史の引っ越し準備(2)
史は、大旦那の家につき、鍵をさっそく受け取った。
史が
「ありがとうございます」
と頭を下げると、
大旦那
「とにかく欲しいものリストを作って欲しい」
奥様は、にこにこ。
「史君の感性で、どんなものを頼むのか楽しみ」
「おまかせします」
そんな声をかけられて、史は三月卒業式以降に住み家となる洋館に入った。
部屋としては、10畳間が4部屋。
2階建てで、部屋以外には、一階に10畳のキッチン兼食堂、リビングが12畳間とお風呂、トイレ、尚、2階にもトイレがある。
史は、考えた。
「ピアノはリビングかなあ」
「楽譜を整理する本棚とかが必要」
食堂についてはあまり考えない。
「朝はパンを焼くかなあ、パン焼き機でいいや」
「お昼は、おそらく学食のような感じ、ほぼ外食」
「夜も、コンサートを聴きに行ったり、出たり、練習なので、家で食べるのは少ないかも、いる時だけ作ればいい」
「オーブンもあるし、冷蔵庫も炊飯器もあるから、いいかな」
「食器も調理器具もそろっているし、もともとゲストハウスだったから」
それ以外に考えるのは、4つの10畳間の使い方。
「どこの部屋を使うかなあ」
「勉強部屋、寝る部屋」
「それでも2部屋余る」
史は、チラッと由紀の顔が浮かんだ。
「姉貴は、絶対泊めない」
「母さんと喧嘩しても泊めない」
「加奈子ちゃんの部屋に泊まってもらう」
「そこまで面倒見切れない」
史は2階にのぼった。
「うん、南向きだから明るい」
「2階にするかな」
「大き目のテーブルと本棚」
「クローゼットは十分かな、さすがゲストハウス」
史が2階のベランダで庭を見ていると、マスターが手を振りながら歩いてくる。
そして、洋館に入り、2階のベランダにのぼってきた。
マスターもにこにこ。
「楽しみだねえ」
史も笑う。
「そうですね、わくわくしています」
マスターは、もう一言あるようだ。
「史君の入学祝を考えているんだ」
史は、驚いた顔。
「え?そう言われても・・・」
マスター
「あのさ、大型スクリーンとステレオのセットにしたい」
「どうせ、使うだろ?」
史は、恐縮。
「え・・・あり難いけれど・・・」
マスターは笑った。
「何、将来あるわが一族の音楽家だよ、何かさせてよ」
史が、頭を下げるとマスターは、また笑う。
「あちこちから来るかなあ」
「大旦那、京都の本家、財団、文化講座事務局・・・」
「洋子さんたちも考えているってさ」
史は、困ったような笑顔になっている。




