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カフェ・ルミエール  作者: 舞夢
725/760

気づいた由紀(6)

史は、父晃と一緒に帰宅した。

そして、晃が全員をリビングに集めた。

晃が史に促した。

「史から、話をしなさい」


由紀は、胸がキュンとした。

そして、ドキドキがおさまらない。


史は、静かに話しはじめた。

「3月の卒業式が終わったら、大旦那のお屋敷の洋館に、住みます」

「そこから、大学に通う」

「身分としては、音大生、そして大旦那のというか、一族の芸能団体の所属の音楽家になる」

「理由としては、都心に近い方が、様々なコンサートを聴きに行く、あるいは出演するのに便利」

「大旦那のお屋敷は広いし、良いピアノがある、音量に気兼ねなく練習ができる」

「演奏力を磨くこと、音楽力を磨くことが、今後、とても大事なことになる」


由紀は、史の話の途中から、ウルウルとしている。

また、母美智子も、目がしらをハンカチで抑えている。


晃が、史を補足する。

「今は、史のマネージャーを選定している」

「財団から呼ぶことになると思う」

「決まるまでは、当面、華蓮さん」

「そうは言っても、すぐにコンサートに出るわけではない」


史が、また、話をする。

「将来的には、海外の場合はルクレツィアさんにも、お願いするかもしれない」

「お世話になったし、誘われてもいるし、縁を感じているので」


由紀は、涙ボロボロの状態。

史の手を握った。

「史・・・出ていくの?」

「嫌、家にいてよ」

「寂しいもの」

「この家ではできないの?」


晃が、由紀に声をかけた。

「由紀。史が大旦那のお屋敷に行くというのはね、もう一つの目的がある」


美智子も頷く。


「大旦那と奥様はね、もう少ししたら、京都の本家に戻るのさ」

「全ての東京での役職をやめて、隠居したいらしい」

「何しろ、高齢だ」


由紀は、まだ意味がわからない。

首を傾げている。

大旦那の京都に戻ることは、ある程度予想がつく。

それが、史の大旦那のお屋敷住まいと、何の関係があるのだろうか。


晃は、そんな由紀に、クスッと笑う。

「それでね、由紀、私たちも、それに合わせて、大旦那のお屋敷に移る」


由紀の目が丸くなった。

「え?マジ?あの?ご立派な?」


母美智子が、少し笑う。

「だから、史は先発隊なの」

「先に行って、住みやすいように整備するとかね」

「もちろん、当面は大旦那たちが住むし、加奈子ちゃんも大学時代は住むしね」

「そういうことに気を使いながら整備するのは、史ならできる」


由紀から、涙顔が消えた。

とにかく、キョトン状態。

でも、史の手は離さない。


史から、由紀に声がかかった。

「姉貴」


由紀は、史の気持ちが読めない。

「何よ?」


「寂しい?」


由紀は、また突然、涙があふれてきた。

「このアホ!」

由紀は、史の手を握りしめたまま、泣き出してしまった。

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