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1-5.小さなお願い

白銀色に キラキラと輝く馬車が、美容院に 近づく。


美容院の前に 立つ 1人の男性。


馬車が 見えてから、飛び出してきたのか。

あるいは、ずっと、外で 待っていたのだろうか?


馬車の窓から見えた イアンの顔に、私は、安心した。

はぁ、と思わず 吐き出した 息に、

自分が、どれだけ 緊張していたかを 気付かされた。


馬車から 降り、イアンに 抱きつく。

うん。 知っている。

私の 居場所は ここっ。



 [ウエンディの独白]  【 1-5. 金のプレート 】



免罪符(めんざいふ)と いうものの 存在については、

イアンは、何の 知識も 持っていなかった。


子供を 働かせた 疑惑、この罪を 赦すのが免罪符(めんざいふ)

署名し、押印した 免罪符(めんざいふ)を 実際に 取り出す。


「プレートに、似ているな。」


プレート?


「ああ。金銀銅のプレートを 持つ者は、教会への 罪を赦される。

 高位の司祭は、全て 銅のプレートを 持っている らしい。」


金銀銅って?


「銅は、軽微な罪、銀は、重罪も。

 金を 与えられた者は、全ての 教会への 罪を赦される。

 もっとも、金の プレートを 与えることが出来るのは、

 教祖だけだと 言うけどね。」


免罪符(めんざいふ)は、1つの 特定の罪だけ。

書面に 記載が されている。

プレートは、ある程度の範囲を カバーするものなのね。


今日の出来事を 1つ1つイアンと 話しあっていく。


そして、1週間に1度の 教会への 出頭。

これは、西への旅行 が事実上 不可能に なったことを 意味した。


「なるほど。

 仕方ない。 私一人で 伯爵領に 向かおう。

 アリーを 頼むよ。」


免罪符(めんざいふ)を、大切に 片づける。


ふと、思う。

アリーが、12歳になるまで、これが 必要なの?


私は、このまま 美容院を 閉めて、イアンと 西に向かい、

ヘドファン伯爵家で、暮らすことを 考えた。


ううん。 首を 振る。

この 小さな 美容院は、私の 夢。

アリーも 大人になったら 美容師に なりたいと、言っていた。


私は、この美容院を アリーに 継いでほしい。

親子で、この美容院を したい。


そのためにも、数年。

数年の 我慢が 大切。


私は、ソファーに 座り、イアンの 肩の上に、頭を 傾けた。



次の 教会への 出頭の 前日。


イアンが、西へと 向かって 出発した。

馬車ではなく、馬に またがる。


「出来るだけ、早く 戻ってくる。」


イアンが、ハッという 掛け声とともに 馬を 走らせる。

カネッセという老人が、後に 続く。


すごいスピード。


あのような 騎乗は、近衛兵でも 無理だろう。

さすがは、西のヘドファン伯爵家と いうべき なのだろうか。


少し 寂しい思いを しながら、私は、彼を 見送った。



*** **** *** *** **** ***



馬車での 送迎は、お断りした。

白銀色で (ぜい)を尽くした あの馬車は、あまりにも 目立つ。


私は、革袋に金貨を詰め、教会へ向かった。


1枚でよい。

あのように 言われた金貨も、袋いっぱいに 詰めた。


免罪符(めんざいふ)とは、高位の貴族が、多額の寄付を 行って 初めて

与えられるもの で あるらしい。

そもそも、平民である 私に、縁が あるもの では ないのだ。


そのようなものを 金貨1枚で 済ませるわけには いかない。

これ以上の 負い目を 持つわけには いかない。


受付を 済ませる。


2個の 受付。

どちらも、平民用だ。

ただし、私の使う受付は、大商人や 教会縁者の 使う 特別なもの。


それでも、受付をせずに、馬車で 裏から 抜けるような、

前回の 訪問より、気が 楽だ。


こちらで、革袋を 渡す。

何か 控えを 渡されることもなく、奥へ 通される。


「あなたに、神の加護が ありますように」


受付の 司祭服の男性に 声を かけられた。


奥へと進む。 案内は、ない。

しかし、かつて、何度も 通ったことのある 通路だ。

迷うこともなく、奥へと 進む。


さすがに、最奥への 侵入は、1人では、許されない。

免罪符(めんざいふ)の時の、司祭服の 男性。


彼の案内で、ピーターの部屋に 向かう。

大司教ピーター・フォン・アナリゼラの 居室は、教会の 最も奥。


進む 通路に、もう人は いない。

ドアが ノックされ、開かれる。


「ウェンディ。 よく 来たね。」


椅子にかけ、出された 紅茶を 口にする。


「まずは、免罪符(めんざいふ)に 署名を してもらおう。」


前回 同様、隣室で 署名を 済まし、押印する。


ピーターの部屋に 戻ると、優しく 声をかけられた。


「1枚で よかったんだよ。金貨は。」


「いえ、たいへんな ものを ご用意して いただいて おります。

 教会の方々への 感謝の気持ちを 伝えるためにも、

 わたしの 出来得る限りを 致したいと 思います。」


ピーターの 意図が、分からない以上、相手の 言う通りの 行動を

うっかり、取るわけには いかない。


「そうか。

 私に、何か 頼みたいこと などは、無いかな?

 困っていること などが あれば、助けに なりたい。」


「今は、特には・・・。」


何か、頼んだ方が 良いのだろうか?

判断が 難しい。

全てを 拒絶するのは、逆効果?


ピーターに、ニコリと 笑いかけながら、考える。


何か、簡単なこと。

大きな 手助けを 必要とせず、ピーターにしか できない事。


お願いすることで、大きな 借りを 作らずに すみ、

ピーターには、彼を 拒絶しているように 思われない 内容。


そんな 願いごとは、ない だろうか?


紅茶を 口にして、間を取る。


「そういえば、ここまで、ご案内を 頂きました。

 私が 1週間に1度、こちらに お伺いするために、司祭の方に

 毎回、ご案内をいただくのは、とても 心苦しいことです。

 私1人で、参れるように していただけない でしょうか。」


我ながら、良い アイデアだと 思う。


ピーターにしか、この決裁を する判断は、できないだろう。

しかし、彼が、一言(ひとこと)、命令すれば 可能になる。


「うーん。

 なるほど。 なかなか 難しい。

 普段は、いらっしゃられないが、教祖様も 滞在される 場合が

 あるからね。」


あぁ。そうだ。

大司教の上位には、教祖が 居るはず。

平民が、奥まで 1人でというのは、無茶だった かもしれない。


どのようにして、この お願いを 撤回(てっかい)するか、

頭を フル回転して 考える。


「いや。良い考えがある。

 これを見てほしい。」


ピーターは、小さな 宝石箱のようなものを 取り出した。

その手に、指先に、魔力が こもる。


カチャリ。


小さな音がして、自動的に 宝石箱が 開いた。


「入口で、こちらを 渡そう。

 この プレートを持つ者を、だれも 邪魔することは できない。

 この部屋まで、止められることなく 来ることが できる。」


彼が 取り出した、プレート。

それは、イアンの 言っていた あのプレート。


金の 教会プレートが、私の前に 置かれていた。

メンテナンスに気づいておらず投稿予約ができないところでした。びっくりした。

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