史の初リサイタルの後のパーティーにて(1)
史の初リサイタルの後のパーティー会場は、カフェ・ルミエールビルの3階。
史が控室でリサイタル用の衣装から普通のジャケットに着替えて、鷹司京子とパーティー会場に入ると、大歓声と大拍手で迎えられる。
「史くーん!素晴らしかった!」
「かっこよかった!」
「今度はいつ?」
学園の生徒や、進学する音楽大学の生徒(ほぼ女子になる)が大騒ぎ。
その史に里奈、加奈子、由紀がダッシュでお迎えにきた。
里奈
「史君!すごい料理とお菓子が」
確かに、ビュッフェスタイルではあるけれど、会場の中には様々な料理やお菓子が並べられているようだ。
加奈子も、うれしそうな顔。
「すっごいよ、マスターも清さんも、洋子さんも」
「あ、木村和菓子店も出してくれた」
由紀は、少々胸を張る。
「私も、母さんとシュークリームと、例の干しイチジクパウンドケーキを焼いた」
史があっけに取られていると、マネージャー鷹司京子が、史の腕を引く。
「史君、壇上に、大旦那がお待ちよ」
史は、顔を赤らめて、壇上に進む。
パーティーの司会は、京極華蓮。
史が壇上にのぼったのを確認して、さっそく司会を始める。
「それでは皆様、お待たせいたしました」
「本日のソリスト、史君です」
その紹介で、また史は大歓声と大拍手を受ける。
史は、頭を下げて、ごあいさつ。
「本日は、はじめてのリサイタルを最後までお聴きいただき、本当にありがとうございました」
「また、ここまでの間、いろいろと準備をしてくれた方々にも、心から感謝申し上げます」
史は、ここまでは、定番の言葉、聴衆とカフェ・ルミエールのスタッフなどに頭を下げる。
そして、声のトーンを少し抑えた。
「それと、僕自身、こういうリサイタルを開くような音楽家になること、実はいろんな意味で、ためらっていたこともあるのですが」
「それでも、こんな僕でも、評価してくれて、応援してくれる人がいて・・・」
史の言葉が、ここで詰まった。
全員の視線が史に集中する。
史は、その顔をグッとあげた。
「でも、今日、ここで初リサイタルを、ピアノを弾けて、本当にうれしかった」
「まだまだ、拙い部分があるけれど、もっともっと練習をして」
「皆さまのご期待と応援に応えようと思います」
そして、一際大きな声で締めた。
「今後も、よろしくお願いいたします!」
史は再び、大歓声と大拍手に包まれている。




