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8.ナギサ君とシューマ様

 森林に煙が舞う。

 金の装飾をちりばめた、白い軍服のような高貴な衣装に身を包んだ銀髪の女性、シャルディが構えた銃……自らの魔力を弾丸に変えて撃ちだす武器、“魔銃”によって放った一撃が遠く離れたリザードマンを辺りに生えた木々ごと狙い撃ったのだ。


 断末魔を上げることすらなく、チリとなって消滅するリザードマン。

 それは経験値を表す光を放ちながら消滅していき、その光はシャルディへと吸い込まれていく。そして気高さを感じる綺麗な声でフフン、と笑い、その後。



「おーっほっほっほ!決まりましたわ!

ワンショットキルはクッソ気持ち良いですわねぇシューマ様!」



 品を感じさせない内容の台詞とともに高笑い。


 笑い声をあげる女性の背後からドット絵でデフォルメされた男性、志木宗馬……プレイヤー名:シューマの顔が現れ、女性に同調するかのように『フハハハハハ!』と笑い声をあげた。



『ああ!やはり"一角銃(ユニコーンブラスト)"は中々使えるな。射程の長さもさることながら威力も十分高いと来た。このスキルを初手で引けたのは運が良かった』



 談笑する二人の背後に、もう一匹のリザードマンが迫っていた。リザードマンは音を立てず忍び寄り、その手に持った刀剣で女性を切り裂こうと振りかぶり――。


 ズドン。


 その腕が振り下ろされることは無かった。

 リザードマンの腹に小さな穴が開いていた。シャルディが正面を向いたまま、右手だけを後ろに向けて魔弾を放っていた。

 続いて3,4発の銃声が鳴り響き、リザードマンは地に伏した。


 またフフンとシャルディが笑い、それと同時にフッとシューマも鼻で笑う。


「見えていましたわ。もっともワタシではなくシューマ様が、ですけど」







 そして2人とは少し離れた場所で、一人の剣士と一匹のリザードマンが戦いを繰り広げていた。

 そのリザードマンは先ほどシャルディが倒したものとは違い、青銅で出来た鎧と兜を身に纏っている。おそらく群れのボスといったところだろう。


 対する女性……ソウハは西洋の騎士の制服のような衣類に身を包んでいながらも、その手に握られた武器は日本刀のような形をしていた。

 短く切った青い髪を風に揺らしながらリザードマンと激しい斬り合いを行っている。



「初級といえど流石ボスモンスター。侮れませんね」



 短く息を切らしながらリザードマンの剣撃を刀で防ぐ。

 ソウハの脳内で若々しい男性、鳴海凪紗――プレイヤー名:ナギサの声が響いた。



『力比べでは分が悪いね……。ここはスピードで翻弄しよう』


「了解です」



 ソウハはリザードマンから一旦距離を取った。そして、ナギサが自身の相棒に力を与えるためのスキルカードに触れ、それを発動させる。



『"高速化"!』



 "高速化"はその名の通り、自身の素早さを一定時間向上させる能力を持つ。

 そしてソウハは盾や鎧といった重量のある装備を持たず、初期能力値もスピード寄りに設定されているために普段のスピードは高い方だ。それがスキルによって更に強化される。

 直後、ソウハの身体が消えた。リザードマンは目の前の獲物が一体どこへ消えたのかと周囲を見渡す。



「後ろです」



 リザードマンの背後から剣士の声が聞こえた。手に持っていた西洋剣を振りかぶるも、そこにも剣士の姿は無かった。

 少し狼狽えるリザードマン。その直後だった。



『“パワーエッジ”!』



