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この人生は君と   作者: 白老の庶民
1/1

①ハシナウウク共和国

 

 竜帝 4004年


 モシリ大陸にあるモ・ルラン地方に一人の男が誕生した。


 名はルナ・カラーキャット


 ハシナウウク共和国の中でも外れの地域

 いわゆる貧民街で生を受けた男。


 ここモ・ルラン地方はモシリ大陸内においても特に強力な魔物が多く。ここハシナウウク共和国は長い長い歴史の中でモシリ大陸最強クラスの軍事国家としてその名を轟かせていた。


「おーい。おめぇら今日も負けちまったぁ。報酬だ!この金で好きなだけ飯をかってこおおおおい!」


 そういった歴史は軍事国家としての文化を発展させ続けた。

 そして貧民街では敵なしだったこの男。

 名はジェイ・カラーキャット。様々な街へ行き闘剣大会で多くの剣士を打ち破る。

 それこそが彼の生き甲斐であり生き様だった。



「今日も勝ったんか!!お父さんすっげえ!おいお前ら飯買いに行くぞ!」

 ルナは3人の弟や妹を引き連れて今日も全力で隣町へ走っていった。


 後ろでは木箱に座ったジェイが頬杖をついて見守っていた。


「おい。今回も優勝逃しちまった。こんな大変な仕事任せっきりでもうしわけない。ありがとう。」


「好きな事でお金を稼ぐ。いいことじゃんか。子供達も喜んでるし。いいんだよそれで。」

 家の裏には畑や家畜の小屋が広がっている。貧民街のだいたい全ての世帯が協力して農業を行っていてその収入を貧民街で山分けしている。カラーキャット家の畑は妻と子供達が一生懸命に面倒を見ている。

(毎度毎度申し訳ない。父親として夫として不甲斐ない)

 ぎこちない笑顔でジェイは笑った。


「ありがとう。今度は絶対に優勝する!」

 身体の調子を整えて筋力を維持できるような食事もまともにできない環境でそろそろ実力も下降傾向がでてくる年頃。せめて食事ひとつしっかりとる事ができれば、と常々思うがそんな甘いことは言っていられない。


 かつてはその若気の至りで数多くの剣士を打ち負かし多くの大会で優勝してきた。三年に一度開される全国大会にも出場の権利を獲得し、上位20番に入るほどの実力者だった。今となっては町内大会で優勝することでさえも苦労してしまうほど衰えた。愛おしい子供が増えるほど衰えていった。


 ーーーーーーーーーーーーーー

 この物語の主人公はルナ・カラーキャット。


 今は父に若干の憧れを抱いているだけの小僧だ。

 そして協力な魔物が大量に住み着くこの環境下で育つ子供。


「おい!トッピー!いるかー」


 くーんとないて家の奥からでてきた巨体は犬だった。

 この犬との出会いは去年までさかのぼる。


「魔物がでたぞー!」


「いってくる!」


「コード3!今すぐ部隊は出動せよ!鉄砲隊!急げ!」


「みんな!地下に避難するぞ!コード3だ!」


 このハシナウウク共和国では全ての街に軍事国家相応の防衛機構が存在するが、魔物が強力なため王都が主体になって防衛作戦を敷く体制をとっている。そしてこのハシナウウク共和国は中央に王都がありその周囲に様々な街が存在する。国土も広い。これは中央になる王都から国周辺に出現した魔物の群れなどを魔学の結晶である武器でもってして撃滅するためだ。

