加奈子と里奈(2)
由紀は、史からの話に簡単に納得した。
「へえ、加奈子ちゃんが里奈ちゃんとねえ・・・」
「それが正解かな、どうせ来年から何度も顔をあわせるし」
「私は事後報告でいいよ、同い年だけでお話すれば?」
「大旦那のお屋敷でお話するの?」
史も驚くばかりの、物わかりの良さ。
実は、由紀には当日、大学の合唱部の練習もあったし、まだ一年生の立場で休めなかったこともある。
由紀から、もう一言あった。
「もし、どこか出かけたら、お土産買って来て」
史は思った。
「姉が弟に、お土産をねだるとは何ごと?」
そう思ったけれど、そこで文句を言って、スンナリ進んだ話がゴチャゴチャにかき回されても困る。
「わかった」とだけ答えて、姉の部屋をでた。
母美智子にも、加奈子と里奈がお話をすることを告げた。
母美智子もすぐに納得。
「へえ、いいじゃない、きっと加奈子ちゃんも里奈ちゃんを気に入ると思うよ」
「愛華ちゃんもいい娘さんだけど、里奈ちゃんとはタイプが違うよね」
「里奈ちゃんは、ずっと見てきて、いざっという時に、すごい力を発揮できるタイプなの」
「史も大事になさい、私は里奈ちゃんが大好き」
そんな状態で、史の家の女性たちは、簡単に納得。
里奈も、「うん、逢ってみたい、史君の小さな頃のお話を聞きたい」と、すぐに承諾となった。
当日となった。
史と里奈は、品川駅で、加奈子をお出迎えのため。新幹線改札口に立っている。
里奈は、にこにこ。
「なんかうれしい、わくわくする、大旦那のお屋敷も楽しみ」
史はキョトン。
「え?それはまだ、言ってないよ」
里奈はフフッと笑う。
「昨日、奥様からお電話をいただいたの、お料理は何がいい?ってね」
「その後、大旦様とも・・・長々と・・・」
史は、首を傾げる。
「どういうルートで話が進んだのかなあ」
里奈は、クスクス。
「加奈子ちゃんから、奥様に、奥様から私に」
「それでね、加奈子ちゃんは、奥様がら私の連絡先を聞いたのかな、私も奥様に教えても問題ありませんって言ったから」
「加奈子ちゃんから、私にコールがあって、お話したの」
史は、またしてもキョトン。
「なんとなくわかったけれど・・・」
里奈がスマホを見ている。
そして声がはずんだ。
「加奈子ちゃん、もうすぐ品川だって!」