 リザードマンは背中を、身に纏った鎧ごと切り裂かれていた。

 意識が消えゆく直前にゆっくりと頭を背後に向けると、そこには先ほど消えたと思われた剣士の姿が。



「だから言ったでしょう?()()だと」



 バタリ、とリザードマンは地に伏し、その身体が光と共に消滅する。そして剣士は銀髪の銃使い同様にその光を吸収する。

 ふぅ、と一息。



「まるで風になったような気分でした。あのスキル好きです」


『全力で走るもんだから僕は酔うかと思ったよ……。君たちドウルに合わせるのって中々しんどい時あるね』


「その内慣れますよ。ふぁいと、です」


『ははっ……。頑張ります』



 直後、ファンファーレのような音楽と共に“ミッションクリア!”というポップな文字が視界に表示された。「終わったー!」とナギサは宙にフワフワと浮いた状態で背伸び。


 もちろん実際に宙に浮いているわけではない。今のナギサは相棒であるソウハの中に存在している。

 人間とその相棒……ドウルが感覚を共有して戦う。

 それがこの世界での戦いのルールである。






  ◆






 私立桜川大学経済学部1回生、鳴海凪紗が相棒のソウハと共にANOの世界で戦うようになってから2日が経過。彼は段々とこの世界の仕組みやバトルシステムにも慣れてきた。


 ミッションをこなしてゲーム内通貨“アクロスコイン”や、アイテムを作る素材を集めたりして、ドウルや装備を強化。

 そして貯まったコインでガチャを引いて新たなスキルカードを手に入れ、戦略の幅を広げていく。

 必要のないカードはデバイスを介して売却、もしくは他のプレイヤーとトレードし、手に入れたコインでまたガチャを回してスキルカードを手に入れる……。


 VRMMOなのにどこかソシャゲらしい気もするが、自分の相棒と言葉を交わしてコミュニケーションを取りながら共に戦うというのはやはり楽しい物だった。



「初級ミッションクリアで一人50コインか。ということは2回クリアすればガチャが1回、売店でコーヒー1杯が飲めるわけだ」


「俺はミルクティーの方が好きだが」


「聞いてない。というか知ってる」


「ガムシロップは最低でも3つだな」


「知ってるっつーの」



 ナギサとシューマは巨大なスタジアムのような施設、“ターミナル”の中のロビーのベンチに座り、スマートフォンのような携帯端末”アクロスデバイス”の画面を眺めていた。画面にはAコイン+50という表示が。


 ここ、ターミナルでは主に”ミッション”と呼ばれる依頼を受けることが出来る。

 内容は様々であり、クリアすればゲーム内通貨であるAコインや、ドウルが放つ“スキル”を封じ込めたカードやそれを強化するためのアイテム等を手に入れることが出来る。


 今回2人が受けた“リザードマン討伐<初級>”は森林の中でリザードマンの群れと1体のボスクラスリザードマンを相手にするという内容であり、人間に近しい体格のリザードマンはドウル同士のバトルの練習にもうってつけの相手であった。



「それにしてもこの2日間で私の能力値もかなり上がった気がします。むんっ」



 戦いを終えたソウハは無表情のまま、ふんっと筋肉を見せつけるようなポーズをとる。それを見てナギサは「まあランクはまだFのままみたいだけどね」と言ってから短く笑う。

 それを聞いたソウハは表情を大きく変えることなく肩を落とし、わざとらしく「がっくし」と呟く。あまり表情筋を豊かに動かすタイプではないようで、彼女の表情は大きく変わることは無いが、言動や仕草で自分の感情を分かりやすく表現してくれているらしい。