 歴史の積み重ねが防衛力を進化させその需要に答えるようにして魔術が高度に発達してきた。魔術は魔学の一分野である。


 妖精魔術の発展は今や国全体への放送手段としても大きな存在価値がある。実戦的ではないが、様々ない方法で応用が効く妖精魔術はこの国では至るところで利用されている。


 今現在、国の東と南側で響き渡るこの警報も妖精魔術によるものだ。


 ルナは3人の弟や妹を引き連れて地下へ誘導した。

 全世帯には必ず避難設備が完備されている。

 魔物に家を吹き飛ばされては助かる命も助からない。せめての抗い。

 ーーーーーーーーー

王都中心に立つ巨大な建物を覆う壁には数百人もの人が銃を持ち階段を駆け上がった。

「鉄砲隊用意!」

魔学をふんだんに応用して建てた数百メートルほどの壁からおびただしい数の銃口が森側を向いた。


そしてこの軍事大国最強の男は制服を身にまとい腕を組んで南門の上に座っていた。

「今日の魔物はいつもより手ごわそうだね。空と地上同時に相手しなきゃいえないからね」

門の下に制服を着た男が一人やってきた。

「総大将。我々の小隊は東門を中心に作戦を展開しますわ。いつもどおりちゃっちゃといきましょーや」


「任せましたよ中将。わたしは空中の魔物を相手してあげようかね。わたしの小隊は地上で正面からいってもらいますよ。あとは魔術師達にまかせておこーかね」

耳の傍を飛ぶ妖精は他の部隊と通話する役割を担っている。

「魔壊部隊!準備が整いましたっす!」

「君たち、絶対に発射したらだめだからね。54年前の事件忘れたらだめだからね。」


「準備完了しましたっす!総大将!」

「こちらの中将も準備できましたねぇ。じゃあそろそろいいかねぇ」

「うーん少佐とか軍曹はどうですけね」

「ねぇ無視はいやですよぉ」

「まぁいいでしょう。あとで懲罰をあたえましょうか。では作戦を始めましょうか。」


 ーーーーーーーーーーー


 総大将は魔力を使って空高く舞い上がった。


「おおお!君たちはわたし一人で相手するよーん。」

 すると腰から双剣を出して空を飛んだ。目の前には小型のドラゴンの群れがおぞましい鳴き声をあげながら総大将に向かって全力で襲い掛かった。


 空中を足でけると軍用機のような音をたてながら空を舞う魔物を切り裂いた。常人には見えない速度で腰から刀を引き抜き抜き魔物を一刀両断し続ける。ドラゴンを足場にして宙返りしながら通りすぎたものでさえも流れるようにして切り裂きつづけた。


 双剣と刀を同時に使いこなす。

 そう彼こそ扱える者が全世界で少数である最強の流派"剣帝流"を使いこなす人間だった。

「双剣だけじゃあわたしの力を引き出しきれないんだよねー。」

 空を舞う魔物の大群はあっという間に全てが落ちていった。常人では見えないその速度で双剣と剣を振り回した。


「総大将すごいっす。あれでも全力の半分もでてないっす。」



 足元では剣士達が醜悪な見た目の怪物たちと戦いを繰り広げている。

 総大将が指揮するこの剣士達はこのモシリ大陸において極めて優秀な人材が集められている。

 全員が幼いころより才能をみせ、その才能に甘んじることなく誰よりも遊びを我慢し努力をしぬいた人達だ。


「俺が幼い頃から愛してきたこの剣と一緒に死ねるなら一切の後悔はなし!いくぞ!愛剣!」

 しかしモ・ルラン地方の魔物は極めて強力なので死にゆく剣士達はもちろん少なくはない。


「鉄砲隊打ち方構え!」


「鉄砲隊がくるぞー撤退だー!!!!」

 剣士達は全速力で後退した。

 たくさんある抜け穴から兵隊が顔を出すとその穴の中へ剣士達は一斉に降下した。

 城壁や空、地面に作られた抜け穴からものすごい数の鉄砲隊が銃を撃った。

 長年の軍事研究の末に百年前に発明した銃の威力はもはや無敵だった。


 赤色の光線が土砂降りの雨粒のようにして一直線に怪物たちへ集中砲火された。

 ーーーーーーーーーーー

「魔物は完全に駆除されました。外は安全なので地下から出てきても大丈夫です。」

 その女性のアナウンスと共に子供達は一斉に外へでてきた。

「おいみんな!コード3は解除されたぞ!外へでるぞ!」

「おとーちゃん!おかえり!」

一番末っ子の女の子がボロボロの身体で帰ってくるジェイの元へ走っていった。



汗臭いし、土臭いし、血生臭いし。

剣ばっかでろくにはたらかないし。

数日食べれるだけのお金を剣術大会で持ってくる無能だし。


でもみんなお父さんが大好き。

常に剣と向き合って努力ばっかだけど

ちゃんと家族を愛しているし

街や国を魔物から守ってくれる。


その野生くさい生き様が好きだった。



「お父さん後ろ!」

ルナは何か魔物のような生き物が突進していることに気が付いた。


「えっ・・・。」

ジェイはその魔物にはねられてしまった。

末っ子の女の子はそのペタぺタ歩きをとめ、そのばに食べかけのキャンディーを落とした。

女の子は大泣きすると振り返ってルナの元へ拙い走りかたで帰っていった。






しかし、運よく大事にはいたらなかった。

道端にはうつ伏せでジェイは倒れていたが、そのまま何事もなかったかのように立ち上がった。

ジェイはその場で高らかに笑った。


ジェイをひいた謎の生物はその場で引き返して再びジェイの方に突撃を始めた。

「よーし!おいで!」

ジェイはその生物を大きく広げた両手でしっかり抑え込んだ。

「ふっかふかだなぁおまえ!とまれとまれ。」


ワン!と鳴いたその生き物はジェイの腕の中で動きをとめた。











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