奈津美の悩み(5)(完)
「あなたたちも食べてごらん」
洋子は、アルバイトの結衣と彩にも声をかけた。
「うわ、シュークリーム食べ比べなんて!」結衣
「これは、幸せだ!」彩
ふたりとも、うれしそうにシュークリームの食べ比べをする。
「うん!やはり!美智子さんのが最高です」
「洋子さんには申し訳ないけれど」
奈津美は、まだ、その目を丸くしたままである。
「いやーーーこんな美味しいシュークリーム食べていたの?史君」結衣
「幸せな子供ですねえ」彩
結衣と彩も、判定としては、美智子のシュークリームにあげたようだ。
「うん、このクリームの見事さは、私でもかなわないの」
「だから、この味で育った史君に連絡したの」
「あ・・・由紀ちゃん、ごめん・・・」
洋子は、少し由紀に謝った。
「もう、連絡してくれないから!」
「史なんか呼ばなくてもいいのに」
由紀は、また少しむくれている。
「でもさ、由紀ちゃんのむくれた顔って、すっごく可愛いよね」
洋子は、そんな由紀に笑いかける。
「・・・そういうことを言うから、この姉がつけあがるんです」
史が文句を言うと、由紀が史の頭をポカリ。
「このアホ!口の聞き方もわからないの?」
しばらく、姉と弟の不穏な雰囲気が続く中、奈津美はキッチンに戻っていった。
「うん、泡立ての練習をしている」
「和菓子にはあまりない技術さ」
「これで、奈津美ちゃんは、また成長する」
洋子は、一安心の様子である。