 そんなソウハの衣服はバトルフィールドでの西洋風の衣装とは異なり、現在は着物になっている。

 ドウルには普段の衣装と戦闘用の衣装の2種類を設定することができ、ソウハは普段は和服で戦闘時は西洋の騎士風の衣装になる。


 ちなみにだが、先日ナギサが「ふぁいと」と言われた際に自分の脳裏に現れた謎の少女についてソウハに質問した際に返ってきた答えは



「分かりません。ナギサ君から読み取った記憶の中に”ふぁいと“と言われて喜ぶ貴方の姿はあったんですけど……」



だった。ドウルが登録するプレイヤーの記憶も精度が完璧というわけではないらしく、簡単には思い出せないほどの記憶の奥底に眠っているのだろうか。


 2人の横でシューマが大きく欠伸をする。なんだかとても眠そうな様子だ。



「どうした?寝不足?」



 眠そうな目をこすりながら



「深夜……いや、早朝までプリステをやっててな……。全然寝れていない」



 と答えるシューマ。

 ANOは現実世界の肉体の状態はゲームに反映することは無いが精神状態は反映するらしい。ナギサは新たなゲームでの発見に少し驚く。



「昨日から特別な衣装のイマちゃんがランキング上位報酬のイベント中が始まったそうで。そんなわけでシューマ様はクッソ忙しいのですわよ」


「あー、そういえばそうだったね」



 眠そうなシューマに代わって背後に立っていた彼のドウル、シャルディがシューマの肩を揉みながら説明する。

 そんなシャルディの衣服は現在メイド服。本人はお嬢様風の出で立ちだが、ご主人に仕えるメイドの衣装も中々様になっている。


 “プリステ”とは“アイドルハート!プリズムステージ”というアイドル育成ゲームの略称で、約100人のアイドルの中から好きなアイドルを自分好みに育成させて、育てたアイドル達でライブを楽しむというスマートフォン用ゲームの人気シリーズであり、今年でサービス開始から9年目という長い歴史を誇っている。


 これまでは人気キャラクターのみにしか声優が付いていなかったが、3年前には全キャラクターに個別の声優が実装されたため、声優ファンからの人気も非常に高い。

 そして”イマちゃん”とは現在12歳のポニーテールが可愛らしい元気な小学生アイドル”若林イマ”のことであり、シューマが“担当”として激推ししているキャラだった。



 ……というかこのシャルディというドウル、気品漂うお嬢様のような格好と声をしておきながら言葉遣いは結構イマドキの若者というか、語尾に“ですわ”と付けているだけでとりあえずお嬢様感を出しているというか……。

 とにかく、姿を見た時に受ける印象と中身はだいぶ異なる。そんなキャラだったのかこの娘。


 シャルディがもう肩揉みに満足したといった様子でシューマの肩から手を放すと、大きく背伸び。

 すると彼女の豊満なバストが身体の伸びに沿って大きく張る。ナギサはそれを見てないですよと言わんばかりにシャルディから視線を逸らした。



 ――ゲームのキャラとはいえ女性のそういった仕草をまじまじと見るのはやっぱり恥ずかしいな。シューマは平気なのか?あー、ソウハの胸はそこまででもないからその辺助かるよなぁ。別に普段も仕草はエロくないもん。カワイイ寄りだもん。



「……何か今失礼なことを思われた気がしました」


「思ってない。そんなこと思ってないよソウハ。むしろ褒めたっていうか……。というかシューマ、そんなに忙しいのに僕と一緒にミッションやってて良かったの?」


「ふぁ……。……ん?……ああ、問題ない。全然寝ていないと言っただろう?俺は自分の睡眠時間を犠牲にして今朝の時点でランキング1位に上り詰めたし、2位との差もかなり開けておいた。ちょっとサボった程度ではそこまで大きく順位は落ちんはずだ」


「凄いなお前……」



 ”凄いな”というナギサの言葉を聞いてシューマは機嫌良く笑った。



「ああ!俺は凄いんだよ!俺が一番優秀なイマ担当でなくてはならん!そもそも俺以外の同担連中なんぞ、俺より品の無い顔と性格をしているムシケラにすぎん!

