第27話 計画
計画――姫乃が言った言葉がどうしても引っかかったまま、俺は帰宅した。
「ただいま」
「お帰り」
「ん? 姉貴か」
姉の佐原香織が珍しく家に帰っていた。
「あんた、今日も姫乃に告白したの?」
「うん」
「そう。結果は聞くまでもないね」
「うん……」
俺は自分の部屋に向かう。香織は俺がちゃんと告白したのかが気になって家に帰ってきていたのだろうか。
そういえば、この間、姫乃が泣いたとき、香織は「あんたがこじらせるから」とか姫乃に言っていたな。もしかして、姫乃が告白を断り続ける理由を知っているのか?
俺はリビングに引き返し香織の前に座った。
「何よ」
「姉貴、姫乃の『計画』を知っているのか?」
「『計画』?」
「うん。今日告白したとき、計画があるから受け入れられない、というようなことをぽろっと言ったんだ」
「あらら」
「なんだよ、今の反応。やっぱり知ってるんだろ」
「……知ってて私から言えると思う?」
これは確実に知っているな。
「そうだけど、弟の人生がかかっているんだ。頼むよ」
「姫乃の人生もかかっているからねえ」
姉貴は教える気が無さそうだ。
「じゃあ、ヒントだけでもくれないか。頼む」
俺は頭を下げた。
「あのね、そんなたいしたことじゃないのよ」
「じゃあ、教えてくれよ」
「私は教えてもいいんだけど、姫乃は絶対に教える気は無さそうだから無理」
「そこを何とか。ヒントだけでも」
「うーん」
「もう行き詰まってるんだ。この間のアレ、見ただろ。また泣かせるようなことはしたくない」
「……しょうがないか。ヒントだけあげる」
「頼む」
俺は固唾をのんでヒントを待った。
「圭、姫乃と約束したの覚えてる?」
「約束?」
「うん、子どもの頃」
子どもの頃の約束か。漠然とは覚えている。だが、あれは子どもの頃の話だ。今となっては冗談みたいなものに過ぎないはずだ。
「あれだろ? 大きくなったら結婚しよう的な」
「そうそう。覚えてたんだ」
「そりゃ覚えてるよ。でもあれは子どもの時の話だろ。それが告白を断ることにどう関係するんだ?」
むしろ、大きくなったら結婚しようというなら、告白は受け入れるはずなのではないか。
「それを圭が覚えてるって姫乃が知ったらきっと安心するだろうなあ」
「安心?」
「うん。あ、今のはこっちの話」
「なんだよ。だから、これが告白を断ることにどう関係するんだ?」
「うーん、直接は関係しない」
「はあ?」
「だからヒントだって言ったでしょ」
ヒントねえ。よくわからん。
「他には覚えてること無いわけ?」
香織が聞いてきた。
「他に?」
他の約束か。何かあっただろうか。確かあの約束は今日のあの公園でしたことは覚えている。だが、約束として覚えているのは、その将来結婚しよう的なやつだけだ。他に何かあっただろうか。
「思い出せないみたいね。ま、気にしないで。なるようになるよ」
「なんだよ、それ」
「じゃあ、私は帰るから」
姉貴は帰っていった。




