奈津美の悩み(2)
洋子から電話を受けた史は、少し戸惑った。
「そんな、詳しく味なんてわかりません」
「美味しいとかどうかぐらいで」
しかし、頼まれると断れないのが、史の性分である。
結局
「あ・・・はい・・・わかりました」
「明日の朝の9時に」
で、カフェ・ルミエールに出向くことになった。
その9時ちょっと前、史が家の玄関を出ようとすると、姉の由紀が階段をおりてきた。
そして、いきなり文句である。
「ねえ!どうして自分だけ、そういうことするの!」
「カフェ・ルミエールで奈津美さんのケーキを味見するんでしょ?」
「どうして、私を誘わないの?」
そんなことを言われた史は、ちょっと反発。
「だって、姉さんの名前なんか出なかったしさ」
「それに、誰の情報でそんなこと知っているの?」
「話をしたのは洋子さんだもの」
そこで由紀は、また怒った。
「あのね、アルバイトの結衣さんと日曜日のバイトの打ち合わせしていたら、教えてくれたよ」
「そしたら、今日のこと、史君から聞いていない?って言われてさ」
「もーーー!どうして史って口が短いの?」
「だからアホって言うの!」
史は、ヘキエキしている。
「だったら、素直に一緒に行こうでいいじゃない!」
「怒ってばかりで嫌い!」
史も珍しく怒った。
そんな玄関の様子が耳に入ったのか、母の美智子がまた出てきた。
「あなたたち!うるさいって!」
「ほんと!ふたりとも子供そのもの!」
「ほら、これ持ってって!」
そういう美智子の手には、紙袋が下げられている。




