第4話 教室
4月も終盤になり、俺も高校生活に慣れ始めた。昼休み、俺はいつものように1人で昼食を取る。永井巧から一緒に食べようと誘われたが、恋人の福原里美も一緒なので、そんなところに入るつもりは無い。
食べ終わると俺はいつも寝る。今日も寝ようとしたときだった。
「圭、飲み物買ってきて」
少し離れたところから姫乃が声を掛けてきた。姫乃は取り巻きの女子たちといつも一緒に食べている。そこがクラスで一番騒がしいところだ。
「わかった」
俺は面倒だが買いに行く。ついでに自分の飲み物も買えばいい。おれはいつも姫乃が飲むミルクティーと自分の分のコーヒーを買い、教室に戻った。
「ほらよ」
「ありがとう」
俺が席に戻ろうとすると、姫乃の取り巻きの一人に声をかけられた。
「ねえ、佐原君。なんでそんなに姫乃の言うこと聞いてるの?」
「はぁ?」
俺はそいつを見る。こいつは確か、中川結衣だったかな。姫乃とは一番仲がいい感じのやつだ。
「そんなににらまないでよ」
中川が言う。
「にらんでないよ。別に幼馴染みだから普通だよ」
「でも、他にもいろいろ面倒見てるよね」
「まあな。でも――」
「だって、圭は私のこと好きだもん」
姫乃の爆弾発言に取り巻き達が驚いている。
こいつ、何言い出すんだ。
「え、ただの幼馴染みじゃなくて?」
「告白されたの?」
取り巻き達が騒ぎ出した。そこに姫乃がさらに爆弾を落とす。
「告白は何回もされてるよ。私は断ってるけど」
「「「えーーー!!」」」
はぁ。なんでばらすかな。
「やっぱりねえ、そうだと思ってたんだ」
「え、じゃあ、好きだから尽くしてるの?」
「うわあ、しつこくされてない? 姫乃、大丈夫?」
取り巻き達がうるさくなった。
姫乃が何か答えているようだが、俺はうんざりして教室を出た。
◇◇◇
放課後になると、姫乃がいつものように席にやってきた。
「じゃ、帰ろうか」
俺は無言で席を立つ。
「何よ。昼休みのこと怒ってるの?」
俺は黙ったまま、下駄箱まで歩き出した。
「別にいいでしょ。事実なんだから」
「事実だから言っていいとは限らないだろ」
「いいじゃん。減るもんじゃ無いし」
「ったく……」
結局、俺たちは一緒に帰っていく。俺がへそを曲げても姫乃は何も変わらない。
押しても引いてもいつものままだ。
「ちょっとは悪かったって思ってるから。お詫びにポテトおごる」
だが、最近の姫乃は悪かったと言ってくるようになった。昔の高飛車な態度と比べると各段の進歩だ。こんな風に姫乃に下手に出られると俺は弱い。
「……わかったよ。じゃあ、どこ行く?」
「うーん、バスセンターのテラス行こうか」
俺たちはバスセンターに向かった。