第拾弐話 試験開始
「今、始めて」
「は? え、誰? 休憩したかったのに……」
「まぁまぁ、そういう人もいるに決まってるじゃないですか」
「そりゃそうか」
受験生達が始めるまでの時間を考えていたところを自分勝手に今と決めつけたやつがいた。副学園長はそれを承諾した。
「いいでしょう。今始めますよ。3、2、1…始め!」
その掛け声と同時に皆散らばった。
「さてと、俺も行くか。って言ってもなんもできないけど」
とりあえず俺は近くの廃ビルに逃げた。どうやらここはあの学園長の能力で異世界から持ってきているようだ。その廃ビルは特に背が高く、屋上からあたりを見渡せた。この場所は中心に廃棄された街、周りに森林が広がっている構造になっている。
「あの」
「ん? って、さっきの子じゃん。いつの間に?」
「私はここで見張り役です……」
「そうだったのか。悪い、すぐに出ていく」
「あの……待ってください」
「なんだ?」
「それは……あ、いえ、何でもありません。ただ、このままだとあなたは入学できないかもしれません」
「なんでだ?」
「この試験での合格条件は生き残ること、とだけ伝えておきます」
「生き残る? いや、それよりもこの板を守ってないと……じゃあ、またね」
「はい」
「って言ってもどこに行こうか……とりあえずは隣の廃ビルでいっか」
俺はこの廃ビルで迷惑になることを避けるために、隣のちょっと低い廃ビルに飛び移った。
「とりあえずここなら安全だろ」
「……おい」
「にしても意外と行けるもんだな、やっぱこの体が若いからかな」
「おい!」
「え? あぁ~……ちょっといまから逃げてもいいですかね」
「なんで逃げれると思った? ってか、飛んでくる時見えなかったのかよ」
「飛ぶことに集中しすぎて全く見えてなかった」
「大丈夫か? お前。まぁいいや、殺す」
「やべ、逃げな……」
「勝てるわけ無いだろお前が! さっさと死ね!」
何故かやつの様子が変わった。やつは目にも止まらぬ速さで魔法攻撃をしてきた。
(この攻撃、完全に俺を殺しに来てるよな。どういうことだ? 板を破壊するだけでいいんじゃないのか?)
「おい、板を破壊するだけでいいはずだろ?何故殺しにくる」
「この試験で受かるためには殺すのが一番手っ取り早いからな。それに、お前を殺したいってのもあるな」
「なんでだ?」
「それは言えないな」
(まずいな、このままだと殺される……そういやさっき石を拾っておいたんだよな。一か八か、隙ができた瞬間に投げるか)
そう思ってあらかじめポケットに入れておいた石を取り出そうとした。だが手に触れたのは石とは違う何か別のものだった。取り出してみると
(これは、ナイフ……? しかもご丁寧に鞘に収まってるし。石よりこっちの方がいいか? 考えてる暇はない、やつから逃げないと)
俺は鞘からナイフを抜いた。そのナイフはただならぬ雰囲気があった。それを見た瞬間に、俺の意識は途切れた。
お久しぶりです。急に進路変更したせいで物語が雑になってしまいましたがお許しください。