そんな虫共は汚い地べたに這い蹲って、俺達の輝かしい姿を無様な顔で見ているのがお似合いなんだよ!フハハハハ!!」


「よっ、シューマ様ったら同担拒否勢の鑑!そこまで行くと気持ち悪さが気持ち良いですわ!」


「ハッハッハッハ!もっと褒めてもいいぞ!」


「いや、気持ち悪いって言われてるからな?」



 こいつ、顔はモデル並みにイケメンなのになぁ。どうしてこう性格が最低なんだか……。

 ナギサは彼との長い付き合い――といっても高校2年からの付き合いなのでそこまで長くはない――の中で何度思ったか分からないボヤキを、心の中で吐いた。






  ◆






 大学の講義って結構難しいなぁ。全然話が頭に入ってこない。

 それに教授によって授業の分かりやすさまで変わってくるなぁ……。


 黒板に書かれた文字をノートに取りながらナギサはふと思う。

 経済学部1回生の必修講義、経済学入門の担当教授はそろそろ定年を迎えるらしいお爺さんで、字があまり綺麗ではなく、その上かなり小さかった。そのため講義室の後方に座ったナギサは黒板に書かれた文字を読むのにもかなりの労力を割かねばならない。


 そもそも経済学の勉強なんて大学に入るまでやったこと無いから何を言っているのか全然分からない。

 「経済学入門」というだけあって、初歩の初歩から教えてくれているのは分かっているのだが、それでも慣れない分野の話というのは頭に入ってきにくいので、なんだか眠たくなってきてしまう。

 ああ、前期からこんな調子じゃ駄目だなぁ……。とは思うが。



「すぅ……。すぅ……。タイムイズ・タイムイズオーヴァー……」



 まあ、自分の横の席で寝言を言いながら爆睡している、この女子生徒よりはマシだろう。

 寝言の内容も頭が悪そうだ。"時既に時間切れ"ってどういうこと。









 講義の終わりを告げるチャイムが鳴ると同時にナギサは荷物をまとめる。横の席で寝ていたボブヘアーの女子生徒は、よく寝たといった様子で気持ちよさそうに背伸びをしてから荷物をまとめ始めた。

 必修の入門講義を受けてるってことは自分と同じ1回生だよな?この4月の中頃の時期からこんな怠けてて大丈夫なのかこの人?と思いながら他の学生たちに続いて講義室を出た。



「昼飯行くぞ」


「うわっ、ビックリした」



 部屋を出た瞬間に自分に向かって声が聞こえたので驚いた。講義室の出口付近で友人のシューマが待ち構えていたのだ。彼は自分よりも講義が早く終わったようだ。

 ナギサは経済学部でシューマは社会学部なので、受講している講義は基本的に被っていない。



「講義終わってすぐの時間だから食堂混んでそうだよなー。今日は生協で弁当でも買って外で食べる?」


「そうだな。……あ、今日は木曜日だからハンバーグ弁当が出る日だぞ」


「そうなんだ?よく知ってるなぁ」


「こういう情報はしっかり覚えておいた方がいいぞ?なんせ最低4年はお世話になる環境だ」



 他愛ない話をしながら講義室のあった5号館を後にして生協へと歩くナギサとシューマ。

 2人が桜川大学に入学してから既に1週間程が経過。大学内のシステムや施設にはまだ上手く慣れてはいない。



「そういえば今回のイベントシナリオは最高だった」



 先ほどまでの会話の流れとは全く関係の無い話をシューマが始めた。ナギサは(また始まった)と呆れ顔。


 今回のイベント、とは先日彼が話していたアイドルゲーム、プリステで開催されているゲーム内イベントの話だろう。彼は高校の時から自分の担当アイドルの話を唐突に初めることが多々あった。こうなると彼が満足するまで話が終わらないのをナギサはよく知っている。



「イマの“まだ幼いながらも年の離れた弟のためにしっかりとした姉になろうと努力している”という設定を、姉キャラである宇都宮純と絡ませて掘り下げる流れは完璧だと思ったな」



 シューマの喋る速度がドンドン早くなっていく。やっぱりオタクは自分の好きな話になると早口になる生き物なんだよなぁ……。ナギサは半分ほど聞き流すつもりでその話に耳を傾けた。



