カフェ・ルミエールの新メニュー(2)
「つまりね、洋子さん!」
由紀は、相変わらず元気がいい。
史なら、「うーん・・・」とか言って、話がなかなか進まない。
まあ、それがたまらなく可愛いのだけど、今は由紀の方が話が早い。
洋子は、素直に由紀の話を聞くことにする。
「和風洋菓子とか、洋風和菓子って、言い出しているんです」
「お饅頭の中に、洋風のクリームとか」
「タルトの上に、和風の餡とか」
「それをまた、いろいろと凝るものだから・・・」
「私だって、まだ乙女なのにねえ」
「スタイルだって気にしますって!」
いつのまにか、お菓子の話からスタイルの話に変化する。
「そう?まだまだ由紀ちゃんの年頃じゃ、そんな心配はいらないって」
「身体も成長期だと思うからさ」
洋子としては、由紀のスタイルどうのこうのよりは、憧れの先輩パテシィエ美智子の新作のほうが気になる。
どうしても、由紀のスタイル話から、お菓子のほうに話を戻さねばならない。
・・・がしかし、なかなか、そこで、うまく戻らない。
「えーーー?その成長期って何ですか?」
「まだまだ未熟ってこと?」
「それは、洋子さんとか奈津美さんには負けるし」
「結衣ちゃんも、彩ちゃんも・・・立派だし」
「涼子さんは・・・ああ・・・年増圏外だ」
「悔しいけれど、母美智子は立派だ・・・」
由紀の話は、やはり変な方向に変化した。
「・・・あのさ、由紀ちゃん、その話がメインなの?」
「お菓子じゃないの?」
洋子は呆れてしまった。
少し強めに由紀を見る。
「あ・・・ごめん・・・ついつい・・・」
「お菓子ですって!」
由紀は顔を少し赤くして、ようやく話を戻す。
「それでね、いつかは誰かに食べさせたいなあって」
「まだまだ、試作の試作ですけどね」
由紀は、マトモな顔に戻った。
「そうなんだあ・・・興味あるなあ」
「一緒にやりたいぐらいだけど」
洋子は、また腕を組んだ。
ところで、気になったことがあるので、由紀に聞いてみた。
「ところで、史君も試食しているの?」
そうしたら、由紀の顔が一変。
また、真っ赤な顔になっている。




