表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カフェ・ルミエール  作者: 舞夢
95/760

カフェ・ルミエールの新メニュー(3)

由紀の顔は「史君は?」と聞かれた途端、真っ赤である。

しかし、この赤い顔は、どちらかと言えば由紀の「お怒り顔」である。

ただ、由紀の「お怒り顔」は、洋子にとって、すごく可愛い。

ついつい笑い出しそうになるけれど、洋子は懸命にこらえる。


「ほら!また私の顔みて笑いそうだし!」

「でも、聞きたいんでしょ?教えてあげる」

「あの、アホの史でしょ?」

由紀は、話始めると止まらない。

まあ、笑いをこらえるのに必死な洋子にとっては、それがラッキーなのだけど。


「あのアホの史もね、嫌々ながらだと思うけど」

「アホの母美智子に強制試食させられてね」

「まあ、私なんてもんじゃないんです、その試食の態度が!」

由紀は、本当に怒り出した。


「史は、一口食べては・・・」

「味のバランスのカケラもない」

「酸味と甘味の調合が品がない」

「香料がキツすぎ、あるいはピントがボケすぎ」

「小麦粉のこね方が甘い、雑」

「餡は、木村親方のほうが、美味しい」

「タルトに合わせるのなら、もう少し工夫が必要」


「もうね、数限りない文句の雨あられ!なんです」

「だいたいね、軟弱な史の分際で、おこがましいって思うんです」

由紀は、ここまで話して、ようやく一息。


洋子は、少し気になった。

「あの美智子さんの試作に、それほど意見が出来るのか」

そして、由紀に聞いてみる。

「その史君の意見に、美智子さんは怒らないの?」


すると由紀は、難しい顔になる。

「それがねえ・・・洋子さん」

「聞いてくださいよ」

「あの美智子さんね、史が子供の頃から、食べ物の意見だけは、史の意見を尊重するんです」

「今回の意見も、全部フンフンと頷いてメモして」

「最後に、史にありがとうまで言うんです」

「ねえ、私の意見なんて、ほとんど聞かないんです、それも子供の頃からだもん」

由紀は、今度はちょっと泣き顔になった。


「そうか、時間がかかったけれど、これが今日の由紀ちゃんが来た理由か・・・」

ようやく、洋子は組んだ腕を解いた。

そして、涙ぐむ由紀を見ることもなく、誰かに電話をかけている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