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五本足のジュリアンナ  作者: Roman
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1話

「ジュリ、アンナ。わたしの元へ、産まれて来てくれて、ありがとう。」


とある国の、小さな病院で、母の、愛に包まれて、その少女は産まれました。

少女に名づけられた名前は、ふたりの名前を合わせた、ジュリアンナ。

双子として授かったはずいのちは、形が見えてくるにつれ【ひとつ】である事がわかりました。それでも"お腹の中で、二人は溶け、そしてひとつの愛の形になったのだろう"と信じていた母親は、周りの反対を押し切り、夫に捨てられ、独りになってまで、そして、全力を注いでいた、ピアニストとしての人生を捨ててまで、お腹の中の子供を【ひとつになった双子】として、ジュリアンナを産む決意をしたのです。


ジュリアンナの足は、五本ありました。手は、左右形が違いますが、両方とも、未熟な成長のまま止まっていました。それでも、母にとっては、ジュリアンナは、とても愛おしい、可愛い娘です。学校にすら、通えませんでしたが、ジュリアンナは、子供を誰よりも何よりも大切にする、優しい母親のもとで、母親の愛情を受け、素直で心優しい女の子に成長しました。


ジュリアンナが、10歳を迎える誕生日の事。母は、ジュリアンナに、彼女がずっと欲しがっていた、ピアノをプレゼントしました。

「ジュリアンナ、ごめんね。本当はもっと、大きなピアノをプレゼントしたかったのだけど……お母さんの給料では、これが精一杯だったわ。お母さん、もっと頑張るからね」

小さなピアノの前で、母は言いました。

「ううん、ママ。わたし、とっても嬉しい!ずっと欲しかった、ピアノを買ってもらえるなんて」

ジュリアンナは、大きな目を輝かせ、小さな椅子に座ると鍵盤をひとつ、ひとつ、押しては、母を見上げて、微笑むのでした。

「ねえママ」

ジュリアンナは言いました。

「……わたしも、ママみたいに……ピアノを弾けるようになれるかな?」

そして、ジュリアンナの、希望に満ちた言葉に、母親はただ、微笑みました。

「ええ、なれるわ」

「本当?」

「本当よ。ピアノを、心から愛していればね」

「昔のママみたいに、可愛いドレスを着て、たくさんの人の前で、ピアノを弾きたいの。とっても素敵な音なの!」

ジュリアンナの気持ちは、高まり、心からの、喜びであふれました。これが、ジュリアンナとピアノの、思い出の始まりでした。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 母親の尽きることのない愛を感じ、感動しました。 これからの展開が気になります。
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