史のマネージャー鷹司京子(3)
史がカフェ・ルミエールに入ると、奈津美がお出迎え。
「いらっしゃいませ、もう、華蓮さんも京子さんも・・・」
史は、にっこり。
「あ・・・はい・・・」
そのまま、華蓮と京子の席に進む。
華蓮と京子は、その史を立ち上がってお出迎え。
華蓮はうれしそう。
「お待ちしておりました、史君」
京子は、控えめな笑顔。
「お久しぶり、史君、これからよろしくね」
そのまま、すっと史の手を握る。
史は、その顔が赤くなる。
洋子もカウンターから出て来た。
「これでやっと史君もプロの第一歩」
「楽しみね」
と言いながら、全員に目で「着席」の合図。
そして、洋子は史の隣に、そのまま座ってしまう。
それを後ろで見ていた奈津美は目を丸くした。
「あの手際の良さは何?」
結衣はムッとした顔。
「ただ、一緒に座りたかっただけでは?」
彩はブツブツ。
「これは京子さんに史君を取られるという、ジェラシー」
・・・一部、やっかみの声があったものの、テーブル席では、少しずつ話が進む。
華蓮
「京子ちゃんのほうが、音大卒で、音楽関係に知りあいも多いから、京子ちゃんを推薦したの」
京子
「史君のお世話とかマネージメントなら、こんな幸せなことはない」
史は、顔がまだ赤い。
「まさか、こんな急に話が進むなんて思っていなかったので」
洋子
「でも、お金を払ってでも、史君のピアノを聴きたい人が多いから、演奏機会を早くしたら?」
華蓮
「初回コンサートとかリサイタルねえ・・・」
京子
「ここの地下ホールでもいいかな、さっき見たけれど」
史
「それは気が楽です、いつもの感覚で弾けます」
洋子
「お店でも宣伝できるしね」
華蓮
「文化講座でもチケット売ります」
京子
「さっそく計画立てようか?」
史は、少し驚く。
「・・・早すぎでは?」
京子は、首を横に振る。
「内田先生にも連絡したの、そしたら、どんどん演奏機会を持ったほうがいいって」
史が目を丸くすると華蓮
「あのね、京子ちゃんは、かなり仕事が早いの、私より早い」
「楽しみだなあ、史君の初リサイタル」
京子が史に声をかけた。
「ねえ、下のホールで、何かやってみようか?」
史は、すんなり頷く。
「うん、そうだね、響かせてみる」
京子と史が立ち上がると、華蓮と洋子も立ち上がる。
洋子は、奈津美、結衣、彩に目で合図。
そのまま、下のホールに向かってしまう。
奈津美は呆れた。
「洋子さんは、史君のことになると・・・」
結衣は気に入らなくて仕方がない。
「ああなると保護者だよ、恋人とは認めない」
彩は提案。
「この店のモニターにも。下のホールが写るようにしない?」
残された三人は、文句タラタラになっている。