「俺はヤツの担当ではないが“お姉ちゃんだって誰かに甘えていいんだよ”という台詞には感動した。イマは確かに自分自身で何でもこなそうと色々抱えすぎてしまう癖がある。シリーズ初期から散々描写されてきたイマの危うさにフォローを入れてくれた……。あのビッチの言葉でイマは救われたんだ。ありがとう金髪クソビッチ……。前年度の人気投票でイマよりも上の順位だった恨みはこれで忘れてやる……」


「クソビッチてお前……。僕は純姉は清純派説推しだ」


「知るか。未成年で髪染めてるような女は大概ビッチだと相場が決まっている」


「偏見が過ぎる……。大体ゲームのキャラクターにその理屈は通用しないだろ」



 プリステの人気キャラの一人である宇都宮純は髪を金色に染めた所謂“ギャルキャラ”だが、喋り方は普通の女子高生らしい上に学力が高いという設定を持つため、彼女が“普段めちゃくちゃ遊んでるキャラ”なのか“ギャルっぽい見た目だが根は清純キャラ”なのかはファンの間で度々話題になる。


 ちなみに"前年度の人気投票"とは毎年開催されているアイドル達の人気投票のことで、上位7人は人気投票のために書き下ろされた特別な曲を歌うことができる。

 前年度の結果は若林イマが42位、宇都宮純が14位。ナギサが好きな須藤あずみは28位だった。あの頃のシューマは露骨にイライラしていたことを今でも覚えている。



「投票券つきガチャがイマの時にも来ていたら〇〇とか××なんかに絶対負けないんだが!?あの不人気キャラ共が俺のイマの上を往くことなんて絶対にありえんわ!クソが、運営の贔屓だろ!口汚い問い合わせメールを送りつけてやる!」



 という本当に最低最悪な台詞を結果発表の日から1ヶ月くらいはいつも言っていた。

 しかも驚いたことに、「最近○○の出番が多過ぎます。この一年でイベントシナリオ登場回数10回は異常です。雑な贔屓はやめてください」という問い合わせメールを本当に送っていた。運営からは迷惑ユーザーとしてブラックリストに入れられているに違いない。



「しかし複雑な気分だ。イマを救ってあげる役目は俺が担うべきだったとも思っているからな。だがゲームの中の俺は独身で一人っ子のプロデューサーだ。それに俺自身も一人っ子……。俺にはアイツの背負う責任ってやつが理解できないかもしれない――」



 感慨深そうに空を見上げるシューマ。お、そろそろ終わったか?とナギサは思ったが。



「そう考えるとクソビッチが憎くなってきたな」



 と急に冷たく言い放ったのでナギサは心の中でズッコケた。現実の方でも体のバランスを崩しそうになる。



「あのなー。純姉にもなー。イマちゃんに対するお前のような熱心なファンがいるんだからさー。悪意を感じるあだ名で呼ぶのは辞めろってー。お前もイマちゃんの悪口言われたら嫌でしょ」


「ぐうううううう……!やはりイマの心に寄り添う役目はプロデューサーの俺が良かった……!憎い……!イマに近寄る俺以外の全てが……!」


「聞け、おい。……正直もうその性格が治るのは諦めてるけど、とりあえずあずみさんの悪口だけはもう言うなよ」


「ぐっ、……それは分かっている」



 ようやくナギサの言葉に反応したシューマが小さく唸る。

 そう、ANOダイブ初日、シューマはナギサにドウル同士でのバトルを挑んでいた。……「自分が勝てば二度とお前の好きな“須藤あずみ”の悪口は言わない」という約束つきで。

 そしてナギサとソウハは勝った。ナギサが



「お前とのクソみたいなやりとりはこれで仕舞いだァー!」



 と気合を入れまくっていたのが勝因かどうかは分からないが、とにかく勝った。


 本人も自分で決めた約束を破るほど最低の性格ではなかったようで、今のところはあずみさんに関しては何も言えないのだった。


 ……悪口を封じられると何も言えなくなるのは、やはり彼の性格が最低最悪だからとしか言いようがないが。


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