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1-2.ハピバスディ アリー ex

デターネ=イアン=ヘドファン。


これが、彼の名前。

西のヘドファン伯爵家の 次男と 聞いて ビックリした。


私たちは、正式に 結婚することに なった。

でも、教会は、もうイヤ。

あの場所には、近寄りたくも ない。



    [ウエンディの独白]  【 1-2.素敵な 家庭 】



イアン (あの人)は、けっして、不器用 と いうわけでは ない。


強く魔力を 放出し、コントロールは、王国に 並ぶものがない

という評判は、真実だと 思う。


問題は、小さな 魔力のコントロールが、苦手な こと。


接客が、苦手なこと。


美容院で、お客様の お相手をする には、致命的ね。


私は、美容院を しばらく 臨時休業することに した。


美容院の 名前は ボエロ。


小さいけれども、かわいい 私のお店だ。


私の 名前が、アシェンプテル=ウェンディ=ヘドファンになって、

いくつかの 季節が 過ぎた。



臨月に 入った 私は、助産師ワモルさんに、来て いただくことに した。


ワモルさんは、裏表のない 優しい人で、


しばらく 住み込んで いただくことも 快く 承知して くださった。


アリーが、産まれた時の、


「目元が、お父様 そっくりね」


という ワモルさんの 言葉は、


ただ、フルーク王国の 慣習(かんしゅう)から 発した言葉 と いうだけでなく、


気持ちの こもった、

心からの 言葉であることが 伝わってくるもの だった。


イアンは、少しさみしそうな 顔をしたが、

赤ん坊を しっかり 抱きしめてくれた。



*** **** *** *** **** ***



出産後、1年。


美容院ボエロでは、細々と イアンの 美容ケアを 行っていた。


娘のアリーは、全く 手の かからない子供。


さすがに もう、私が 復帰しなきゃ ダメね。


少し、お客様の数が 減っていたから、新しい美容ケアを始めた。


私の養母、トレセイヌおばさんに アザができやすかったのは、

体の中の 細い 髪の毛みたいな血管 が 破れているから ってことだった。


頭にも、細い血管は、ある。

チョットした思い付き。

じゃぁ、ここにも いいんじゃ ないかな?


教会にある 薬草園から 薬草を、貰って 来る。

シイクワサと 言う果実の 皮を 乾かしたものは、さわやかな 匂い。


そして、タマーネギと 言われる

皮を 乾かしたものは、ざらざらとして 味気ない感じ。


この二つを 丁寧に すり潰し、粉に したものが、細い血管を 強くする。


これを お客様に 飲んでいただいて、水魔法を 頭皮に使う。

イオンミスト(極小の泡)が、髪と 頭皮を 包み 潤い(うるおい)を 与える。


このケアが、好評で、少しずつ お客様は、戻ってきた。


髪の ボリュームが 増え、

いろいろな 髪型が 楽しめるって、みんな 喜んでくれている。



*** **** *** *** **** ***



娘のアリーが、1歳になった日、不思議なことが 起こった。


片付けをしていると、本棚の上から、神書が 転がり 落ちてきた。


王国神書と 呼ばれる 教会の本。

教会の司祭 ピーターから 貰った 本だ。


あぁ、アリーが、両手を 体の下に ついて、ハイハイを している。


パスッン。

良かった。 アリーには、当たらなかった。


床に 落ちた その本は、きれいに アリーの 目の前に 開いた。

アリーが、手を 伸ばす。


その 小さな手が、本に 触れた瞬間、神書から 白い光が ()した。

光は、すぅぅっと、アリーの体に 吸い込まれ、本は、輝きを 失った。


急いで、アリーを 抱きかかえる。


ケラケラと、笑うアリー。

何かしら? 今のは?


冒険者を していたイアンなら、不思議な現象を 知っているかも しれない。


急いで イアンを呼ぶ。


「ハハハ。ウエンディは、心配性だね。」


イアンは、本の間に 挟まっていた、小さな鏡を 取り出した。


反射?

でも、そんな光では、なかった気が する。


高く持ち上げられ、けらけら笑う アリー。

抱きかかえる イアン。



二人を 見ながら、私は、一抹の 不安を 覚えた。



*** **** *** *** **** ***



庭に、野ばらが 3個並ぶ。


サンショウバラの ピンクの かかった 白い花。


これが、私の 花らしい。


野いばら は、アリー。


シロモッコウバラ が、イアン。


2人が 山から、野ばらを 持って帰ってきたのは、

昨日の 22時を 過ぎたころ だった。


あたりは、真っ暗。

何か 起こったのかと 思って 心配していたら、

いつの前にか 帰ってきてた、泥だらけの 2人。


笑いながら、無邪気に 庭で 野ばらを 植えていた。


正座させて、きーっちり、お説教 しました。

ほんと、小さな子供が 2人 いるみたい。


これだから、冒険者は・・・。


うん。でも いい香り。


美容院にも、飾って みよう かしら?



*** **** *** *** **** ***



アリーが、野ばらを 使って 遊び始めた。


この子は、目を 離すと 何をするか 分からない。


今朝なんて、美容院の 石鹸が、ほとんど 全部 無くなっていた。


アリーが、使って しまっていたのだ。


いったい 誰に 似たんだろう?


と、思ったけれど、イアンよね。


血の 繋がりがなくても、2人は、本当に よく似ている。


イアンも、それが 嬉しいみたい。


良いのやら、悪いのやら。


でも、お説教の 時間です。


部屋を 泡だらけにして 遊んでいた アリーは、正座。


監督不行き届き の 罪で、イアンは、お掃除。


ほーんと、私が ずっと見ていないと、この 2人は 心配だわ。



*** **** *** *** **** ***



え? 香りの 液体石鹸?


初めて 聞く名前。 初めて 見る ソレ。


4歳の 子供が作った、見たことも 聞いたこともない 液体。


そして、繊細な 魔法。


この子、天才だ。


遊んでいた とばかり 思っていた アリー。


どうやら、コレが 作りたかった みたい。


さっそく、お客様に 使って いただく。


明るい しゃぼん玉が 舞い、虹色(にじいろ)の バラが ふわりと 香る。


あぁ、これ、スゴい。

言葉が 出ない。


常連の マダムも、うっとり とした 顔を している。


いままでになかった、香りの液体石鹸(せっけん)


美容ケアを してくれる 小さな子供。


少しだけ、口コミを 期待した。


いままでに なかった、美容院ボエロの 美容ケア。

そんな 噂が 広がってくれないかな? って。




それは、期待 以上の 広がりを みせた。


美容師ウェンディの 美容院ボエロ という 名前は、

王都中に 知られることになった。


私は、すこし天狗に なっていたのかもしれない。


有頂天 だったのかもしれない。


でも、幸せ だった。


イアンが居て、アリーが居て、素敵な 家庭が あって。

かわいい 小さな美容院が あって、美容師 としても 成功して。


本当に 幸せ だった。


その 評判が、あの人の 耳に 入る までは・・・。

イアンの冒険より、こちらのほうが難しいです。

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