第13話 6月2日
6月2日、放課後のファミレス。告白作戦会議のメンバーが集まっていた。
つまり、司令・永井巧と副司令・福原里美、二等兵の俺だ。
「では、告白作戦会議を開始する」
「……言われたようにやったけど、結局ダメだったぞ」
「一体なぜ告白したんだ?」
「姫乃が夜に家に来て、何か忘れ物は無いか? と言ってきたんだ」
「そっか。じゃあ、結構効果あったんじゃないかな」
福原が言う。
「どこが」
「だって、姫乃ちゃん、わざわざ来たんでしょ。それって、告白されたいって事じゃん」
「そう……なのかな」
「そうだよ。それって、つまり、姫乃ちゃんは佐原君と恋人になりたいって事だから」
「だったら、なんで告白を受け入れないんだよ」
「だから、乙女にはいろいろあるんだって」
「……いろいろねえ。それなら、告白しない方がいいのかな」
「そこだ」
永井が口を開く。
「今度は告白しない作戦で行こうと思う」
「それは今月もうしただろ」
「今回はおねだりされて結局告白しただろ。7月1日は絶対告白しない」
「な!…・・それじゃあ、恋人になれないだろ」
「1日にはしないってだけだ。タイミングを見てまたやればいい」
「……それは、そうだけど」
「でも、1日にしないことで、二宮は焦るはずだ」
「うんうん。姫乃ちゃんは佐原君に愛されてる証拠を求めてくるだろうねえ」
「そこで、告白だ。相手の気持ちが乗っている時じゃないと告白は成功しない」
「うーん……とりあえずそれで行くか。まだ日数はあるから他の案も考えよう」
会議は解散となった。
◇◇◇
帰り道、俺は用事を思い出す。それは、新刊の購入だ。今まで全巻買っているファンタジー小説「王者のサーガ」の60巻が今日発売なのをすっかり忘れていた。
俺は帰り道を引き返し、書店に立ち寄った。いつもの小説のコーナーに行こうとすると途中で見知った顔とすれ違った。あれは、俺の前の席に座っている内田真理だ。
黒髪ロングの眼鏡美人だが、俺は会話したことが無い。というより、クラスの誰とも会話しているのは見たことが無かった。俺は会釈をすると、内田も俺に気づき会釈を返してきた。だが、会話は無く、すれ違う。
そして、小説のコーナーに辿り着く。だが、「王者のサーガ」60巻のコーナーにはポップだけ置かれ本は無かった。売り切れか……遅かった。より遠くの書店に行くという手もあったが、さすがにもう疲れていた。
仕方なくその日は家路についた。




