史と里奈(1)
カフェ・ルミエールに、里奈は真っ赤な顔で入ってきた。
「はい、いらっしゃいませ」
洋子は、にっこりと里奈を迎え入れる。
そして里奈に目配せ、つまり「史が待つテーブルへ」の合図である。
「ごめんね、史君、急に柔道部話し合いで」
里奈の顔は、ますます赤くなる。
「ああ、しょうがないよ、大会近いしさ」
史は、少し微笑んでいる。
「さっき、お姉さんに聞いたんだけど、水泳部は大丈夫だったの?」
里奈は、史がグラマーの良香から走って逃げたのが、気にかかっている。
「うん、取材が終わったんだけど、水着のままで良香さんが、両腕を広げて近づいてきたの」
「でも、意味がわからなかったし」
「じゃあって言って」
「里奈ちゃんに話したいこともあってね」
史は、相変わらずハンナリである。
「むむ・・・良香さん・・・ハグしようと思ったんだけど」
「史君は、気づいていない」
「ある意味、鈍感?」
「でも、私に話ししたいことって?」
「ちょっと、うれしいのと不安と・・・」
里奈は、複雑な表情になった。
「あのね、里奈ちゃんには、いろいろ助けてもらったから」
「お礼で、ケーキを焼いたの」
今度は史が洋子に目配せ。
洋子は、史に頷き、キッチンに消えた。




