているのかわからない、質問と言われても何を聞けばいいのだ……。
「魔素とは何ですか?」
「大気中に存在する魔力元素の事だ」
「融合させる方法はどうやるのですか?」
「体内に魔力を流して大気中の魔素と属性元素を合わせるのだ、元素は基本的にどこにでもあるから火の元素と合わせたいと思えば火魔法が水の元素と合わせたいと思えば水魔法が使える」
魔力を流す?魔素と属性元素?これが基礎なの?さらにシュバイツは続ける。
「オーラに関しては闘気と魔素を融合させる瞬間のみ魔力を使う、あとは闘気のコントロールでオーラを操り闘気を消せばオーラも消える」
こういう感じだな。とシュバイツはサラッとオーラを使用した。師匠のオーラより強く発光している。
「空の属性の魔法とは何ですか?あと氷とか雷はないんですか?それと魔法剣は?」
「空属性は天気や空間に干渉する、空間転移なども空属性になるな。氷は水と闇の、雷は風と光の複合属性魔法だ、2種の複合魔法は中級クラスの魔法になる」
「魔法剣は属性魔法を物質に付与するエンチャントと言う技術も必要になる、簡単そうだが奥が深いぞ」
あ、これ魔法や魔法剣は無理かも……シェスとアイゼンって普通に魔法剣使っていた。かなり天才肌なのか?
とりあえずオーラだけでも使えるようにならないとな。
このシュバイツって人、ウェイズが旧知の仲と言っていたけど何歳なんだ?