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五本足のジュリアンナ  作者: Roman
6/7

6話


「ママ……こんなに、みんなに愛される人だったんだね」

たくさんの拍手、周りの人はみんな笑顔。ジュリアンナは、喜びを感じました。しかし、また、寂しさも感じていました。


パーティーの後の帰り道。ジュリアンナと母は、手をつないで歩いていました。

「ねえ、ママ」

「なあに?ジュリアンナ」

「どうして、わたしの体は、みんなと違うの?ママは、どうして、わたしを産んだの?」

ジュリアンナは、今まで10年間、ずっと聞かなかったことを聞きました。

「誰かがそんなことを言ってきたの?」

「ううん。誰にも言われていないけど」

「あなたが幸せに、元気でいてくれることが、生きてくれていることが、そしてピアノで笑顔になってくれる事が、わたしの生きがいよ。今日のスピーチでもあなたの事を話したわ。……聞いていてくれてたかな?」

「……」

「悲劇のヒロインになど憧れない。栄光を手にしたい。そう、最後に言ったんだよ」

「……」

ジュリアンナは言いました。

「違うよ、ピアノを思うように弾けない私が、みんなが輝いていたのが……くやしくなっただけだよ」

「ジュリアンナ」

「ママごめんなさい。わたし、それでもピアノが弾きたいの。ママみたいなピアノの音を。五本足でもいいから、指が途中までしかなくても、いいから……」

ジュリアンナの、未熟な成長で止まった両手を、母の手が包みました。

「綺麗な手があったって、愛がなければ、ピアノは弾けないわ。

ジュリアンナ。あなたは絶対にピアノを弾けるようになるわ。綺麗事なんかじゃないよ。あなたはピアノを、心から愛しているから」

「ありがとう、ママ」

母は、いつもの優しい笑顔で、ジュリアンナに微笑みます。

「わたしだって、人より大変な事が多くても、悲劇のヒロインになんか、ならないよ。ママがいて、ピアノがあって……とても、幸せだもの!」

ジュリアンナも、母に微笑み返しました。

「来週ある、ダニエルくんのリサイタルに、招待されたよ。もちろん、ジュリアンナ。あなたも。一緒に行きましょう」

母は、リサイタルの招待チケットを、2枚、取り出しました。

「本当!?ママ」

「ええ、本当よ」

ジュリアンナの気持ちは、とても高まりました。夜空には、月が、星が、とても輝いていました。




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