私はモブです。彼らは攻略対象と〇〇です
「おめでとう、クリスティーナ」
私の10歳の誕生日には、お母様の従姉妹である隣国の王妃様と2人の王子様がやって来た。
隣国フォルトゥーナはマラカイトより大国で、様々な種族が暮らす、国土は勿論人口・経済・軍事力・魔法力にも大きく差が出来ている周辺国で絶対的勢力を持つ国。
私のお母様とフォルトゥーナ国の王妃様は従姉妹、しかもおばあさまが双子であったせいか姉妹のように見た目もそっくり仲良しで、王妃様は私のことを娘のように思っていたという・・・今日、初めて会いましたけどね・・・。
「まぁ、クリスはなんてかわいいの!
リリーの子供の頃にそっくりだわ」
家族、屋敷中の使用人も総出で出迎える中、豪華な馬車が停車したかと思えばナイスミドルな紳士が扉を開いたと同時に飛び出て一目散に私に抱きつかれたときは驚いた・・・。
執事かな?侍従なのかな、ナイスミドルなおじ様が、エスコートに手を差しだして固まった後姿が哀愁漂っていました。
長旅をしてきたであろうおじ様、凹むなファイト!
因みにリリーはお母様の愛称。お母様の名前はリリアーナです。フォルトゥーナ国の伯爵家の出身です。私と同じく影が薄い楚々としたお母様。
普段は体が弱くて優しい笑顔のお母様なのですが、そのお母様が怖~い笑顔でひっぺがしてくれました。助かりました、抱きしめられた王妃様の豊満なお胸に窒息するところでしたよ。ふわふわでマシュマロな柔らかさは、心地よかったけど衆目の中変態令嬢と思われるのは避けたいので離されてよかったです。
第一印象は、大切です。
とても大国の王妃様とは思えない行動に、続いてやってきた王子様たちも顔を引き攣らせながら、挨拶も漫ろにお家の中に入ってもらった。
その後、王妃様と王子様たちを交えての私のささやかなお誕生日パーティーがおこなわれた。
「はじめましてクリスティーナ嬢。僕は、レオナルド。
あなたの誕生日を一緒に祝えることを喜ばしくおもいます」
そう言って、かわいいピンクの薔薇の花束を手渡してくれたレオナルド王子は、私より1歳年上だ。少し癖毛の明るいキラキラした金髪をにエメラルドグリーンの瞳が特徴の綺麗な兄王子様。
「会うのを楽しみにしていたよ、僕はルーカス。10歳の誕生日おめでとう。僕も3ヵ月後には10歳になるんだよ」
ルーカス王子は、こちらも癖毛だが色味が柔らかい栗色の髪にレオナルド様と同じエメラルドグリーンの瞳のちょっと子供っぽい雰囲気の弟王子様。かわいくラッピングされた本をプレゼントしてくれた。
「この本は、僕の国の魔道士の入門書なんだ。僕も読んだけどおもしろかったよ。おすすめはね・・・」
本を手渡してそのまま話し込むものだから、ちょっと距離が近い。
ルーカス王子は、魔法が好きなのだろうぐいぐいくるな。
「ルーカス、クリスティーナ嬢が驚いてるよ」
「ウフフ、ありがとうございます。レオナルド殿下、ルーカス殿下。わたくしもお会いできましてうれしいです」
レオナルド殿下か窘めてくれてやっと一歩さがってくれたけど、一歩下がっただけだからやっぱり距離が近い。
その上、いまだに本の説明を朗々と続けている。
この人は、夢中になると周りが見えなくなるタイプかな?王子様といえ、まだ子供。夢中で話す姿は、かわいらしいものです。
そのルーカス殿下に、やれやれと困った顔をして眉を寄せるレオナルド殿下。困った顔をしながらも、何時もの事なのかその瞳は優しい。たぶん、何時もの事なのかな?こんな優しいお兄様って、いいなぁ。
私のお兄様は意地悪ではないけど、5歳も年が離れた幼い妹の扱いが分からないのかあまり構ってくれない。此方から付きまとえば相手をしてくれるが、お人形さん遊びやままごとのときは、いつの間にか家令の誰かと入れ替わりフェイドアウトしている。
ああ、レオナルド王子は、そんなことしない優しいお兄様なんだろうなぁ。
そんな二人を見て、胸がほっこりする。
羨ましいと思うが、微笑ましい兄弟の仲に思わず笑みが零れる。
レオナルド王子にかまいませんよと笑って答え、もらった花束が嬉しく花びらを触りながらさっきとは別の感情から微笑みを浮かべた。
ああ、この花束から始まるのね。
レオナルド様は、私の仕草に何故か驚いたように瞳を一瞬見開き、ふわりと花が咲いたように微笑み、優しいねと甘やかな声が帰ってきた。
あまりにも蜂蜜かかったような甘やかな声に思わず見上げたとき、その美しいキラキラとした宝石のような瞳がキラリと優しく煌いた。
ふぁわわわわぁ~
その微笑に、心打たれました。
矢が射ぬいたかのような衝撃。
前世で見ていたドラマのように、恋する分岐点に流れる音楽が私の中で鳴り響いた。
ええ、恋が始まるあの!恋愛ドラマにつきものの盛り上がる音楽ですよ。
時間が止まったように見詰め合う二人。その時間は、一瞬なのに永遠に感じる現象。おそらくそう感じたのは私だけでしょう。美少年な王子様がモブ顔の母親の親戚令嬢に特別な感情を抱くなど、拾った石ころが宝石だった確率よりも低いに決まっています。
だから、これは私だけの現象。
正しくこれは、ヒトメボレ!!!
主食の銘柄じゃないですよ
恋に落ちた瞬間ですよ!
リンゴンリンゴーンっていう鐘が鳴ったという人も、ビビビッってしたというかたもいますが(古いなぁ)私は、ポップな某アイドルの曲が鳴り響きましたよ。
やばい!レオナルド殿下ってば、よく見れば前世で好きだったアイドルのようにキラッキラの王子様じゃないの!
私のドストライクついてるじゃない!!
あぁ、なのになんでこの人があんな結末のキャラなのよ!!!
もう!このままいけば私たちは、どちらにしてもつらい目にしか遭わないのなら―――――
この王子様を、私が守り切ってみせます!!!!!
読んでくださりありがとうございます。