加奈子の引っ越しとご挨拶(4)
加奈子のご挨拶の最後は晃邸。
まず、由紀と史の母美智子にご挨拶をする。
加奈子は深く頭を下げる。
「今日、引っ越してきてしまいました」
「これから、よろしくお願いします」
美智子は、加奈子をしっかり抱きかかえる。
「こちらこそ、よろしくね、史のことも」
加奈子は、ここでも明るい返事。
「はい!隣ですので、いつでも声がかけられます」
由紀は、それを聞いて少々寂しげ。
「私もあっちに住みたい」
史は、少々、憮然としている。
「そんなに僕ってひ弱?要観察対象なの?」
リビングに入って、様々な会話。
美智子
「お母様から電話がありましたよ、早すぎるって」
加奈子は、首を横に振る。
「いや、こっちに来たくてしかたがなかったので」
由紀
「私も、時々、そっちに泊まっていい?」
加奈子は、史の顔を見てから由紀に質問。
「私のいる大旦那のお屋敷?それとも史君の住む洋館?」
由紀は即答。
「史のいる方は、京子ちゃんがいるから、加奈子ちゃんのほうがいい」
「純和風のお屋敷も好きなの」
史は、フフッと笑う。
「姉貴は、京子ちゃんが苦手なの」
「京子ちゃんは、理詰めだし、姉貴は行き当たりばったり」
由紀は、ムッとなるけれど、ポカリの手は遠慮している。
さて、加奈子には、どうしても美智子にお願いしたいことがあった。
「それでね、美智子おばさん、お願いがあるんです」
少し真顔になっている。
美智子が「はい、なんでしょう」と、加奈子の次の言葉を待つ。
加奈子
「あの、お菓子作りを教えて欲しいんです」
「できれば、ここに通って」
「伝説のパウンドケーキを作って見たくて」
美智子はにっこり。
「あらーーー!うれしい!伝説なんて・・・」
「どんどん、いらっしゃい」
「何でも教えてあげる」
加奈子もうれしそう。
「はい、カフェ・ルミエールではシュークリームとエクレアも絶品とか」
「洋子さんも、かなわないって」
美智子は、また笑う。
「へえ、自分だと作っているだけなの、どこかが違うのかな」
少しボンヤリと話を聞いている史の脇を、由紀がつつく。
「ふふん、史はあっちに住むから、食べられなくなる、母さんの出来立てのお菓子」
史は、「うっ」となったけれど、すぐに由紀に反撃をする。
「姉貴も習ったら?食べてばかりでしょ?成長がない」
今度は由紀がムッとなっている。




