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第30話 記憶

 家に戻り、考える。だが、姫乃とどういう約束をしたのか、結婚以外は思い出せなかった。


「圭、ごはんできたわよ」


「今行く」


 あっという間に夕方になり、俺はリビングに降りた。すると、そこに父親と母親、それに姉がいた。また、姉の香織は家に帰ってきていたのか。


「今日は体育祭行けずにごめんね」


 母親が言う。


「いいよ、こなくて」


「姫乃ちゃん見たかったのに」


「俺じゃ無いのかよ」


「小学校の頃は姫乃ちゃんも一緒にお昼ご飯も食べて楽しかったわよね」


「そうだなあ。あの頃は俺たちもまだ若かった」


 父が話に加わる。


「ですねえ。こんなに白髪も無かったし」


「それはお前もだろう」


「いやですわあ」


 父と母は今も仲がいい。いつもこんな感じで2人の世界に入っていく。小学校の時に2人で運動会を観に来たときもそうだった。ん?


 そこまで考えたとき、何かが記憶の底から浮かび上がってきた。運動会で仲がいい親を見て姫乃が何かを言った気がする。いや、姫乃が言ったのはその後、公園に行ったときだ。そのとき、香織も居たよな。


『わたし、大人になったら圭ちゃんと結婚する』


 姫乃が言った台詞が浮かんできた。もう少し、もう少しで思い出せそうだ。そのとき、香織が急に話しかけてきた。


「圭、どうしたの?」


「……うるさい、もう少しで思い出せそうだったのに」


「ああ、あれか」


「まったく」


「で、姫乃ちゃんと付き合えたの?」


「はあ? 付き合えるわけないだろ」


「やっぱりね」


「なに? あんた姫乃ちゃんと付き合いたいの?」


「うるさい」


 俺は親の言うことは無視して飯を食った。


 そして、すぐに自分の部屋に籠もり、思い出そうとする。あれは……なんだったんだろう。

 思い出そうとするが、なかなか思い出せない。そのうち、俺は眠りに落ちていた。


◇◇◇


 公園、俺と姫乃はブランコに乗っている。それを少し離れて香織が見ていた。


『わたし、大人になったら圭ちゃんと結婚する』


 姫乃が言う。


『結婚する前にまず付き合わないと』


 香織がそれに答えて言う。


『じゃあ、付き合う。大人になったら圭ちゃんと付き合う』


『大人になってからでいいの? 遅くない?』


『じゃあ大人になる前に付き合う。大人になる前ってなあに?』


 そこまで夢で見たとき、俺は目が覚めた。


 ……そうか。そういうことか。



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