史の初リサイタルの後のパーティーにて(2)
史の挨拶の後、大旦那自らが乾杯の挨拶。
「長らくお待たせした史の初リサイタルも、成功となりました」
「これも、一族の皆さま、史を指導していただいた先生方のお陰と存じます」
「皆さま、今後も史を応援、是非、おねがいいたします」
「それでは、本日、史の初リサイタルにご尽力をいただいた皆様のご健勝を祈り、乾杯といたします」
大旦那は、ここで大きく息を吸い込み、大きな声で
「乾杯!」
パーティー会場の全員が唱和し、乾杯となった。
大旦那は、史の肩を軽くたたく。
「一緒に挨拶にまわろう」
史は、素直に頷き、大旦那と一緒に、参列者にあいさつをする。
大旦那は、「一族は後にする」として、まずは来賓に史を連れて行く。
ルクレツィア女史は、史が来ると大騒ぎ。
「もう、感激したわよ、史君」
その豊満な身体で、思いっきり史を抱きしめる。
史は、その「肉圧」にゼイゼイしながら、
「今後もよろしくお願いいたします」
と、必死に返す。
ルクレツィア女史は、うれしそう。
「今後って、すぐよ、一緒にフィレンツェ行きましょう、大歓迎するわよ」
そこまで言って、また史を猛烈ハグ。
後から見ている由紀。
「マジ、あれは苦しいの」
里奈は、笑っている。
「でも、いい人ですね、悪気を全く感じない」
史は、次にオーストリア大使館員の前に。
大旦那
「わざわざお越しいただきありがとうございます」
大使は、史と握手。
「とにかく、素晴らしいバッハとモーツァルト、ショパンでした」
「これならヨーロッパのコンクールに出してみたい」
「是非、ウィーンにもいらしてください、大歓迎いたします」
史は、深く頭を下げている。
進学する音楽大学の内田先生、カフェ・ルミエール楽団の榊原先生、合唱指導の岡村先生が並んでいる。
史は、小走りにその前に。
「本当に、ご指導ありがとうございました」
「今後もよろしくお願いします」
内田先生は、本当にうれしそう。
「世界に通用するわよ、史君」
「もっと早くから指導したかったなあ」
榊原先生は、口惜しそう。
「案外引っ込み思案で、新聞部だったしなあ」
「もったいなかった、高校からプロもできた」
岡村先生は、史の肩を抱く。
「そういう苦しい経験が、史君の音楽に深みを与えているのかなあ」
「でも、今後が楽しみだ」
史は、学園長にもあいさつ。
「もうすぐ卒業となりますが、ご迷惑をおかけしました」
「本日は、花束までありがとうございました」
学園長は、首を横に振る。
「いやいや、史君に迷惑をかけたのは、学園のほうだよ」
「いろいろと教員や生徒の指導不足で申し訳なかった」
「卒業しても、また遊びに来てください、今後も期待しています」
学園長と史は握手をしている。
学園長の隣には、史に「禅の呼吸法」を指導した菅沼先生が笑顔で立っている。
史は、深く頭を下げた。
「菅沼先生の教えがなかったら、ここまで来れませんでした」
菅沼先生は、笑っている。
「いや、僕は伝えただけ、大元はお釈迦様かな」
・・・・・
そんな状態で、史はあちらこちらにお礼の挨拶をして回っている。




