史の初リサイタル(2)
史はカフェ・ルミエールビルに到着。
初リサイタル会場となる地下ホールにて、少しピアノを弾いたり、マネージャーの鷹司京子と打ち合わせなどを行っている。
鷹司京子
「最後に大旦那がご挨拶したいみたい」
史
「僕は?」
鷹司京子
「少しぐらい話したら?今後もよろしくとか」
史
「そっちのほうが緊張する、音楽を壊しちゃいそう」
鷹司京子
「大丈夫、史君ならできる」
「それから、祝電も多いし、花束贈呈も多い」
史
「花粉症になりそう」
鷹司京子
「里奈ちゃん、加奈子ちゃん、ここのカフェ・ルミエールの洋子さんとマスター」
「史君の学園の音楽部、合唱部」
「よくわからないけれど、体操部、水泳部、野球部、柔道部、陸上部」
「新聞部もあるね、史君は新聞部だったものね」
「学園長とか、自治会長、木村和菓子店もある」
「へー・・・ルクレツィアさん、イタリア大使館、オーストリア大使館」
史は途中から聞くだけで疲れている。
「一人で全部もらうの?」
「持って帰ってどこに置くの?」
鷹司京子
「大部分は、私が大旦那のお屋敷に持って行ってあげる」
「史君は、一番好きな人からのにしたら?」
史は、「うん」と言って納得。
おそらく、里奈からの花束だけ持って帰ることに決めてしまったようだ。
鷹司京子は、話を続けた。
「リサイタル終了後は、三階でパーティー」
「料理はマスターと清さん、洋子さん」
史
「何か、すごいことになりそう」
鷹司京子
「そっちの司会は、華蓮ちゃんと道彦君」
史
「へえ、役割分担があるんだ」
鷹司京子
「華やかな司会は、華蓮ちゃんと道彦君が上手」
「私はあくまでも、史君のサポート」
史は京子に頭を下げた。
「本当にありがとうございます」
鷹司京子
「何を言ってるの?これからだって」
史と鷹司京子が、そんな打ち合わせをしていると、母美智子と由紀がホールに入って来た。
美智子は京子に頭を下げた。
「京子ちゃん、史をお願いね」
京子は、笑って首を横に振る。
「大丈夫、しっかりしているから、本番には強いですし」
由紀は、京子に深く頭を下げてから、史の前に。
「史、ちょっとだけ手を握って」
史がその通り、軽く由紀の手を握ると、由紀はウルウル。
「何か、ドキドキしちゃって」
史はあきれた。
「ドキドキするのは僕だって」
「姉貴がグジュグジュ泣いてどうするの?」
由紀は、母美智子が史から引きはがした。
「あのね、史はまだいろんな打ち合わせがあるの」
「私たちは、まず3階に行って、パーティー準備の人たちにご挨拶」
「それから、ホールに戻って、大旦那と奥様を待つ」
母美智子と由紀が、三階に向かう姿を見ている史の背中を、京子がトンと叩く。
「すみません、姉貴は・・・」
史は、やさしい顔で、姉の後ろ姿を見ている。




