第15話 姫乃襲来
翌日、登校すると内田真理が話しかけてきた。
「はい、これ」
内田が『王者のサーガ』60巻を俺に差し出す。
「あ、もう読んだの?」
「うん、読み始めたらあっという間で。いつものことだけどね」
「そうだよね、俺もあっという間に読むよ」
「だから、コスパ悪いよね。面白いんだけど」
「うん。でも買っておかないと後で読み返せないし」
「そうそう」
そこに姫乃がやってきた。
「圭、何の話してるの?」
ニコニコ笑っているが瞳の奥が恐い。
「あー、小説の話」
「そうなんだ。内田さん、圭の話し相手になってくれてありがとうね」
「いえ、こちらこそ」
「私は小説はあまり読まないから圭とそういう話できないのよね」
「そうなんだ」
「でも圭に話があるから、ちょっと借りるね」
「あ、もちろん私はいいよ」
「じゃ」
そう言って姫乃は俺を廊下に引っ張っていった。
「何の話があるんだ?」
「別に……」
「なんだよ、それ」
「だって、圭がデレデレしてるの、みっともないから」
「はあ? デレデレなんてしてないだろ」
「してたわよ。それに圭は私が好きなんでしょ?」
「そうだけど……」
「それなのに他の女といちゃついてていいわけ?」
「いちゃついてなんていないから。ただ本の話をしていただけだ。それに、お前は俺を振ったよな」
「振ったって……まあそうだけど。でも、今の時点では恋人になれないってだけだから」
「いつもそれだな、まったく……。話が無いんならもう席に戻るぞ」
「待って!」
姫乃は俺の腕をつかんだ。
「なんだよ、まだ何かあるのか?」
「もうちょっと、ここで話そうよ」
「何をだよ」
「うーん、そうだ、デート。今度デートしよっ」
「は? お前から誘うなんて珍しいな」
「でしょ。で、どこ行きたい?」
そこからデートの話をしているとあっという間にHRの時間が迫る。俺たちは席に戻った。
すると、内田さんが声を掛けてくる。
「二宮さん、怒ってた? 私が説明しに行こうか?」
「いいよ、ほっといて。俺が説明してるから」
「そっか。わかった」
ふと、姫乃を見ると、やはり怒った顔でにらんでいた。
 




