史、由紀、加奈子の卒業旅行計画(1)ルクレツィア女史
史、由紀、加奈子は、一族が集まった京都での新年会の時に、大旦那からヨーロッパなどの卒業旅行計画をプレゼントされているけれど、具体的な計画は立てていなかった。
また、同行、付き添いを言われていた華蓮も、4月からのカフェ・ルミエール文化講座準備のために、何かと忙しくて、旅行計画作成が進まなかったのである。
そのような状態の中、史のリサイタル計画や引っ越しもあるので、早期に計画を立てる必要があった。
史、由紀、華蓮に加えて、史のマネージャーの鷹司京子も同席して、大旦那のお屋敷で具体的な話し合い、計画を練ることになった。
そして、今はまだ京都にいる加奈子はPC画面を通じての、話し合い参加となる。
華蓮がまず口を開いた。
「できれば、京子さんに一緒に行ってもらいたいの」
「私は文化講座の準備も忙しいので」
京子は、事前に華蓮から聞かされていたらしい、すぐに頷く。
「私は全く問題がありません、むしろ史君が海外で演奏する際の、事前調査も兼ねられます」
大旦那も、すぐに了承。
「ああ、それならいいかなあ、早速計画を立てて欲しい」
史は、少し考えて、由紀と加奈子に声をかける。
「ねえ、ルクレツィアさんにも話して、フィレンツェに行きたいんだけど」
由紀は頷く。
「そうだね、それは話を通したほうがいいね、お世話になったし」
加奈子も異存はない。
「どこでも、お勧めの場所に行くよ、食べ物が美味しいところがいいなあ」
史は、早速、ルクレツィアに電話連絡をしている。
「史です、急なお話で申し訳ございません、三月に海外旅行をすることになりまして、フィレンツェにも立ち寄りたいと思っています」
「出来ましたら、お勧めの宿泊先などを教えていただきたいのです」
久しぶりに史から電話を受けたルクレツィアは、超ハイテンション。
「えーーー?史君がフィレンツェ?」
「うわーーー!いつ?」
「教えるどころじゃないって、私が案内するわよ!」
「仕事なんて、部下に任せる!」
「宿泊先?私の家にしなさい!」
「行くのは史君だけ?」
何しろ、ルクレツィア女史の声が大きいので、史はスマホを耳から遠ざけて聞く状態。
周囲の大旦那と、由紀、華蓮、京子は、手を打って大笑い。
史は、ルクレツィア女史に負けないように、声を張る。
「あの、姉の由紀といとこの加奈子と、僕のマネージャーの鷹司京子さんも一緒ですが、大丈夫ですか?」
ルクレツィア女史は、またしてもハイテンション。
「えーーー?由紀ちゃん、それから二人も素敵な女性?」
「うれしいなあ!全然大丈夫!」
「メディチ家の名誉をかけて、大歓待させていただきます」
どうやら史たちの海外旅行先の一つは、フィレンツェに決定となったようだ。




