第33話 10月3日
翌日、俺が登校した後に姫乃もやってきた。早速、取り巻き達が聞いてくる。
「姫乃ちゃん、体育祭の日も告白されたの?」
「まあね」
「「「キャー!」」」
取り巻き達が騒いだ。
「それで、やっぱり断ったの?」
「そうよ」
「へー、佐原君もしつこいねえ」
「しつこいわけじゃないから。私が告白していいって言ってるだけ」
「えー、そうなんだ」
「うん、でも……」
「どうしたの?」
「ううん、なんでもない」
姫乃は取り巻き達に来月はもう告白が無いことは説明しなかった。
そこに内田さんが登校してきた。俺の前の席に座る。すると、姫乃が近づいてきた。
「内田さん」
姫乃が話しかける。
「今まで誤解してたみたい。彼氏が居るなんて知らなくて」
「え、ええ」
「にらんだりして、ごめんね」
「いえ、大丈夫だけど」
「これからも圭とお話ししてやってね」
「う、うん」
「じゃ!」
姫乃は去って行った。
内田さんが小声で俺に言う。
「はぁ。やっぱり罪悪感。別れたこと言っちゃいたい」
「だめだめ、トップシークレット」
「だよね。わかってる」
姫乃の方を見ると、笑顔で手を振ってきた。俺が、振り返すとまた取り巻き達が騒ぎ出していた。
◇◇◇◇
放課後、姫乃が俺の席にやってくる。
「圭、帰ろ」
「ごめん、今月はバイトが入ってるんだ」
「バイト?」
「うん。だから今月は一緒に帰れない」
「そっか。……もしかして私と距離取りたいとか思ってる?」
「違うよ。そういうのじゃない。誤解させたらごめん。俺も一緒に帰りたいんだ。でも……」
「わかった。じゃあ、夜に必ず連絡ちょうだい」
「うん。必ず。ごめん。今月だけだから」
「今月だけね。来月は必ず一緒に帰ってよ」
「うん。不安にさせてごめん」
「大丈夫! じゃあ頑張って!」
姫乃は帰って行った。
「よし、行くか」
俺はバイトに向かった。
 




