加奈子の引っ越しとご挨拶(1)
加奈子は京都の高校の卒業式を終え、早々と、大旦那のお屋敷に引っ越しをしてきた。
引っ越しのご挨拶と京都土産を渡された、大旦那も奥様もあまりの早さに、驚いている。
大旦那は、笑っている。
「わが孫ながら、せっかちだ」
奥様は、少々心配。
「加奈子ちゃん、あまり早いと、お父さんもお母さんも寂しがらない?」
加奈子は、にっこりと首を横に振る。
「いえ、後になってみれば、それほど変わらないと思うんです」
「それより何より都内の生活に早く慣れたいということと」
加奈子は、声を少し落とした。
「父も母も、心配しているのは、史君のこと」
大旦那は、「うん」と頷き
「そうだなあ、大丈夫と思うよ、京子ちゃんも華蓮ちゃんもついているから」
と言うけれど、少々心配気味。
奥様は苦笑い。
「史君は、大丈夫、繊細なところがあるけれど、芯は強い」
「それでも心配なら、京子ちゃんとか華蓮ちゃんのお手伝いでもしたら?」
加奈子は、にっこりとなり、
「はい、今からカフェ・ルミエールに引っ越しのご挨拶に行ってまいります」
と、京都土産を手に、カフェ・ルミエールビルに向かう。
加奈子がまず、カフェ・ルミエールの喫茶部に入ると、大騒ぎ。
洋子
「うわーーー!加奈子ちゃん、待ってた!」
「何のケーキにする?」
奈津美
「まさに春ね、楽しくなってきた」
結衣
「史君を囲む会の主要メンバーが到着しました!」
彩
「とにかく、うれしい、味方が増えたって感じ」
そんな大騒ぎの中、加奈子は丁寧に、一人ずつ京都土産を渡している。
ケーキと紅茶をいただいた加奈子は、二階の文化講座事務局に。
ここでも全員一人ずつ京都土産を渡し、大歓迎を受ける。
華蓮はホッとした顔。
「うん、助かった、これで楽になる」
加奈子は、華蓮の表情ですぐに内容を理解した。
「由紀ちゃんが、寂しがっているんでしょ?」
道彦も苦笑い。
「そうなんだ、顔が沈んでいるよ」
亜美も同じく。
「由紀ちゃんは寂しくて仕方が無いって、私にもこぼしていた」
加奈子は、「やれやれ」と言った顔。
その加奈子に華蓮が伝えた。
「史君は今、地下のホールで練習中」
「京子ちゃんと由紀ちゃんもいるよ」
加奈子は、頭を下げて、地下ホールに向かった。




