2話
それから数日経ったある日。ジュリアンナが、家の近くの公園に、花摘みに行った時のことでした。
「ジュリアンナじゃないか。なにしてるんだよ」
家の隣の男の子、そして、その友達の同じくらいの年頃の男の子や女の子と、会ってしまいました。
「……部屋にかざる花を摘みに来たのよ」
「最近お前の家から、下手っぴなピアノの音が聞こえるってうわさになってるんだぜ」
隣の家の少年も、その周りの子たちも、決してジュリアンナの友達ではありませんでした。
「あなたのお母さんも、ずいぶんピアノが下手になったもんだね」
「……ちがう」
少年たちは、次々と、胸に突き刺さる言葉を投げてきます。
「まさか、ジュリアンナ、君がピアノ弾いてるんじゃないだろうな」
「……」
ジュリアンナは、言葉が出なくなりました。
「何言ってるのよ、指のないジュリアンナが、弾けるわけないじゃない」
「おまけに五本足なんだぜ」
「五本足のジュリアンナが、ピアノなんて弾けるわけないもんな」
「……」
「ジュリアンナのピアノの音を聞いたら、足が呪われて五本になっちゃうんだって」
「やめてよ、わたし五本足になっちゃう」
「指もなくなっちゃうよ」
「いやだ、こわいよー」
「……」
「お前が近所で、みんなが気味悪がってんだよ!早く消えろ!気持ち悪いんだよ!」
「ピアノへったくそー!の、五本足のジュリアンナ!」
ジュリアンナの心は、一気に傷つきました。たくさんの涙を流しながら、逃げました。持っていた小さな花も、捨てました。後ろからは、笑い声が、ずっと、ずっと、聞こえてきました。