清の懐石料理店開店に向けて(2)
清が主任を務める懐石料理店の店名が決定した。
その名前は「光明」。
カフェ・ルミエールの「ルミエール」を日本語にしたもの。
清が、店名を大旦那と奥様に伝えると
大旦那は満足そうな顔。
「発想そのものは単純、しかし、やはり良い言葉だ」
奥様もうれしそうな顔。
「かつて光明皇后というお方がいらしたけれど、わが一族の起源にもつながる」
「さぞ、お喜びでしょう」
マスターは、フッと笑う。
「いいね、これ、わかりやすくて、春に開店するから、それにも合う」
洋子も同じような感想。
「春の柔らかさ、光、明るさ、いろいろと元気がでそう」
清は、賛同が得られたので、ホッとした顔。
「難しく考えて肩ひじ張った懐石ではなくて、食べた人の身体と心の光明となるような料理をつくりたいんです」
文化講座の面々も、喜んでいる。
華蓮
「やさしくて明るくて、元気がでる名前だね、これはいい」
道彦
「決め方は簡単すぎるけれど、名前そのものが素晴らしいからなあ」
亜美は道彦の手を握る。
「子供が生まれたら、どっちかの字を使いたいなあ」
どうやら、亜美のお腹の中には、新しい命が宿っているようだ。
晃は、大旦那ではなく、母である奥様に電話連絡。
「ねえ、母さん、店の看板の墨書は、親父でなくて母さんが書いたら?」
「親父の書体だと、豪快過ぎる」
「親父が文句を言ったら、説得する」
奥様は、笑う。
「そうね、あの人が書くと、柔らかな店のイメージに合わないわね」
「そうします」
美智子と涼子は、いろいろと話し合っている。
美智子
「清さんの本格的な和食が食べられるなんて幸せよね」
涼子
「最初は京野菜との違いで苦労していたみたいだけれど、いろいろ試行錯誤して」
美智子
「私は洋菓子専門だけれど、何かしてあげたいなあ」
涼子
「そうねえ・・・私もホテルの接客なら自信あるけれどね」
由紀は、珍しく史と仲良く話をしている。
由紀
「何かプレゼントしてあげたいなあ」
史
「そうだね、僕は音楽ならできるけれど・・・」
由紀
「懐石だからねえ・・・洋楽って感じもないかな」
史
「京子さんの雅楽とか和楽器なら合うけれど」
由紀
「アルバイトも学校の合間でいいって話になった」
史
「毎日だと、やかましいのでは?」
由紀
「うるさい!余計なことを言わない!」
・・・やはり、途中から話が合わなくなる。
さて、由紀との話を終えた史のところに、清から電話が入った。
「史お坊ちゃま、忙しいところ、恐縮なのですが・・・」
清は、少しためらいがち。
史は、何かあったのかなと思い、
「僕でできることなら、喜んでお手伝いします」
と言うと
清
「今度の土曜日、坊ちゃまの空いている時間に」
史は、即答。
「はい、清さん、朝9時から」
清の声が大きくうれしそう。
「ありがとうございます!よろしくお願いします!」
さて、清の頼みは、何になるのだろうか。




